表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/66

裏切り

 一夜城を皮切りに、俺たちはシン国との戦闘に勝利し続けた。

 ジパングの兵は精鋭が集められていて、地の利を得れば確実に勝利を得る。

 無理な作戦もあったが、俺の力とムサシの援護、そしてハンゾウの暗躍にて、無敗のままシン国の首都まで侵攻することができた。


「……おかしい」


「どうしたのでござるか?」


「うまく行き過ぎている」


 俺たちが見通す先には、すでにジパングの兵達に囲まれている城がある。

 落ちるのは時間の問題だろう。


「本国から、本隊が到着した。 侵攻もほぼ終わりに近づいている。 何が問題なのでござるか?」


「八大龍王は、どこに潜んでいる。 ここまで侵攻したのに、なぜ出てこない?」


「まぁ待つでござる。 それについてはーー」


「ーー伝令。 八大龍王の行方を確認」


 どこからともなく、ハンゾウは現れる。

 地に膝をつき、それに手を添えながらムサシの言葉を待っている。


「……話すでござる」


「御意。 八大龍王は、中央へと集められている模様。 また、それに限らず、多くの戦力が集まっていることがわかった」


「多くの……勢力だと?」


 俺が問うと、ハンゾウは一瞥をくれるが、答えてはくれなかった、


「……ムサシ」


「ふふっ。 ハンゾウ、答えるでござるよ」


「……闇ギルドの全勢力が中央に集められているとのこと」


「と、言うことでござる」


 全勢力が、中央に。

 それが意味すること。


「ムサシ、すぐに用意しろ。 さとりを連れて北へ行く」


「しかし、ここはいいのでござるか?」


「ここはもう時間の問題だろう。 それよりも、大事なことがある」


「大事なこと……でござるか?」


 ムサシの顔つきが深刻になっていく。

 例えるなら、覚悟を決める前の男の顔だ。


「あぁ、なんとなく察してるんだろ?」


「……さて。 まぁ、とりあえず城に戻るとするとござるか」


 俺たちは、船に乗り込み、ジパングへと帰っていく。

 その間に、小型高速艇による伝令で、首都陥落の報告が届いた。

 その報告を受けながら、俺たちは特に会話もないまま、たどり着いたは城。

 人質となった2人の元へ、やってきたはずだった。


「……どういうことだ?」


 そこには誰もいなかった。

 ムサシと俺の2人が、部屋の真ん中近くで立ち尽くしているばかりだ、


「こういうことでござるよ」


 ムサシが腰の刀を抜く。

 それを俺に突きつける。


「……お前じゃ死ぬだけだぞ」


「主君の命は守らねばならないのが、辛いところでござるな」


「後悔……するなよ」


 俺はゆっくりとサムライに近づいて、その手を伸ばす。

 少しずつ、近づいていく。

 彼は、警戒するように、刀をずらし俺に触れさせる。

 俺は、刀を避けながら、ムサシに手を触れようとしたタイミングだった。

 鋭い痛みに、手を止めた。

 その瞬間、ムサシは俺から距離を離す。

 俺の腕には、手裏剣が刺さっているのを横目で見ながら、視界に捉えたのは忍者。

 俺をまっすぐに見つめながら、ムサシの前に立つ忍者だ。


「ハンゾウ、お前……」


「行けっ。 3分……いや、1分ほど、私が稼ぐ」


「……しかし」


「行きなさい。 ムサシ」


「すまんでござるっ」


 ムサシは、俺に背を向けて走っていく。

 武士が敵に背を向けるなど、というのは野暮だろう。

 俺は、彼らの様子を腕に刺さる手裏剣を抜きながら眺めていた。


「おいおい。 そいつにはルクス達の居場所を聞かないといけないんだが」


「通さん。 お前は」


「そうか。 稼ぐって言ったもんな。 1分だけ……実力差、わかってるじゃねえか」


「……推して参る」


 俺は、刹那で距離を詰め、左腕を伸ばしてハンゾウを掴む。

 掴んだ、と思った瞬間、再び鋭い痛みが蘇るが、離さない。

 しかし、掴んでいたのは顔を隠す布だった。

 背中からも、痛みが現れる。

 ゆっくりと俺は振り返り、ハンゾウの姿を捉える。


「……女か」


「だったらなんだ?」


「俺は女には優しくんでな。 命は見逃してやるよ」


「油断していると、お前が死ぬぞ」


「……俺が?」


 もう一度、距離を詰める。

 ハンゾウは、俺が掴む動作をするときには、もうすでに回り込もうとしていた。

 俺は構わず、彼女のいたところを掴むと同時に、腕に刺さる手裏剣。

 痛みをそのままに、俺は空を掴む。

 その瞬間、ハンゾウは、得物を放つが、それを弾いて、距離を詰めた。

 そして、腕を伸ばし、それを避けようとした彼女を、義腕で抑えた。

 そのまま、首を掴むと、俺は辺りを見渡す。


「さて……と。 そこか」


 俺は、足を運んでムサシの気配の元へと向かうと、その気配の通り、ムサシはいた。


「さて、こいつの命が欲しければ、わかるな?」


「……ハンゾウ。 わかってるでござるな?」


「ーーはい。 すみません」


 その瞬間、ハンゾウから、爆発が起きた。

 俺と、ハンゾウは、それに飲まれていく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