疾風迅雷
結界には既に対戦相手がいた。
サンダルフォン=ラック、金髪の長身を持ち貴族のような豪奢な衣装をまとっていた。通称チャラ男。
「魔法試験でブラックホール出してた人…だよな?」
「遠距離でも近距離でも厄介そうだな。レミはどう戦うんだろうな」
ニヤリの顎を上げ、油断した様子のチャラ男に対して、レミエルは真剣な趣でニヤリと同様に笑った。双方それなりの実力者。それにタイプも似ていると思われる。
自分に絶対的な自信があって、ツンケンな感じだ。
「悪いけどすぐ終わらせるから覚悟してなさい」
「舐められちゃあ、困る。俺だって、これ負けたらやばいからな…」
そういったチャラ男の目線の先には人形少女がいた。よく思い出してみると、このチャラ男と人形少女はペアで居た。僕とザドキエルとレミエルが三人で固まっていたように。
サンダルフォン=ラックとメタトロン=ワイトは互いに面識があり、ある程度の信頼は寄せているはずである。
それに双方共、似たような格好をしていた。黒フードに全身を覆っている。見えるのは入り切らなかった髪の毛と闇から除く深紅の瞳。
「メタトロンに殺されちまう。負ける訳には行かないんだよ」
サンダルフォンは空気を掴む。空気が歪み、黒渦が現れた。そこの空間だけ、虚無。深淵より覗き見る深い闇。全てを食らう、ブラックホール。
レミエルは余裕の表情を壊すことなく、冷静に懐の剣を抜く。剣にはハギト家の紋章が描かれている。刃の部分に魔力を込めて、雷を纏わせる。
ハギト流魔法剣『神雷剣』。
「ではではスタートっす!」
宣言とともにレミエルは切り込む。
雷のごとく、加速する剣技に加えて身体強化をしているレミエルは、最高最速の一撃を放つ。金属と金属がぶつかる音。意表をついた一手は漆黒の剣によって弾かれる。
サンダルフォンはブラックホールへと手を入れて掴んだのだ。漆黒の剣の柄を握り、即座に抜刀して対応されたのだ。
レミエルは刹那戸惑うも、追撃をする。右に左に上から下から。色んな角度から、力加減から攻め続ける。その度に重なり音を鳴らす、サンダルフォンの防御になかなか責めきれず、勢いに乗れてない。
その上、サンダルフォンは避けると同時に拳で部位を習うフェイントをかけている。実際には入れてこないのだが、レミエルの躊躇を狙っているのか体力切れを狙っているのか。レミエルは構うことなく連撃。
(フェイントが多すぎるのよ!チャラそうな感じして意地悪いのねっ!)
レミエルは一旦離れて、魔法を唱える。普段は無詠唱だが、イメージさえあれば発動可能。さらに詠唱は威力倍増されるが、普段は隙となるため風していたが問題は無い。
(この私に不可能は無いのだから。見ててって言ったから)
失敗出来ないのよ!
「『咎人に罰を、制裁を』」
「そうはさせるかよっ!」
予想通り、サンダルフォンはレミエルへと剣を向け、闇の斬撃を放つ。それを避け、闇に紛れ背後をとった斜めの戦擊もターンすることで、難なく避ける。
そして思いっきりサンダルフォンの背中を蹴った。数メートル先に吹き飛ばされるも受身を取られる。
だが、詠唱を唱え終わるのには十分だった。
「『天より与えし怒槌を』」
魔法剣『神雷剣』にさらに魔力で構成をねり、イメージを固める。それを感じてか、サンダルフォンはブラックホールを自身と同じ大きさに作り、防御しようとする。
「出現『真雷霆』」
魔法剣は忽ち姿を変える。魔力を物体化することによって一回り大きくなり、大金槌となる。百万ボルトを超える強力な雷が刃に纏いーーーーーーーー否、刃その物が雷でできていた。
「マジかよ…………」
もう遅い。音速を光速を超え、超スピードで『真雷霆』はサンダルフォンへと迫る。ブラックホールはあっけなく消され、もろ浴びてしまう。
(良かったわ。魔力は私の方が上だったみたい…………手加減してくれててよかったわ)
魔法を詠唱した途端、少しだけサンダルフォンは本気を出していた。初めから出せよと言いたかったが、制御出来ないのかもしれない。
行き過ぎた力は代償が伴う。
故にレミエルは倒れた。
(情けない…………………これくらいで倒れて)
意識が消え、視界は黒に染る。共倒れとなったサンダルフォンとレミエルの試合はこれを終幕とする。
「試合終了っす!結果は引き分けっすね!」




