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ジパング行きの船

 暗く施錠された部屋に、2人はいる。

 窓には、ブラインドがかけられていて、周囲は黒く汚れた壁に囲まれている。

 あかりは、ろうそくに灯された火のみだ。


「……ミカエル達はどこへ逃げたんだ?」


「さぁ、知らないなあ」


 ギガイアは、答えない。

 こちらに目線を送るでもなく、ただ、虚空を見つめている。


「おまえは、いつからあいつらの仲間なんだ?」


「……殺せよ」


 俺は灯台を持ってギガイアの顔を照らす。

 彼は眩しそうに目を細めるが、開かれた口からは、同じ言葉しか出てこない。


「殺せ。 俺を」


「わかった、取り引きをしよう」


「そんな、一体何が、なにを?」


「ガブリエルの居場所を教えてやる」


「……ハッタリだな」


 ギガイアは、こちらに視線を移しながら言う。


「かもな。 どうする?」


 俺は、灯台を机に置いて、椅子に座り込む。

 そしてギガイアの顔を伺う。


「悪いが、教えることはできない」


「……そうか。 飯、食えよ」


 俺は、その部屋を後にした。

 廊下は、部屋と比べ明るいため、眩さを感じる。

 コツコツと、長身が故に、独特のテンポの足音が響く。


「話したかい?」


「いや、だんまりだな」


 ラファエルだ。

 こちらに近づいて、小声で話してくる。


「近々、尋問が始まる」


「尋問? 拷問だろ」


「……1つ、回避する手段はあるぞ」


「ほう。 それは?」


 ラファエルが俺の胸に、指を突きつける。


「心を読むのさ。 時期が良かったな」


「心を……読む? 一体、どうやって」


「東洋に妖怪という魔法がある。 さとり……というらしい」


 懐から、1枚のチケットを取り出して彼は俺に差し出した。


「いいのか? 俺で」


「お前なら信頼できるだろ。 ここは任せろ」


「……たしかに、おまえは信頼できないな」


「おいおい、お前なぁ」


「分かった。 この国は頼むぞ」


 俺はチケットを受け取って、拳を合わせた。

 その後は、特になにもなく、ただ、次の日がやってくる。

 船には、誰かが迎えにくることはなかった。

 黙って、出てきたからだ。

 港には、大きな鉄の船があった。

 海は凍っているが、その船はそれを関係なしに進むことができる。

 甲板では、冷たい風が俺を襲う。


「……こういう時、誰かが現れるものなんだが」


 景色を眺めるが、誰かがくるということはなかった。

 ただ、一枚の羽が降ってくることを除いて。

 その船は、東へと、向かっていく。

 大きく揺れながら、進んでいく。

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