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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
24/78

起繰転続

想定外な人物に出くわした。学園へとつき、片手に案内図をもち1人で散開していたところだった。大講堂の扉の反対側に裏庭という場所があるらしい。


そこでは植物菜園をしていると聞き足を向けた。すると、小さな影となでらかな影ふたつを見かけた。そう、先客がいたのだ。


中央の噴水を挟むようにふたつの白のベンチがあり、その周囲には真っ白な彼岸花が飾られていた。赤色のしか見た事がない僕には新鮮で驚いたが、そこにいた人物の組み合わせの方に最も驚愕した。


一人は死闘をくりひろげた男児、一人は真面目少女に勝ちを譲った絶世の美女(レミエル曰く阿婆擦れ)ーーーーーーーーサリエルとジョフィエルだったのだから。

長身と豊富な乳房を持つジョフィエルと小さな体躯と虚無な瞳を持つサリエルとの身長差は大きく、母と子と言ったところだ。


数秒後、二人は僕の目線に気づいたようだった。関わるべきか、関わらないべきか刹那戸惑う。なんて挨拶するか、どう立ち去るか僕は悩んでいた。


が、相手はそう出ないようでサリエルはすぐさま僕を視界に入れるなり、資格に潜り込み殺そうとしたようだった。僕の心臓を貫通させようとしていたその手首を掴む。


僕の体の異変がもたらしたのは魔力と記憶だけでもなく、五感だった。前よりかなり周囲が見えるし、目や鼻耳も心做しか良く聞こえる気ごした。感覚的にしか分からないが、ファトのせいだと思うと恐ろしい。

ファト曰く、「それがお主の本質じゃ」と言っていた。かつての僕はこんなに力を持っていたのか?と疑いたくも成程に僕は爆発的な成長をしている。無自覚に、無意識に。


それも記憶を取り戻せれば分かるのだろうか?


「!?」


サリエルはそれに酷く驚いたようで、すぐさま僕から距離をとった。そしてまた、怨みを込めてこちらを睨んでくる。


「おまえなんでそんなつよくなった?」


「知らないよ、僕は」


知っているのは、本当の僕。

そして知るのは今の僕。


「しらじらしい……………あうっ!!」


「出会い頭に宿敵とは言えど、暴力とは良くないわプルゥドよ。美しいないわ」


サリエルの頭をチョップするジョフィエル。何度か連続繰り返していて、その都度に話しかけてきた。イメージ通り、聞いてるだけでも耳がとろけそうな柔らかな声で。


「申し訳ございません、プルゥドの因縁の敵とはいえ不躾なことを」


「い、いえ………」


あれ?なんか………ザドキエルとレミエルの情報だと傲慢で阿婆擦れで…………そういった印象が全く感じられない。まあ、美しさに固執しているようだが。

僕から感じられた彼女は高貴で穏やか、慈悲深く感じられる。


「こどもあつかいするな」


ジョフィエルから距離をとるサリエルは頭をガードしながらも、僕を睨むことを辞めない。


「そうやって人に当たることが美しくないと申しておる。せめて、プルゥドのその小さな懐で水に流すくらいしてはどうかしら?」


「………………」


押し黙るサリエル。ジョフィエルが一歩近づくと、サリエルは一歩下がる。何してんだが……………


ジョフィエルの言う通りにしてくれればこちらも楽だが、何故そんなに僕をサリエルは恨んでいるのだろうか?戦闘中の断片的な言葉を繋ぎ合わせても、今ある記憶じゃ無理がある。サリエルの言うますたーという存在。そしてそのますたーから僕は逃げて、必要とされている。まとめればこう。


自身が必要とされているというなれば僕にとってそれほど嬉しいことは無いけれども、誰とも知らない存在に従う気はさらさらない。

必要としているならなんで姿を現さない?表すことの出来ない理由があるのか、もしくはこの世に存在しないのか。


ここはいい機会かもしれない。ジョフィエルというサリエルのカンフル剤の役割をしているから話が聞けるかもしれない。


「あの、君はどうして僕をそんなに恨んでるんだ?」


なんと呼ぶべきか迷うも君という呼称を使うことにする。使い勝手いいな。


「………………………おまえがますたーにひつようとされてるからだ」


「そのますたーの名前って『エノク』か?」


答えはしなかったが、サリエルの反応を見れば図星だとわかった。


「……試合中にも言ったけど、僕は記憶がない。僕は僕が生きた時間は偽物だったんだ。作り上げられた想像の記憶だった」


僕自身が塞ぎ込んで、創った記憶。

その失った本当の記憶はどこにある?


記憶をなくさせたのは『エノク』だ。そう確信づいている。他にも僕がショックで忘れてしまった、というのもあるのかもしれない。けどそれはないと僕が一番理解していた。だって僕はそんなショックな記憶があれば、自殺をすぐに実行するような逃げる僕だから。ありえないのだ。


「偽物の記憶でも僕の宝物の記憶はあったんだ。宝物さえあるなら本物だって思えるんだよ。本物よりも夢のような幸せな偽物だった。本物に勝っているように思えたよ。でも本物には少し物足りないとも思ったんだ」


サリエルは怪訝そうに首を傾げる。僕の言ってる意味と言いたいことがよく分からないのだろう。すると、ジョフィエルが口を挟んだ。


「偽物が本物に劣ると誰が決めおった?妾には汝の言いたいことがよく分からないわ。妾が自分自身が偽物納得しておれば、いいわ。汝は幸せか?それで」


「幸せだよ、勿論」


ザドキエルと壁にレミエルの似顔絵をかいて、似てないなと笑いあって。レミエルと一緒に作った料理をザドキエルに食べさせて、まずいなとまた笑って。二人と天界から逃げてしまおうなんて計画を立てたこともあって、実行して、見つかって、捕まって。沢山笑ったぶんの対価が訪れた。


そして僕らは見たのだ。あの禁忌の場所を見てしまったのだ。


「幸せ、だったんだよ………その時まで」


その後すぐに僕は『エノク』に手を引かれて二人から去った。その運命は変わらなかったのだ。そして宝物は僕を覚えててくれたのだ。


自分のことを待ってくれる存在がいることの嬉しさを僕は知っている。だから幸せだ。


宝物と別れて過ごす時間は寂しかったけど。


「『エノク』に伝えてくれないか?僕の記憶を奪って、幸せにしてくれてありがとうって」


その言葉を口にした僕の顔はどんな顔だっただろう?サリエルは僕の顔を見て、泣き出しそうな表情をしていた。そしてーーーーーーーー


「いやだ!」


そう声を荒らげた。


「おまえだけがしあわせなんてゆるさない!おまえはふこうになるべきなんだ!おまえみたいなまがいものなんてきえてしまえばいいんだ!」


泣きじゃくり、最後に思いっきり睨んで早足でその場を去るサリエル。

何故、彼はあんなにもますたーに恨みに執着し、僕を睨むんだろう。疲れないのか?


朝日が完全に上り、もうすぐ生徒が登校するであろう時間帯に近づいてきた。裏庭には光が入りにくいようで、異様な程に白い彼岸花が目立っていある。そんな中、ジョフィエルはしばらくの沈黙の後言葉を発した。


「プルゥドはまだ子供だわ。許してあげなさい、美しいその心で」


「勿論です」


飄々と僕は答える。もう話すことは無いと思い、僕はその場を立ち去り、校舎散開を続けようと思った。もうここに用はない。


が、ジョフィエルの次の一言により足が動かなくなった。その言葉は今の僕が最も待ち望まない最低最悪な質問だった。


「『エノク』に会ってみませんか、ラグエル=フル。被検体成功例91号クイ」

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