暗黒の密約
そこで待っていたのは、仮面をつけた少年だった。
年齢は見た目ではわからないが、俺には小さな子供に見える。
「メンレイが来ると思ったのですが、あなたは誰ですか?」
「代わりの者です。 お見知り置きを」
「これはご丁寧に。 で、君は私の敵ですか?」
「うーん。 お前しだい? 何が目的なの」
「決闘ですかね。 かの有名なメンレイさんと戦いたくて」
「そういう顔はしてねえなぁ。 街を襲って何がしたいんだって」
「へぇ。 勘がいいんですね。 では、闇ギルドが街を襲うのに、略奪か侵略以外の理由があると思いますか?」
「どっちなんだろうなぁ。 教えてくれよ」
「では、まず名乗らせていただきましょう。 7大罪。 強欲のアワリティア」
「ふぅん。 どっちもってことか」
「どうやら、あなたは私の敵のようですね」
「違うなぁ。 お前が俺の敵なんだよっ!!」
あの周囲の地面がとげとなり、俺を貫く。
「いいえ、終わりですよ」
俺はアイアンメイデンにやられたかのように、穴だらけになる。
とげとなった土に、血が滴る。
体温が奪われていくようだ。
「それは、どうかな?」
俺は、とげに手を置き、脈圧で、それを崩した。
そのまま、脈拍数を特化させ、身体を修復していく。
「そこらの有象無象とは違うようだ。 これはどうですか?」
地面がうねり鞭のように俺に襲いかかる。
俺はそれを避けながら体温を上げていった。
炎を纏い、浮力を持つ。
その身体で高速で動き、アワリティアの懐へと入った。
「さぁ、1発もらいなっ!!」
「ふうん。 残念ですね」
俺の拳は、防がれる。
この土、硬いな。
そんな感想とともに、俺は土に体を包まれる。
「……捕まったか」
「ええ、これでカゴの中の鳥、私のものですね」
俺は、心臓を震わせる。
身体中の鼓動を大きく響かせる。
そして、足を上げて、大きく振り下ろした。
「オラァっ!!」
その威力は、土の檻を破壊するのに十分であった。
「ふぅん。 雑な戦いをする方ですね」
「こういうのは嫌いかい」
「いいえ。 一ついいですか?」
「なんだよ?」
「あなたの名前を聞いておきたくて」
「あぁ、シリュウというんだ」
「へぇ、いい名前ですね」
「なぁ、違うとは思うんだが俺も聞いていいか?」
「なんでしょう」
「龍を倒したことがあったりしないか?」
「ドラゴン……ですか? まだ無いですねえ」
「そうか。 だよなぁ」
なら、こいつは復讐の対象じゃないな。
しかし強いなこいつ。
決着がつかなさそうだ。
「どうしたんですか?」
「いや、そいつが親の仇でなぁ」
「ふーん。 それは辛いですね」
「いやあ、気にすんなよ。 お前には関係ないんだから」
「今私を見逃してくれたら探しておきましょうか?」
「なんだよ? ビビってんの?」
「正直そうですね。 あなたは思っていたよりも強かった。 そして、メンレイをおびき寄せることができなかったということは詰みです」
「……いいぜ。 そのかわり、龍を殺したものの情報を頼むぜ」
「えぇ。 約束は守りましょう」
「行っていいぜ」
「ありがとうございます」
そうして、アワリティアは去った。
街へ戻るが、特に何かあった様子はない。
おそらく、メンレイがうまくやったのだろう。
このままいけば、敵討ちの日は近いのかもしれないな。