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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
1/78

触媒

空中都市【天界】。

雲より上の澄んだ空に浮く島々。中心部の大都市<神牢>からなる孤島は東西南北に分けられる。


東の<紀華>、機械仕掛けの工場。

西の<翠華>、神獣の森。

南の<桜華>、美麗な花園。

北の<氷華>、怜極の雪海。


天使はそれぞれの属性にあった孤島に住んでいる。 その点、大都市<神牢>は東西南北の孤島の生活の要である。ありとあらゆるものが神により恵まれ、造られた。背中につく、見事な甘美なる翼も神の力だという。


その神の力とやらも、<神牢>の中心にある大塔の最上階から来ているらしい。塔は宇宙まで届きそうなほど先が見えず、首が痛くなる。上位階級者のみ登ることが許されるそう。最も、上位階級者は姿を見ることさえ難しいのだが。興味もない。


まあ、どれもこれも親からの教えだ。嫌でも覚えてる。


「最も僕は……」


神なんて不確かなものの存在を信じていない。

 なんてことを口に出せば、僕は殺されるのだが。それだけはゴメンである。


とにかく、そんな捻くれ者の僕は<神牢>の街路を歩いていた。道行く人々には笑顔が耐えず、都市全体が賑わっている。空を仰げば、青い空を風をきって飛ぶ天使の姿が。空も地も、大賑わい。


特にここ、商売区は出店が多くでていて利用する天使も多い。

人混みが嫌いな僕にとっては最悪の場所。


でもここを通るのが学園への最先端ルートなのだから我慢しなければ。


フードを深く被り、足をより早く進める。

道行く人々に方があたるも気にせず、ずんずん進む。そして商売区の出口、大広間への道標である石畳のタイルが見えてきた。足を踏み入れようとした時、肩がぶつかった。


先程と同じ、ではなくぶつかったソレは今までとは違う。


 藍鉄色の髪にバツ印の髪留め、

 深く濁った蒼の双方。

 布面積が非常に少なく、

 十字の革ベルトで際どい部分を隠し、

 白い肌が多く露出。

 腰部分に破られたスカートを。

 腰の千切れた手枷を首と手足につけていた。


ソレは美しく、愛らしく、恐ろしく不気味な雰囲気を漂わけた幼女だった。


「……………」

「……………」


目が合う。時間が止まったかのように、賑わいは冷め、色あせモノクロに。しばらくは見つめあっていた。 


 この時間だけは確かに、僕とソレだけのものだった。

 運命のように、それは必然で俺と彼女の出会い。


そして、幼女からの第一声ともに白く細い手が僕の頬に添えられる。


「見つけた……はずじゃ。

「長き時を待たせてすまぬ、謝罪をここに。

「我が主からの命、

「わしの命がある限り永続であるので安心するのじゃ。

「じゃがな……

「つまらぬ、お主。

「蓋を閉めておる、縛られておる、

「それを開けようともせず……本当につまらぬ。


「どう、ゆう」


続けられる言葉はしどろもどろ。戸惑いと疑念と焦燥と恐怖。何だこの感情は?

揺れる、揺れる。心が、感情が。


「つまらぬ奴は大嫌いじゃ。

「じゃか、それを解けば多少はマシになるかの」


 頬から伝うのは繊細優美な魔力の糸、

 深く深く、全神経を辿り巡る。

 不思議と不快ではない感覚、

 それは心部に到達する。

 固く、固く施錠された3つの鍵、

 鎖に囲われた扉。

 

 緩み、浸り、歪む。

 狂う音がする。

 音が、音が、音が、響く。


 闇に囚われる、覗く、

 可愛らしい、狂気的、不敵、笑み、

 何かを、言われた。



   愉    快    だ。





 目を開けばいつも通りに戻る。

 時は進み始める。

僕は呆然と立ちすくむ。狐につままれたような感じ。嫌悪を覚える賑やかさも耳に入らない。頬に伝う水滴、冷や汗なのか涙なのか。


 そして記憶は徐々に、蘇り追憶。


あの幼女は僕になにをした?なにをされた?


