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ミカエル討伐

「いきなり12枚羽とはなぁ」


 ラファエルは、腕を組みながら厳格そうに言った。

 彼は、、窓から外を見ながら、言っている。


「今のは、何だったんだよ」


「あれは、ウリエル・コピー。 ウリエルの記憶をそのまま写したクローンさ」


「ふーん」


「ふーん。 て……もっとなんかないのか」


「いや、興味がない」


 ラファエルは、呆れた顔で窓からこちらへと視線を移した。

 俺は、その時どんな顔をしていたのだろう。

 ただ、ラファエルが俺の顔を見た後、妙に納得したような表情を浮かべた。


「なぁ、1つ断っておくぞ」


「なにを?」


「俺は……俺たちは、お前の人生に興味がない。 だから、俺たちの目的のために、お前を利用している」


「それで?」


「お前も、抵抗しろよ? じゃねえと、どんどん壊れていっちまうぞ」


「壊れて……か。 気にするなよ。 俺が決めたことだ」


「……シリュウ君。 これをやるよ」


 投げられたのは、小さくて硬いものだった。

 とっさに受け取った左手を開いて、それを見ると、何かの紙に包まれている。

 それをゆっくりと開いた。


「何でこんなものを」


「持っているのか……か? それとも、俺に渡すのかか?」


「……両方だ」


 大きな魔石がついた、指輪だった。

 魔石は、妖しく光り、上品に佇まっている。

 それは、結婚指輪と言っても、誰も疑わないような綺麗な指輪だ。


「なんてことはない。 ウリコピを倒したら、お前に渡すつもりだった。 が、不要になっちまったがな」


「詳しく頼む」


「そいつは強制解放装置となってるんだ。 スキルのな。 ただ、普通と違うのは、天使として覚醒できるところだ」


「なるほど……渡していいのか? 貴重なんだろ?」


「なんで貴重だと?」


「これを渡す時、お前に妥協の表情が見えた。 渡す必要がないなら、とっておきたい代物だろう」


「……そうだな。 だが、お前も美味しい思いをした方がいいだろう?」


 ラファエルは、椅子に座り込んで、足を組む。

 そして、机の上に置かれたカップを口元へと運んでいく。


「そのお茶のようにか」


「あぁ……少しハズレだけどな」


「ハズレか。 人の心は難しい」


「ちげーよ。 お前はほとんど間違ってないぜ」


「なら、なにが?」


「こいつはコーヒーだ」


 笑い声は、人によって特徴が現れる。

 大きな声、はっきりとしない言葉、息は吐くのか吸うのか……ただ1つ。

 2人の笑いは、相性が良かった。


 太陽が沈み、また登るまでの間に、みんなは帰ってきた。

 全員で夕食を囲み、楽しく談笑をする。

 風呂は、周囲の視線が怖いという印象が強かった。

 そして、朝が来た時、ラファエルとともに、俺は1つの城へとやってきた。

 そこには、天使が飛び回っている。

 男の天使は数が少ないらしいが、そこには、多く飛び回っていた。


「これは?」


「どれもウリエルだな。 とはいえ、顔はいじってるようだが」


「ふうん。 全部倒そうか」


「出来るのか?」


「多分、簡単だろう」


 俺には、自信があった。

 ウリエルを取り込んだ時、左腕のそれが、全身に回っていくのを感じた。

 俺の力は確実に強くなっている。

 それを試したくて、仕方がなかった。


「そうか。 一応潜入作戦なんだけどな」


「なら、やめとくよ」


「いや、派手にいくか」


「……いいんだな?」


「あぁ、行ってこい」


 その言葉に、俺は羽を展開して答える。

 地面を蹴って、空を飛び、天使の元へ向かっていく。

 それに気がついた天使たちは、光の矢をこちらに放つ。

 俺は、全身から義腕を出して、それを1つ1つ丁寧に受け取っていく。

 そのまま、義腕を薙ぎ払うようにしてウリエルに触れていく。

 義腕に触れた天使は、急速に歳をとったかのようにシワ枯れて、そのまま灰となって消えていった。

 となりに、ラファエルがやってくる。

 羽の枚数は1枚、左肩へと伸ばされている。


「あまり飛ばし過ぎるなよ?」


「力が有り余るんだ。 で、作戦は?」


「まっすぐ行って助けよう」


「なるほど、ちょうど俺もそれがいいと考えていた」


 俺たちは、城の天守閣から侵入していく。

