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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
51/78

一時を

 まあだから、ついラグエルのことを『坊や』とよんでしまったけれども。


 過去に老けてはいけないと心に改めて誓うばかりだ。それよりも時間が無い。他人のことなど気にかけている暇などないのだ。エノクも実験の準備に追われてメンテナンスにまで目にかけられないようだし。


「ならば、役目を全うしなさい。信頼を築き上げることは大事ですわ。親愛なる友人は有能で優しい子を愛するものーーーーーー努力しなさい、プルゥド」


 サリエルを甘やかしてはいられない。叱って、努力して働いてもらわないと。エノクの為でもなく、ラグエルの為でもなく、妾の為。妾の『親愛なる王』の為だ。正しくはいずれ王となる、真髄の人物である

が…………


「………………ん、がんばる」


 数度大きく深呼吸したサリエルの瞳は迷いのない深紅の瞳。もとから志して履いたものの時間がかかったわけだが、本当に面倒くさい。幼いゆえだろうけど。


「…………なにをしている?」


「なでなでしているわ。嬉しいですか?」


 キョトンとしたサリエルは瞬時に目をそらし、顔を隠した。どちらにせよ、ジョフィエルは巨乳のせいで見えないのだけれど。


「……………うれしくない」


「本当?」


「ほんとう!うれしくなんてないっ!」


 そうジョフィエルへとサリエルは顔を振り向かせた。なでていた手を振りほどかれた。ジョフィエルもそれにも驚いたが、別のことへと驚愕と嬉しみを漏らした。


 サリエルの顔が真っ赤に、怒っているのか嬉しいのかよくわからない表情をしていたのだ。羞恥心もある、いつもの子供扱いするなと怒りたい気持ちとその手から伝わる暖かさに嬉しさを隠せない笑顔。


 ジョフィエルは一生忘れられないと思った。







 

 ダサいTシャツや色気のない下着、小指の部分が破れた柄違いの靴下。ティッシュを丸めたもの、ぐちゃぐちゃにされた紙切れ、綿のはみ出たぬいぐるみーーーーーーーーーーー錯乱したワンルーム。明かりもつけず、暗闇の中に唯一の光を持つものがあった。それは翡翠の宝石が埋め込まれたネックレス。首にかけ、大事そうに胸元で握りしめる少女。


 長く眠りについており、吐息を漏らしていた。すると翡翠の輝きが増し始める。その眩しさに耐えかねて、重いまぶたをゆっくりと開ける。暗闇に慣れていたせいかその光に思わず目を細めてしまう。


(このくらいなら、大丈夫な、はずだから、ね?)


 この翡翠が輝きを増すときは来る最悪の予兆なのだ。光が強いほど最悪も大きくなる。今のは大したことはない。精々、ここに存在する誰とも知らぬ人物が数人死ぬだけだ。 


(………………戦争はまだ続いてるんだから、死者が出るのはあたりまえ………もっかい寝る、ね?)


 八割型睡眠してるので今更だが、親友の一人にはよくいわれるのだ。だらしないだとか役職に責任持てだとか。そもそも自分でもわかってて自分が一番絶望してるってのに、責任持つのはこんな自分を認定させた上司なのだ。上司に文句を行ってほしいものだ。


 最も本来の仕事は全うしているのだから誰も文句は言うまい。仕事の中間に少し長い仮眠をとっているだけだ。体力は使わずとも常に自分自身を蔑む癖があるので精神的にやられることが多い。だから睡眠をとって忘れようとしているのだ。


 そうゆうどうでもいい言い訳を並べて夢へ、闇へーーーーーーーーーーーーーーーーーーが、少女が見たのは光だった。先程まで微細に発光していた艶やかな翡翠が部屋中に広まった。


 暗闇に染まりきった部屋が翡翠に染め上げられる。その眩しさに耐えかねてか、重たかったはずの体を急に起こした。そして宝石を割れんばかりに握りしめる。


「なんっで、なんでっ??くるっ……く、る………悪夢が地獄が…………………うち、のせ…い?と、りあえずがぶちゃんにっ、じゃなくて……うりちゃんにれんら、くしなちゃ、ね?」


 ろれつがうまく回らず、動きも共同不審だ。錯乱した部屋で小型の連絡端末を見つけるのは難しい。眩しい発光を我慢しながらオロオロと探す少女。

 結局数秒後に見身につけていたことを思い出すのだが…………ところでこの翡翠の光により顕になった少女は上級天使の一人だ。


 鶯色の寝癖だらけの髪は短く乱雑になっておりまとまりがない。エメラルドグリーンの艶がかすかにあり、真っ赤な瞳の下には濃いクマもある。そしてウリエル=アラトロンより少し小さいくらいの身長にまだ成長しきってない体つき。


 そう、この少女こそ神より『審判』の役職を承るラファエル=オフィエルである。


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