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エンヴィーの仮面

 まだ早いかな。

 いや、思い立ったが吉日だ。


 俺は、いま国のギルドをまとめるところ、ギルド運営所に来ている。

 そこで、整理券なるものをお姉さんからもらって、大人しく待っている。


「やけに待たされるな。 団長も大変だったんだな」


 ここでの役割として、俺たちに最も親しいのはクエストの管理だろう。

 うちのギルドは小規模ながら、ほぼ毎日クエストボードが更新されていると言うことは、この長蛇の列を団長が耐えているからと想像できる。


「24番の方お願いします」


「あ、はい」


 俺がここに来た理由も、クエスト関連と言っていいだろう。


「おはようございます。 ご用件をお聞きします」


「うーん。 お姉さんじゃちょっとな。 メンレイいる?」


「失礼ですがアポはおとりですか?」


「俺の名前を出せばきっと通るよ。 シリュウって言うんだけど」


「えっ!? あなたが、あのシリュウ様ですか?」


「ん? そうだけど」


「し、失礼しました。 いま、声をかけてきますので、お待ちください」


 運営所も、実はギルドの1つである。

 国営のギルド。

 国の中で一番大規模なギルドといえよう。

 団長の代わりに国王やその国の代表者がいるのだが。

 うちは王国だから、国王ということになるのかな。

 程なくして、お姉さんだけが帰ってきた。


「あれ? ダメだった」


「いえ、お部屋を用意しました。 ご案内します」


「あ、どうも」


 俺は、連れられて部屋へ入った。

 なかなか広く、インテリアは品がある。

 何より、ソファがふっかふかだ。


「唐突に会いたくなるなんて、私に惚れたのかしら?」


「お姉さんごめんね。 急に無理言って、ありがとね」


 俺は、廊下を歩くお姉さんに向かって手を振った。


「ちょっと、聞きなさいよ」


「……単刀直入に聞いていくぞ」


「え? あぁ、うん」


「闇ギルドの勢力について教えろ」


「なによ、そんな真剣な顔をして、プレッシャーがピリピリして痛いんですけど」


「ん……ふぅ。 すまんすまん」


「まぁ、勉強したいっていうならいいけどね。 ほら、これを見なさい」


「これは、世界地図か?」


「そうよ。 で、大まかに東西南北と中央を分けるでしょ」


「中央がかなり大きいんだな」


「多分今はもう少し大きいんじゃないかな。 この中央が、闇ギルドの大元よ」


「嘘だろっ!? もっとゲリラ的に小規模だと思ってた」


「最初は、手に取る必要もないくらい小国だったんだけどね」


「なるほどな。 で、中央から分かれたもう1つの赤丸はなんだ?」


 地図の中央近い丸は5つで、赤く囲われている。

 そして、中央に隣接する丸の中に、メンレイは文字を書いてあった。


「西が、7大罪。 北が、4大天使 東が、8大竜王。 南が、サイバネティクス12ね」


「あぁ、4つの大きな勢力ってやつか」


「今では西は6つ。 北は7大罪に対抗して7大天使なんてやってるみたいだけどね」


「で、中央に親玉がいるわけだ」


「やりにいくつもりなら止めるわよ?」


「……別にそんなわけじゃない」


「嘘、顔に書いてあるわよ」


「止めるなよ。 安心しろ倒してきてやるって」


「いいえ、今は危ういながらバランスがいい状況なの。 それを下手に上を倒して下が暴れ出したらあなたの責任よ」


「なら、どうすればいい」


「簡単よ。 こう言うのをやっていけばいいわ」


 差し出されたのはクエスト用紙。

 当然のようにSと書かれたそれは、闇ギルド関連のクエストであった。


「クエストとしてやっていくなら許容するってことか?」


「国を通してるからね、考えがあるんでしょう。 だから安心できない? ま、こういう仕事はどんどん回してあげるから」


「助かる。 とりあえず、これをやらせてもらおうか」


「うん。 これは、墓荒らしの正体を探すものね。 アワリティアを埋葬したんだけど、その墓が荒らされちゃったの」


「そうか。 嫌な予感がするな、とりあえず墓へ行ってみる」


「うん。 アワリティアを倒したあなただから、特に大丈夫だと思うけど、気をつけてね」


「おう。 ありがとな」


 俺は、墓場へと向かった。

 そこには、アワリティアと書かれた墓石があり、無残にも荒らされている様子が見えた。

 遺品、というのも特にないだろうが、亡骸や奴のつけていた仮面が無くなっているのが分かった。


