バーサス マクシミリアン
戦場には、何もいない。
敵も、味方も。
地形が破壊され、壊れた地球のかけらが落ちている。
その先を抜けて、国境を越えると、待ち構えているものがいた。
あの、奇怪な姿は、アセディアだ。
彼は、俺の前に立ちふさがっているのだ。
「結局お前は敵なのか? アセディア」
「そういうわけじゃない。 だが、お前に伝えておかねばならんことがあってな」
今更。
伝えておかねばならないことなど。
一体なんだろうか。
アセディアは、敵なのか。
「手短に話せ」
俺がそういうと、アセディアは天を仰ぐ。
深呼吸。
大きく吸って吐いた後、俺に問いてくる。
「お前はなんのために戦う?」
考えるまでもない。
それは。
「仲間のために。 敵を倒す」
「ーー違うね。 そんな、大義を探しているから、お前は迷うんだ」
俺は、左拳を固めると、それをアセディアへと振り抜く。
頬の柔らかさが、だんだんと肉の固い感触へと変わっていき、不快感とともに突き飛ばす。
アセディアは飛んでいくが、俺の目の前に、血とわずかばかりの肉や歯を残した。
「無駄話をしている暇はない」
俺が、さらに先に進もうとする。
その時、アセディアが追いついてくる。
「無駄じゃないぜ。 ほら、ここにお前の目的が待っている」
胸をさすりながら、彼はそういう。
その場所には、龍の烙印。
こいつが言っているのは、俺の復讐についてだ。
「……どういう意味だ」
「復讐を終わらせたらどうするんだ? お前の大好きなみんなとともに、仲良く暮らすのか?」
「ーーそうだ」
「ちがうねえ。 お前の心はそうは言っていない」
「また、死にたいのか?」
「聞けよ。 龍を生き返らせることができるとしたら?」
龍を……ヘイローンを生き返らせることができる。
こいつは、何を言っている。
「聞いてやる」
俺は、拳を下ろしていた。
アセディアの言葉に、耳を傾ける。
「夢を現実にする。 あの世界を、この世界に接続する。 お前さんが、マクシミリアンの力を得ることができれば、それがやっと可能になるんだ」
「夢を……それでどうやってヘイローンを生き返らせるんだよ」
「気がつかなかったのか? あの世界は、俺たちが再現した、過去だ。 まだ、龍が生きていた時代の」
過去。
龍が生きていた時代。
「……接続、どうすればいい」
「話が早いな。 簡単だよ。 お前が奴の力を得れば、深淵が作れる。 その中に、お前が入れば、神になれる。 後は……お前が世界を思う通りにすればいい」
「そうか。 それで、お前たちは、何を望む? タダで、俺に力を貸すとも思えんが」
精一杯、睨みつけながら、俺は、アセディアに聞いた。
彼は、笑いながら、目を背けながら、言う。
「別に、なにも。 そうだな。 じゃあ神官にでもしてくれるかい。 なんてな。 俺は……俺たちはただ、取り戻したいだけなんでね」
「そうか。 分かったよ。 お前の言うとおりにしてやる」
「分かってくれて何より、それじゃあほら」
アセディアの横には、ゲートが生まれる。
そこに飛び込めば、マクシミリアンとすぐに戦える、と言うわけだろう。
だが……いや、それもいいだろうか。
「あぁ、すまないな。 助かる」
「いや、こちらこそ。 良かったよ。 お前が仲間のために、ゲートは使わず、敵を減らしていく……なんて言わないで」
「……バカめ。 そんな必要はない。 俺は仲間を信頼しているからな」
「クックック。 そう言うことにしておいてやるよ」
俺は、ゲートに手をかける。
そして、首だけ少し回しながら、横目でアセディアを見る。
「そうそう。 俺が、マクシミリアンを倒した時点で俺の仲間が1人でも死んでいたら……深淵を作るなんてのは、やめにしようと思う」
「は? それはどういう……」
この時、はじめて、アセディアの顔から笑みが消える。
「お前だけサボるなんて許されるわけないだろう。 せいぜい働いてこい」
「いや、しかし」
「安心しろ。 俺はお前も信じてやるから」
俺は、それを言い残すと、ゲートの中へと飛び込んでいく。
その先には、1人の男が待っているた。
まるで、全てを見下すかのような瞳。
だが、その魔力からは、冷たさを感じない。
むしろ暖かかった。
「お前が、マクシミリアン?」
「久しぶりだな。 シリュウよ」
「あぁ? 初めましてだろう」
「そうか。 そうだな。 やるんだろう? 私と」
もしかしたら、顔を合わせれば、この感情はそれほどでもないと証明されるかもと思っていた。
ヘイローンを生き返らせることができるなら、復讐も果たす必要がないかもしれないと思っていた。
だが、安心したよ。
こいつは殺さないと気が済まない。
「あぁ、始めよう」
戦いの火蓋が切って落とされ、燃え始めた。




