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アワリティアが仲間になりました。

 アワリティア……じゃなくて、フェローが仲間になったわけだが、このままギルドに連れて帰ってもいいものか。

 その悩みは彼自身も感じているらしく、語りかけてきた。


「で、僕はどうしたらいいでしょう。 このままギルドに入ったところで捕まるのがオチでは?」


「そうなんだよな。 そうなんだけど……お前を連れて行かないと勝手な事しそうだからなあ」


「別にもうものをとったりはしないですよ」


「いや、信じてやりたいんだけどな。 なんか、闇ギルドの本部に乗り込んでいきそうで」


「……いや、しませんよ。 そんな危ない事」


「そうか。 なら、いいんだけど。 とりあえず、まぁ行くか」


「分かりました。 頼みますね」


「あぁ、ダメならダメでなんとかしてやるよ」


 ギルドは、まだ修復の途中で、ところどころが傷んでいる。

 その中へフェローを連れて入ると、やはり注目を浴びた。


「おかえりなさい。 シリュウ、その人は?」


「あぁ、フェローって言うんだ。 今日から仲間になる」


「フェローね……ねぇ、シリュウ。 私の目が誤魔化せると思った?」


「…………あとで説明する。 それより、メンレイが来てないか?」


「えぇ、来てるわよ。 上で待っててもらってるわ」


「分かった。 行くぞ、フェロー」


「はいはい。 分かりましたよ」


「あ、崩れやすいから気をつけろよ」


「なるほど……これなら」


 フェローが指を鳴らすと、階段が直っていった。


「へぇ、便利なんだな」


「……これくらいなら簡単ですよ。 ギルドは、後で僕のスキルで修復を手伝いましょう」


「そりゃ助かる」


 俺たちは、階段を登っていき、部屋の戸を叩いた。

 返事が返ってきたため、俺は戸を開けて中に入った。


「報告を……アワリティアっ!!」


「こいつはフェローだ。 よく似ているが他人の空似だろう」


「……そんな冗談が通じると思って?」


「アワリティアは死んだ」


「そこに生きているっ!!」


「……あのー」


「なんだ? フェロー」


 フェローが小さく手を挙げて、俺たちの中を割って入っていった。


「とりあえず座りましょうか。 茶を用意しますよ」


「……そうだな。 いいか? メンレイ」


「えぇ、いいけど……納得のいく理由をちょうだいね」


 俺たちは腰をかけた。

 出された茶をそのまま口に運ぶ。

 その茶は、香りが豊かで、まるで荒野に咲く一輪の花のように……いや、茶のことなんてよくわからん。

 とりあえず、気分が落ち着いていくのがわかった。


「まぁ、こいつはアワリティアじゃないという前提で話すか」


「前提ってことはアワリティアなんじゃないの」


「建前ってのは今後重要になるだろう? で、もしアワリティアだったとして何が問題なんだ?」


「彼がやってきたことよ。 彼が起こした戦争で何人が死んだか……彼が国宝と呼ばれるものをどれだけ略奪したか」


「そうなの?」


「えぇ。 欲しいものがあって、それを手に入れる力があれば誰でもそうするでしょう」


「そうだよなぁ。 よしっ、水に流そう」


「許されると思うのっ!?」


 メンレイが机を叩く。

 メンレイは一度も口をつけてないのか、一杯分がそのままになっている。

 そのため、危うく紅茶がこぼれそうになっていた。


「じゃあどうすれば罪が償えるんだ? 情報を流して処刑すればいいのか……死ねば許されるのか?」


「そうよっ!! せめて被害にあった国々の利益になって死ぬことが贖罪よ」


「利益になればいいんだろう? フェローは、俺の元で働いてくれる。 十分じゃないか」


「信用ができないわ」


「そうだな。 だから、俺が直々にこいつの面倒を見る。 それとも、俺のことも信用できないっていうのか?」


「それは……そうだけども。 闇ギルドの者を……しかも幹部をギルドに入れるなんて、異例すぎて」


「あの……1ついいですか?」


 フェローが、口を開いた。


「なんだ?」


「この女、思ってたより小さい女ですね」


 こいつ、爆弾発言を。

 急だったため、フォローの入れようもない。

 メンレイの顔もすごい引きつっている。

 これはもしかして怒っているのか。


「何……かしら? アワリティア。 死にたいのかしら?」


「いえ、ただ……メンレイといえば、最年少でS級になり、弱き者の味方としてその力を振るう真に強き女性と聞いていたものですから」


「……え、なんだって? ちょっと聞こえなかったからもう一度言ってくれるかしら?」


「だから、メンレイといえば若いのにしっかりしているすごい人だと……だから先の作戦で会おうと誘き寄せたんですよ」


「ふーん。 分かってるじゃないのこの子は。 いいわよ。 ギルドに入りなさい」


「えぇー。 いいのか?」


「ん? まぁ、あなたを敵に回すわけにはいかないしね」


「いや、国王の許可とか」


「大丈夫よ。 あの人私にデレデレだから」


「そう……か。 まぁよかったなフェロー。 なんだ、これからよろしく」


「えぇ、よろしくお願いしますよ。 せいぜいね」


 こうして、アワリティア改め、フェローが正式にギルドに加わった。

 フェローの役割というと、会計職に就いたようだ。


 というのも……


「とりあえず、一瞬で直したわけですが」


「おぉー!! やるじゃないのこの子は……フェロー君でいいんだっけ」


「ふむ。 君ですか……これは完全に」


「ん? どしたの?」


「いえ、それより、職人の数が多いですね……帳簿を見せてもらっても」


「え、えぇ。 いいけど」


「なんですかこれ……無駄が多すぎます」


「えぇーー。 こんなものじゃないの?」


「いきなり大金が入ってきて難しいのも分かりますが、無理に使い切る必要はないですよ……分かりました。 私が管理しますっ!!」


「ふ、ふぇぇええ。 よろしくお願いします」


 と、言うわけだ。

 まぁ、敵としても裏切り者を許すわけにもいかないだろうし、表に出るようなことはあまりさせたくなかったからちょうどいいと言ったところだ。


 ちなみに、街の人たちからは。


「この商品、安すぎますよ。 僕たちは助かりますけどね……」


「そうかい? じゃあまぁサービスしてやるよ」


「そうですか? ありがとうございます。 あ、この柱壊れてますね」


「んー。 いつか修理しなきゃなと思ってたんだがなー」


「いいですよ。 僕が直します」


「おぉー。 こりゃたまげたなぁ。 君、礼にもう一個もらってけ」


「それは悪いですよ……もう、いいって言ってるのに」


「若いのに遠慮なんてするな!! はっはっはっ!!」


 ーーなんて、受け入れられている。


 こうしてみると、意外に悪いやつじゃないのかもしれないな。

 さて、とりあえず7大罪は残り6人。

 仮面を回収できていないから、もしかしたら増えるかもしれないが。



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