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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
27/78

学業2

 クラスメイトの反応は様々だった。真面目に頷いたり、落胆したり。


 その中の生徒の一人が挙手した。多分落胆した生徒だったが、まだ幼く今朝会ったばかりの何故かライバル視?恨まれてる男児だった。

 ガブリエルさんはサリエルと目配せし、発言許可する。サリエルはすぐさま椅子からお尻を浮かせて、淡々と言った。


「じつぎがしたい。たたかいたい。きいてばかりじゃあきる」


 清々しいほどの自分勝手なわがままを告げるサリエル=プルゥド。男児なのは男児だったか……………。思えば、見た目通りに彼は幼いのだ。心身ともに成長が遅れているように感じる。


「それは駄目っすよ、サリっち。基本は大事っすよ?基本を覚えて応用を、応用して必殺技に。何事も地盤を固めるのは大事っすから我慢してしてくださいっす」


「ぼくはますたーに、みてうけてきずついてじぶんのちからにしろとならった」


どんなスパルタ教育だよ……………しかも古い。古きを知り新しきを知るともいうしいいのか?


「はぁ、でも自分が今はサリっちの先生っす。まふたーとやらと同じくらい偉いっすよ?逆らっちゃだめっす」


 ここのクラスにはジョフィエルはいない。カンフル剤のない暴走男児を止めるすべは武力の他ないのだ。穏便に済んでくれ………。


「……………………………………………………」


サリエルは顔を歪め心底嫌そうな顔をする。


「いいっすか?」


まだ顔をさらに歪め振り絞るように声をこぼした。


「………………………………………………………わかった」


えらく素直だった。反抗して魔法と一つは出すと思ったんだけど………杞憂か。目上の人物への常識はあるんだな。


「それじゃ気を取り直して、サリっちそのまま説明よろしくっす」


「しらない」


 容器に取り始めたガブリエルさんの問に答えるサリエルからは予想外の回答が出てきた。クラス内が沈黙に凍りついた空気になったように感じた。ガブリエルさんは笑顔で凍りついてる。


「……………サリっち」


「?」


「ちゃんと説明聞いててくださいっすね」


 ガブリエルさんの優しさに救われたようだ。本来ならお説教かまされるところだが、サリエルは見た目がまあ男児だ。幼いから知らないってこともあるかしれない。


 無知って怖い。


「えー、ああー。『神の盃』とはこの経典のことっす。所持してない方には、入学時に寮に届いているはずっす」


「これのことか?」「そうっす」サリエルとやりくりする。


 その経典の表面は背景を赤に、十字架に添えるように大翼が描かれていて、[白天楼]が取り囲むように咲く白のシンボルとなっている。


「これからの学園生活では必ず『神の盃』を持ち歩いてくださいっす。何かと必要っすから」


あざとくウインクするガブリエルさんに各々が首肯する。


「その中でも重要なのが十の約束事っすね。今持ってるでしょうっすから見てみてくださいっす」


僕は経典を持ってくるのを忘れてしまった。しかもいま気づいた。隣で経典を開くレミエルに見せてもらうことにする。


「なんで忘れてんのよ」


「もってこいって言われてないから……」


「寮の部屋の玄関に手紙がなかったの?」


「……………あ、あれか。不審物と思って捨てた」


「なら帰ってから確認しなさい」


「いや、燃やしたから無くなった」


「……………馬鹿!」


 すごく呆れられた。先程、蹴られたスネを的確に同じ場所を狙われた。

 席を寄せて一つの経典を二人で覗き込む。経典の十の約束ごとは2ページ目にあった。


 一、神の為、悪魔を滅亡させ神聖な世界をともに作ろう

 ニ、神をバカにするものはただしに罰を下そう

 三、悪魔に心を乗っ取られない強い意志をもとう

 四、あらゆる生命を愛し、たくさんの人と触れ合おう

 五、神の代行人を上級天使を任せ、敬おう

 六、白翼を多く持ち、立派であるほど神から力を授かっている証拠なので従おう

 七、経典魔法をはじめとし、さらなる強い魔法を作ろう

 八、経典のテーマ、寛容勤勉分別慈愛純潔忠義節約を持って生きよう

 九、機械仕掛けの工場、神獣の森、美麗な花園、怜極の雪海を東西南北に分断し適した住処で暮らそう

 十、幸せな生涯を送ろう


 色々とツッコミどころがあるが、まず一言………適当すぎやしないか?適当というよりは大雑把というか…………。


「児童用……幼い子供でも読めるようにとだいぶ噛み砕いてるらしいっす。ウリっちが人働きしたっすね、懐かしいっすね………ふふっ、これウリっちが馬鹿みたいとかすごい愚痴言いながらしてたの覚えてるっす!」


なんだか上級天使の裏を知った気分だ。仕事を押し付けられて、渋々やってこんな出来って解釈していいのか………。


「話がそれたっすね。注目してほしいのは七の項目っすね」 


 原点ーーーーー経典魔法は全七章構成であり、それに着目したテーマとオリンピアが関係してくる。


「章のテーマがオリンピアの始祖が掲げた祈願となってるっす。例えば………」


 ガブリエルさんと目があった。 


「フル、だと経典第一章寛容(フル)になるっすね。意味合いは心を広くっす」


 他にも、二章 勤勉(ファレグ)、三章 分別(オフィエル)、四章 慈愛(べトール)、五章 純潔(ハギト)、六章 忠義(アラトロン)、七章 節約(オク)となっている。


「それに児童用といったっすよね?なので経典魔法は基本誰でも使えるかんたんな魔法っす。けどその信仰というか思いが強ければ、威力は桁ちがいっす」


ああ、だからか。両親が経典第一章をすべて暗記させようとしたわ。でも実際僕の場合は心は広いというよりは、基本無関心だからそれ以前の問題だ。


「攻撃系統、防御系統、補助系統と広い幅で『神の盃』は役に立つっすから忘れないでくださいっすね!」


 すると、何気なくカシエル(真面目少女)が手を上げていた。


「どうしたっすか?」

「先生は持ってませんよね?経典を」

「ぎぐっ!」


…………ギグって声出しちゃってんじゃん。忘れたのか?十分有り得そうな話だけど


「…………自分は経典暗記しているっすから。平気っす」


「ならおまえはいえるのか、ぜんぶ?」


「ももも、勿論っすよ!」


誰もが汗垂らすガブリエルさんに対して見栄っ張りだと思っただろう。僕もそうだった。


 けど、ガブリエルさんはーーー2時間ぶっ通しの授業の残り時間を使って経典魔法の詠唱根源の具現化をすべてやってみせた。


 はじめは半信半疑だったり貶そうとする生徒もいたが三章くらいから尊敬へと変わっていった。経典魔法にも魔力はもちろん使う。


 だからこそ、すべての魔法を唱えるのに消費する魔力はバカでかいはずだ。それなのに、ガブリエルさんは疲弊の様子を見せる様子もなく楽しげにやってみせた。


「あ、授業おわっちゃったっすね。これ大丈夫っすか?…………まあ、魔法の実技のお手本としてやったってことでいいっすか?イイっすよね?それじゃさよならっす!」


 おまけに身体強化魔法まで当然のことのように使って教室から出ていった。


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