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富士の決戦

 陸地が高いところにあると、それに伴って外気温が低くなる。

 よって、寒さを感じる。

 ムサシが伝えられた将軍の居場所は、日本一の山。

 標高が上がるにつれて、空気は冷たくなり、体の芯まで冷えてくる。

 ある一線を越えると、途端に吐く息が白くなる。


「ここで良いのか? ジョン」


「おい、それはやめになったでござろう」


「だけどお前、名無しの権兵衛は嫌なんだろう? なら仕方あるまい」


「だからと言って、その外国名も気に入らんでござるよ」


 俺たちは2人で山を歩き、その周辺をハンゾウが隠れてついてくる。

 そして、山の頂上にたどり着く。


「なぁ、お前名前を、なんていうんだ?」


「そうでござるなあ。 なら、ベンとでも呼ぶでござるよ」


「……ふーん。 結局、外国っぽい名前だな」


「悪かったでござるな」


「いや……なら、ベン。 気がついているな?」


「どうやら、はめられたようでござるな」


 どこからともなく、影が降るようにして黒装束の者たちに囲まれる。

 彼らは、特徴的な赤い面をつけていて、立ち姿はハンゾウによく似ている。

 そして、その面の向こうに潜む瞳は、暗く世界を見渡しているようだ。


「変な面だな」


「あれは、天狗でござるよ」


「天狗? あの鼻が高い……」


「その通りでござる」


「ふぅん。 強いの?」


「あの背中の羽は、鴉天狗でござるな。 おそらく、この国でもトップクラスかと」


「へぇ、お前よりもか?」


「へ? 当然でござろう」


 ーーへぇ、そうか。


 呟くようにそういうと、俺は面をつけた忍びの元に駆け寄る。

 そして、手を触れようとすると、瞬時に囲まれ、向けられる刀。

 俺は、それらを退けて、1人の忍びを掴む。

 そして、その1人を破壊する。


「もっと自信を持てよ。 ベン。 お前の方が強いぜ?」


 後ろから多数の刃が向けられるが、それを一太刀で斬り伏せてくれる。

 ベンは、刃こぼれを許さない。

 そして、忍者の持つ直刀を全て折る。


「やれやれ。 無茶をするでござる」


「ほら、早く早く」


 俺たちは天狗どもを、ちぎっては投げ続ける。


「なにをでござるか?」


「ほら、こいつら知ってるぜ。 だから、さとりを起動して……」


「簡単に言ってくれるでござるなっ!!」


 天狗たちは、皆んな、誰にやられたか分からないが、喉が潰されている。

 そして、特徴的なのは、面の向こう。

 鼻が削ぎ落とされ、その上に火傷跡が見える。


「できるだろう。 ほら、やれ」


「そんな無茶を……あっ」


 混沌とする戦場に、いきなり現れたのは、少女だ。

 それも三つ目。

 一目連よりも、少しだけ大きいと思いました。


「それが?」


「出ちゃったでござる」


 無防備にこちらを振り向くベンに、1人の天狗が攻撃する。

 それを、俺がかばうと、はと気がついたベンがそいつを打ち倒す。


「しょうがねえ。 守ってやるからはやく成長させろ」


「ーーその心配はいらない」


 虚空を切り裂くように、ハンゾウが見参。

 その顔には、天狗の面がつけられている。


「どういう意味だ?」


「ーーふん」


 ハンゾウが指を鳴らすと、天狗たちは、同時に倒れる。


「……1人残して欲しかったんだが」


「ーーなぜ?」


「あ、2人とも。 さとり起動したよ」


「……こういうことだ」


「ーーすまない」


 結局、俺のスキルで1人の意識を取り戻させ、さとりを使用する。

 少女がその男の頬に触れると、三つの瞳が男の目を捉える。

 その時、男の身体が硬直。

 全く動かなくなった瞬間に、少女と男の唇が重なる。

 男の体が痙攣して、最後に動かなくなる。


「はい。 えと、将軍様の居場所です?」


「ああ。 そうでござるよ」


「地図は、ありますか?」


「……ほら、これを」


 俺が地図をさとりに明け渡すと、彼女が地図上に指を当てる。

 そこが赤く滲むと、円となって場所を示した。


「江戸か」


「灯台下暗しでござるな」


 その時、新たな天狗たちが現れ、囲まれる。


「……おまえ、本当に信用されてないのな」


「ほっとくでござる。 それより、行くでござるよ」


「ふぅん。 自信満々じゃん」


「1人なら、無理でござるが……」


 ベンが視線を送るのは、ハンゾウだった。

 彼女は、面を撫でながら小躍りをしている。


「ーー御意」


 しかし、視線に気がつくと、すぐに膝を地につけた。


「さぁ、はやく」


「……しょうがねえ。 サクッと助けに戻ってやるからな」


「その必要はないでござる。 むしろ、こっちが助けるでござるよ」


 ムサシの横に、コジロウと呼ばれた男がいた。

 俺に気がつくと笑って手を振ってくれる。


「……いいんだな?」


「あぁっ」


 俺は、ムサシに背を向けると、天狗衆の方位を一点から突破する。

 もちろん、やってくる追って。

 それをムサシが止めてくれる。


「信頼してるぞ」


 俺は、将軍のいるであろう江戸を目指した。

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