触られた頬に触れてみる。あの白い手には温もりがなかった。伝わったのは緩んだ糸のような尖った針のようなもので弄られた後から襲う不快感。

 体に異変はなし、けど鼓動は速くなるばかり。


 呼吸が荒くなり、

 心に迫り来るナニカに

 体は脅えていた。

 閉じた蓋が開けられてしまう。それはダメだ絶対に。


「クソ……」


逸る自分に言い聞かせ、深呼吸。そして、いつも通り普通の自分に戻るそれだけだけだ。


全部、忘れよう。


頭をクリアに、全部忘れて。

僕はまた学園へと向かって歩み始めた。



  【天界】の学園。神が〘神魔の盟約〙を結んでから、定められた学生制度。

 天使が悪魔と対抗すべく知識、戦術、交渉術を学ぶための教育区の見事なる神殿――――――――――天使育成機関〘グリゴリ〙。


<神牢>の教育区で最も大きな神殿づくりの建物で、レンガ造りの学生寮がずらりと初めに見られる。教育期間は無限にあり、100年一度の卒業試験に合格出来ればこの学園を辞められるのだ。


まあその卒業試験が難易度が非常に高く、約五千名の生徒のうち百分の一程くらいしか合格出来ていない。難易度が高い分に卒業後、優秀な者に与えられる階級は天使本人に莫大な影響を齎す。付与と魔力増加、じゃうい階級であればあるほど、ついてくる特典は大きいのだ。

 故に力を欲す天使達は欲望の権化と言わんばかりに強欲に、全身全霊で努力している。


 だからだろう。一人でもライバル、候補を減らそうと、この学生寮に囲まれたレンガ通りは新人潰しが恒例である。新しくきた天使の選別、大勢集まる天使の大勢がここで落とされる。


 岩場一つの入学試験。


 〘グリゴリ〙の本校舎まで、上級生からの魔法や剣技を避けながら向かうのだ。


 現に僕は数名の生徒から補助魔具の杖を向けられていた。初級魔法の連弾。炎弾がせまる。


「…………………めんどくさ」


 僕は炎弾を無視して平然と歩を進める。生徒数だけあってこの直線路で狙われるのはなかなかターゲットを絞れない。だが当然のように、魔力量が多い、風格のある新入生はねらわれやすい

 が、僕には関係がなかった。

 炎弾さえ避け、魔法発動すればあとは楽。僕に向いた攻撃はあれっきりとまり、ただ狙われる新参天使を避けながら突き抜けるだけでいい。


 僕の固有魔法……というよりはもともとの体質にも起因する。な


 僕は悪魔を滅ぼさなくてはならない。

 神を勝たせなければならない。

 それが、僕が辿る道だから。


その為にもこ卒業候補生が増えることは防ぎたい)この場で他の生徒の情報を集めなければならない。周囲を伺い、見定める。

 結果として同じ似たような血筋に伴う実力を持った奴が二人………そして例外が一人いた。


まず、その二人は橙色のお団子頭を左右それぞれにつけて、真紅の目をしていた少女達。

 お団子左の方の少女は炎を纏った大斧を軽々と振り回し、敵無し。

 お団子右の方の少女はダガーナイフを使い、魔法を切っていた。


 ダガーナイフに小細工がしてあるようで、刃部分に青のオーラを微細に放っていた。


「弱い弱い!」

「油断大敵です、お兄ちゃん!」


 大斧少女が捌き切れなかった雷弾をもう一人がダガーナイフで切り裂く。まだまだ危ないが、連携により足りない部分を補っているようだ。顔瓜二つ、コミュニケーションをとっていないのに互いが通じ合っているかのように戦い進様は双子であることを感じさせた。


 規格外、というのは紫紺のツインテールに行進服を着用する女性だ。ていうか、何故ここにいるのだと疑問を持つ。この感じ、上位階級者じゃないのか?

 思わず足を止め、固有魔法をより強力にし様子を窺う。数秒後、しっかりとその瞳に捉えられた。ツインテ少女は動向を開き驚いた表情をすると同時に、にぱーっと眩しい笑顔を向けてきた。

 その場から動けず接近するツインテ少女は眩しい笑顔を急接近し浴びてしまった。緊張で冷や汗が垂れるだけだった。


「みぃーつけたっス!」

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