慰め
ベットにダイビングゥ……………ふかふかふわふわ気持ちがいい………。
疲れた精神と身体に効くよなぁ。本当に今日は色々あったよなぁ。ああ、喋りすぎて喉痛い。人に囲まれて触れ合ってばっかで疲労が…………夜ご飯も食べてないのに、風呂にも入ってないのに………今日くらいいいだろ……
帰宅するなり、一直線にベットを選択し、顔をうずめる僕。隣を維持していたファトが僕の様子を伺い、呆れ半分納得半分で言った。
「……………なあ、おぬしよ。疲れたのはわかるが、ベットはないのぉ」
「…………………」
「返事を放棄するでなーい。答えろー、ご主人ー」
「…………………」
ファトは頭をかき、溜め息混じりに言った。そして、僕の転がるベットへと近づいて、しゃがむ。
それに気づいて僕は横を見ると、可愛らしい顔が僕の瞳を覗き込んでいた。反射的に思い出してしまうーーーーーー仮契約の接吻を。顔には出ないが(助かった)心臓の鼓動は少しだけ早く刻んでいた。
「仕方がないご主人じゃ。ほれっ、手を貸せ」
手枷の鎖をジャラリの鳴らし手を差し伸べ握れとアピールする。僕はゆっくりと小さな手に重ねた。
すると、淡く蒼く発光し身体の披露が安らいでいく感覚に襲われた。
「これは融合魔法の一つ、感覚共有の応用技『痛幸』じゃ。確か詠唱は【我ら誠心誠意、君子万年、不撓不屈、威風堂々傷みに伴う幸を分かち合いましょう】じゃな」
「相変わらず詠唱センスが恥ずい。中二病じゃないか」
「そうか?詠唱はその魔法効果を増進させるためにするものじゃ。この場合は真心で相手を接し、長寿を祈り、強い意思で困難にくじけず、威厳を持って痛みを分かち合うーーーじゃな!」
「それくらい分かる………けど、痛みを分かち合うのに幸せが必要か?」
「む?ああ、魔法名が『痛幸』じゃからか。それには色々理由があるがの。一つ面白いところを述べてやろう」
何故か自信満々なファト。ちなみに手はつないだままであるので二人共々変な格好で会話している。ファトはベットに座り、転がりはしないもののかすかに披露の表情を浮かべる。悪魔なのになーまあ、僕のせいだけども…………
「本来の魔法の使い方としてはぬしとわしの痛みを半減できるということじゃが、ぬしの血液を相手に一滴でもつけることができたら敵に自分の痛みを感じさせることができるのじゃ」
「………?」
頭働かないから理解不能。いくらファトと披露を半減にしてもらったところで、精神的には変わらないのは事実だし。あんなことを聞いてしまったら……頭痛がしてきた。
「つまりは痛覚共有じゃ!わかったか!?わかったのなら頷け!跪くのじゃ!」
「はじめからそう言っとけ……ていうかもう跪いてる」
全身の力を抜きベットにぐでーうつ伏せになる僕に対してやけくそなファトはまたため息を。
「それは面倒くさがってるだけじゃろ………まあ休むのじゃよご主人。記憶の方もこちらで調整しておくのじゃが……封緘しなくてよいのか?」
「多分またすぐに思い出すからいい。カシエルはまた突っかかってくるだろうから…………とりあえず寝る」
ファトの返事を待たずして瞬時眠りについた。普段し慣れないことを無数にしてしまい、そのうえ記憶を取り戻しかけているせいだろう。
実質一人となったファトは横たわる僕をしばらく見つめて、その頭をくシャリと撫でた。
「………………よく頑張ったの、ご主人」
ファトは、手枷のちぎれかけの鎖が当たらないように気をつけて僕の左隣へと移動、くるまって眠りについた。僕の長い長い一日はようやく終わりを遂げた。
尚この日は、ラグエル=フルの記憶に最も迫った日となった。