 ふと、背中に気配を感じる。

 俺は振り返った。


「ふふふっ。 あなたがアワリティアを倒した。 そうですよね? 分かりますよ。 あなたのおかげで、今日から私がアワリティアだ。 はははっ」


「お前が墓荒らしの正体だな。 わかるぜ」


「ふふふっ、この仮面。 エンヴィーの仮面。 これを手に入れた者が、次のアワリティアになる。 ずっとチャンスを狙っていた」


「そうか。 で、死体はどうするつもりだ。 本国で埋葬って顔はしてねえけど」


「死体……? なんのことでしょう。 私が一昨日頂戴したのはこの仮面だけですよ」


「なに? どういう意味……そういう意味か」


 1人の男が現れる。

 その男は、死んだとばかり思ったいた。

 別に生きてて欲しいと思ったことはないし、そいつも悪人であったわけだが。

 そう、現れたのはアワリティアだ。


「スティグマ。 なにを調子に乗っているんですか?」


「アワリティア。 いえ、もうあなたはアワリティアですらない」


「やめておきなさい。 ピーキーすぎてあなたには扱えませんよ」


「うるせぇっ!! いつも私を見下して……あなたのことが目障りだったんだよ」


「良かったですね。 今から死ぬあなたにはもう関係ないですよ」


「この野郎ぉぉうううう!!!!」


 仮面を、スティグマがつけた。

 その瞬間、奴の体が黒いもやにに包まれる。

 魔力の高まりを感じる。


「これは、どうなったんだ?」


「仮面は魔力増強アイテムと思っていてください。 たが、厄介なんですよ」


「厄介だと?」


「まぁ、見ていてください」


「ぐっ、ががが。 ……我はマモン。 全てを求める者」


「というわけです」


「どういうわけだよっ!!」


「あの仮面には悪魔の力が封じられてるんですよ。 魔力を得られる代わりに、弱いものは飲まれてしまう」


「じゃあ、あれはそういうことね」


「この世界を手に入れるもの。 私が、最高の男なのだ」


「ええ。 協力しませんか? あれを相手に1人ではきついでしょう?」


「なんで俺がやる前提なんだよ。 お前も当然やるんだよな」


「そうですね。 では、共闘です。 マモンの力ではなく、マモン本体ですから強いですよ」


「そうかい。 俺たちよりもか?」


「それは、ありませんねえ」


 俺は、マモンに近づくが、奴は空へと浮いていく。

 手の届かない場所まで行ってしまった。

 突如、地面が上がっていく。


「おぉっと」


「とりあえず、あなたが触れば勝ちでしょう」


「そういうことね」


 俺は勢いよく、マモンに近づいていく。


「ほう、人間風情が私に近づくか」


 マモンが、大気を操って俺を攻撃する。

 大気……なら。

 おれは、周囲を凍らせた。


「ざんねんだったな」


「ふん。 人間風情がやるな」


 俺の手が、マモンに触れる。


「触れたところで……」


 俺は、凍らせて鼓動で砕き、燃やして鼓動で砕きを繰り返す。


「じゃあな。 悪魔やろう」


「なんだ……とぉぉおおおお」


 悪魔は地面に落ちていく。

 俺はその悪魔に捕まって降りた。


 地面に降りてからも、俺はこいつを殺し続ける。

 そして、アワリティアが近づいてきた。

 アワリティアが、仮面をとって剥がした。


「これがある限り、彼は不死ですよ。 悪魔とは死なないものです」


「そうか……」


 俺は、アワリティア相手に構える。


「いえ、その必要はないですね」


 彼の手にある仮面が姿を消した。


「それは?」


「アセディアの力ですね。 瞬間移動……前にも見たことがあるでしょう?」


「あれねー。 で、仮面を取られたと」


「そうですね。 敗れた私は用無しということです」


 アワリティアが手を差し出した。


「それはどういう意味だ? アワリティア」


「アワリティアと呼ぶのはやめてください。 今の僕はフェローです」


「……フェロー。 どうするつもりだ?」


「いいですよ。 殺すなり、捕らえるなり」


「ふふっ。 お前面白いやつだな。 仲間になれよ」


「そんなことしたらどうなると思います?」


「いいよ。 文句言うやつらは全部黙らせれば。 もう、悪いことしないんだろ?」


「さあね。 それはどうでしょうか」


「やらせねえよ。 俺の仲間になるんだったらな」


「……とりあえず、あなたに飼われてあげましょうか」


 俺たちは拳を合わせて、笑いあった。

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