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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
36/78

間開黒フード

「ーーーーーー誰ーこいーーーラグーーフルだって?」


 眠りから覚めたのは誰かの大声のせいだった。夢も見ず熟睡しきった僕は目をこすりながらゆったりと体を起こす。声の方向を向こうと首だけを90度回す(床が硬かった為背中が痛いから)。


 そこにはおそろいの白の☓点がトレードマークの黒フードがふたつ。騒ぎ陽気な低音の声の主に淡々と答える人形少女。二人並び、沈む日に照らされる影が伸びている。


「なんでこいつといるんだよ、ワイト。オレが真面目に授業受けてる間に…………」


「……………………………」


 寝起きなのか、眠たげに目が半開きな人形少女にむけ大声で一方的に話す、もう一人の黒フード。おそらくはサンダルフォン=ラック。人形少女に対する敬称は違うも、声音から予測はできる。レミエルと戦い破れた、金髪のウルフカットが特徴的なチャラ男である。


「飛行訓練オレ、参加したくねぇんだよ。そもそも参加できねぇよ。無理やり仮病装ったけどよぉ……」


「……………………………」


「お前も参加しろ、よ……………てなんでさっきから答えねぇんだよ。怒ってんのか?いや、怒ってんのはオレだけどよ」


「……………………………」


「だから喋れって!寂しいだろぅが!独り言だよオレ!ただの寂しいやつだよ!」


「……………只今、省エネもーど………おやすみ……」


チャラ男の話に聞きいらず、耳をふさいでいた人形はとうとう、声を発した。が、人形少女は気怠げにふらりの後ろに倒れて寝ようとする。


「ちょっ、おい……寝るなよ!」


「……………」


 倒れかける人形少女を空中で支える紳士なチャラ男。そんな人形少女は二人を呆然と観察する僕を指差した。チャラ男と目が合う。顔がよく見えた。フードの影に隠されたツリ目の紅にぎらめく獣のような敵意むき出しにし睨まれる。


 バチーーて火花がなったような……気のせいか?


「……は、初めまして」


 思わず体がこわばって、片言になってしまった。そんな僕に対してチャラ男は沈黙をしたままずんずんと接近してくる。影で表情を伺うことができない。


「ーーーーーー名前は?」


 人間観察が得意な方な僕。

 目線、表情筋など微細な動作から癖を見つけて、読む。力比べでは弱小だから、冷静に一つ一つ処理して悪知恵を働かせるくらいしか生きる道はなかった。


 一度過ちを犯せば地の底なまで墜落してしまう崖っぷちの生きた時間をそう生きてきた。


 だからこそ、このチャラ男は人形少女同様にヤバイと思った。チャラ男と称したとおりに陽気な雰囲気もあり親しみやすそうだが、あまりにも僕に対して殺意むき出しである。ようはまあ、ギャップである。人形少女とは違い明確な殺意が感じられる。

 怖い、がーーーーーーむしろ万々歳である。怖い方が慣れている。


 早くなっていた鼓動も収まり、冷や汗をすっかり引いた。これがいつもの僕だ。冷静になれた。だから僕は平然と答えた。


「ラグエル=フル」


 目の前に立つチャラ男は上から睨みつけられ、(頭一個分くらい高いからか?)なんだか威圧感もある。じっと睨まれたまま、トーン低く敵意丸出しで発した。


「………………オレはサンダルフォン=ラックだ」


「はぁ、そうですか」


「………………」


「………………」


 何この空気?気まず…………くはないけども居心地悪い。しかもデジャヴ感がすごくある………。人形少女同様に「喋るのに疲れた」とか言わないだろうか……。すると人形少女はため息を付き、一声出す。面倒くさげだけれども。


 それから一分くらい沈黙は続いた。


「あの、ラック。……結局何がしたかったの?」


「あ?どうゆう、ことだ?」


「いや………ほら?」


 人形少女が指したのは本来なら僕が立っていた場所。チャラ男は人形少女に移した視線をその位置に。そこにあるのは僕の乱雑に書かれた置き手紙。

『用がないなら帰ります』

 僕はチャラ男が瞬きした一瞬で陰影魔法をかけそうそうに退散したのであった。


「……………はぁ!?どこ行きやがった!?」


「フルの家系だから……魔法で姿隠してる。それで、逃げた」


「なんでだよ!?」


「ラックとの間に耐えられなかった……?」


 苦悶の顔をし、ようやく僕の手紙に目を通すサンダルフォン。体を震わせ、再び声を荒げる。


「用はあるに決まってんだろ!」


「間が長かった。それで、飽きた」


「クソタレ!追いかけてくる!ワイトは先に言ってろ、間に合わねぇ!」


「私は、大丈夫。でも…………………………お前が遅れたら私は許さないから」


 ガチトーンで処刑宣告された為、サンダルフォンは思わず体をビクリと震わせ冷静になる。

 

 それを見てメタトロンは安心したのか、屋上の節へと。そしてフードをはためかせ、急降下。一度視界から消え、立派な漆黒の2つの翼をはためかせ空を舞った。隠蔽魔法をかけている為、僕以外には認識するのは難しいだろう。


「待ってろよ、ラグエル=フル」


 サンダルフォンは屋上の出入り口の扉を開けようとした。

 捻った。動かない。ガチャガチャと音がする。

 引いた。開かない。ガチャガチャと音がする。


(勘弁してくれよ……鍵が閉まってやがる)


 となるとラグエル=フルとワイトは空から飛んで屋上に入ったと考えるサンダルフォン。そして5階建ての校舎の高さを確認すべく縁へと立つ。下を見ると、放課後で生徒の帰りが重なっては人通りが多い。少ないところを選ぼうとしてもどこかに必ず天使がいた。別に翼を見せることには抵抗がないが、それ以前の問題がサンダルフォンにはあった。


「これ、飛ばなきゃなんねーのかよ………落ちる、のか?」


 サンダルフォン=ラック。


 上昇飛行は得意だが、下降飛行は苦手。なぜなら高所恐怖症だからである。

 

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