死の宣告
「主人よ、いい加減に起きぬか?寝すぎじゃぞー」
ぼやけた意識で重たいまぶたをゆっくりと開ける。ふかふかの真っ白なベットに僕は転がり寝ていたようだった。
そしてその転がる僕にまたがる形でほっぺをつんつんしてくる幼女。相変わらず、革ベルトで隠されたあどけない胸がこの目線からだと危うい…………。それに深く濁っていたはずの蒼い瞳がどこなく澄んでいるように感じた。寝転んだままの姿勢でファトに問うた。
「…………………なにをしている、ファト」
「暇になっての。起こしたのじゃが?」
首を愛らしく傾げるファト。その可愛らしさに惑わされぬようにいち早くこの体制を戻さねばと体をゆっくりと起こす。
体が重い………………ファとの重さ関係なくして………疲れ溜まってるのか……………ってかどのくらい寝てたか?
試験の結果は?そもそもここはどこだ?疑問が多くありすぎる。が、レミエルとザドキエルは絶対来ると思ったから今、ファトに聞けることを聞いた。
「ファトはなんでまだ僕のところにいるんだ?」
「む?どうゆう事じゃ?」
ファトは中に浮き、藍鉄色の髪を弄っていた。あれどうゆう原理で浮いてんだよ………
「だから、ファトは僕を試験の間だけ手を貸してくれたんじゃないのか?そしたら去るんじゃないのか?」
「そんなことわしは一言も言っておらんぞ」
「確かに去るとは言ってないけど………これ以上僕の隣にいて何になるんだ?」
こんな、落ちこぼれで弱い僕と一緒にいて力を貸してなんの得になる?悪魔は普通、対価が必要じゃないのか?それに仮は返されたはずだし………。
「わしの暇つぶしになるからじゃ」
理由はあっけないものだった。
「暇つぶし?」
「そうじゃ。わしは記憶が無い……というのはわかるかの?意識共有しとったからの」
そう、ファトには記憶が無い。戦闘中、また睡眠中に確認できたファトの記憶の断片。
ひとりぼっちで彷徨う孤高の悪魔、記憶もなく誰にも認識されることもない。それがなぜ僕だけに見えるのか謎であるが、一人ぼっちなのは寂しいことなのだ。僕ならば、堪えきれなくて泣いてしまう。悪魔に悲壮な感情があるかどうかは知らないけども。
「記憶喪失なわけじゃ、主もわしも。じゃからの、わしの記憶が戻る手伝いをして欲しいのじゃ。暇つぶしとして」
「???」
まてまてまて。どうゆうことだ?暇つぶしってのは僕のか?ファとのか?
つまりは、ファトは失った記憶を取り戻す=暇つぶしで、それを僕に手伝えと言っているのか?
「そうじゃ。それにお主の補助を続けてしてやるぞ、そしたらお主は無敗じゃ、最強じゃ。このわしが相棒として無償に働いてやるのじゃからな!」
「まてよ、ファト。それじゃ、お前にとって不利益なことが多すぎないか?」
「どこがじゃ?悪魔であるわしは娯楽を悦楽を求めるのじゃ。愉快であることさえあればわしの糧となるのじゃよ?それにわしの記憶も戻るとなれば万々歳じゃ。ん、ああ。記憶の手伝いと言ってもわしが個人で進めるから気にせんでいいぞ?お主はただ、主人として隣にいてくれればいいのじゃ」
話に置いてけぼりな僕を置き、話をどんどん飛ばすファト。悪魔だ……………。まさかこいつ、一生僕にまとわりつくつもりじゃないのか?
「それは無いのじゃ。じゃが、お主がどうしても死ぬほど嫌というならわしはお主を呪って死ぬぞ?」
呪うって……………それに死ぬまでって。大袈裟だし発想が鬼だ。いや悪魔か。
「お主からわしが離れると死ぬからの。自分の命が惜しいと言うならわしを傍に奥が良い」
今なんといった?ファトと離れたら死ぬって?