 すると、いきなりウリエルが捕らえられている。

 その姿は、最初に見たウリエル・コピーのものと同じである。


「見た感じ、ミカエルは居ないようだな」


 ラファエルが、ウリエルの拘束を解きながら、言う。


「この下だな」


「そうか……拘束が解けない」


「まぁ、ボスを倒せば解放されるタイプの拘束だろ」


「ボス?」


「いや、こっちの話だ……ミカエルと戦ってくる。 そいつのそばにいてやれ」


「1人でか? 危険だ」


「そいつが連れ去られるのも、もったいないだろ。 ほら、チャンスだぜ」


 そう言って、俺は階段を降りていく。

 ひとりの可愛らしい女性がいる。

 椅子に座り、こちらに背を向けていたが、俺に気がつくと、振り返って笑顔を作り直していた。

 その女性の背中には、羽がある。

 天使なのは間違いがない。


「ミカエルか?」


「えぇ。 そうよぉ」


「上のやつ、解放してくれねえかな?」


「私を倒せればね。 いいわよぉ」


「……そ。 なら、そうさせてもらうよ」


 俺は、義腕を取り出そうとする。

 が、現れない。

 そして、胸に現れるこの感情。


「残念だけど、僕の許可がないとスキルも魔法も使えないよ」


 影から、ガブリエルの影武者が現れた。

 スキルが使えないことに、それなりに焦りが現れる。

 が、俺はそれ以上に、つまらなさを感じていた。


「そう。 なら、可哀想だけど」


「可哀想だけど、なにかしらぁ」


 俺があの2人に攻撃しようとすると、攻撃ができない。

 だから、俺はあの2人を対象にしないように攻撃するか、あるいは攻撃と自分で認識できない行動をとることしかできない。

 だから、俺はこうした。


「空を飛べるのに、こんな部屋の中なんてな。 それにしても、人の気配はないが」


「ここには、僕たちしかいないからね。 ほら、誰がスパイかわからないし」


 上は、天守閣となっている。

 つまり、ラファエル達は無事だろう。

 そして、無駄な犠牲は出ないことがわかった。

 だから、俺は安心して、義腕を取り出す。


「え? なんで、魔法が……」


 ガブリエルの影武者が大げさに驚いていた。

 俺は、義腕を束ねて、大きな腕を作ると、城の壁と床を破壊していく。

 自然の摂理に則って、城は壊れて崩れていく。

 俺たちは下へと落ちながら。

 天使は空を飛べるが、落ちてくる天井に押されて、そのまま下へと叩きつけられた。

 崩れた瓦礫から、俺は顔を出す。


「……さて、任務完了か」


「おいっ!! シリュウ、お前何やってる」


「いや、スキルが……まだ使えないか。 ウリエルの拘束は?」


「ん? まだ解けてないぞ」


 まだ、2人は生きているのか。

 さて、どこにいるだろう。

 俺は瓦礫をひっくり返しながら捜索する。

 すると、予想外の場所から、彼女らは現れた。

 ラファエル達のさらに上に、彼女達は飛んでいる。


「いい作戦だったけどね。 ダメだったね」


「私たちに勝とうなんて、10年早いのよぉ」


 男を見下すかのように、こちらを見下ろす。

 慢心した態度に、勝ちを確信した表情。

 俺は、ウリエル解放のために、最後の手段に出る。

 義腕で、自分自身を攻撃する。

 魔力を食い、自分に還元する。

 魔力には抵抗があるため、少しずつ、魔力の総量は減っていくし、身体の回復のために、さらに魔力は使われる。


「何をしてるんだい? 諦めたのかな?」


「あらあらぁ。 可哀想ねぇ」


 そうあざ笑う2人に俺は飛んで接近した。

 そして、義腕を近づけていく。


「え? いや、攻撃は出来ないはず……なんで」


 影武者の方が、大きく義腕を避けたが、ミカエルは、避けきれないのか、盾を召喚して、受け止めていた。

 それは、かなりの時間、義腕を止めていたが、やがて消滅する。

 義腕が形作られて、俺の体に纏われていく。

 それは、大きな骨の形によく似ていた。


「さて、お仕置きだな」


「……ええと、ごめんなさい」


「ふん。 ダメだね」


 俺の拳は、彼女達を捉えて、1発で気絶させた。

 落ちていく彼女達を捕まえる。


「ウリエルは?」


「あぁ、解放できた」


「よし、帰るか」


 ミカエルの討伐に成功した俺たちは、ウリエルの解放を達成した。

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