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力試し

「はいっ!! また、私の出番ですか?」


 周囲の男たちがストちゃんを呼ぶと、ひょっこりとそこは現れ、頼みを聞いてはまた次の現場を探す。

 よく働くいい子ではあるが。


「俺は反対だぞ。 ストちゃんを働かせるのは」


「もちろん、安全は確保しますよ」


「そういう問題じゃ……」


「人手不足なんですよ。 ここは」


「だからといって」


「シリュウ!!」


「……なんだよ?」


「あの子は、もうそんな弱い子ではないですよ。 甘いのは結構ですが、信じてあげてください」


「万が一があった時は?」


「そのために僕がいます」


「……わかった。 いいだろう」


「では、行ってきます」


「うん……どこへ?」


「やることは山積みなので……あ、シリュウ。 ラファエル様が呼んでいましたよ」


 と、いうわけなので、あのおっさんに会いにいく。

 長い廊下を歩いていき、角を曲がるとそこにドアがある。

 そいつに丁寧にノックをすると、静かな廊下に音が響く。

 中から声がした。

 入っていいという合図だ。

 俺は、ドアを開くと、中へと入る。


「やあ、来たね」


「何の用だよ。 おっさん」


「ん、君の力を知りたくてね。 しかしここではなんだな」


 パチンと指を鳴らした音がする。

 すると、あたりの風景が、一気に変わった。

 少し高いところから着地をし、足元の土が少し足の形にめり込む。

 近くに小川が流れているのか、音だけが存在をアピールしていて、空は、とても暗いが周囲は明るかった。


「ここは、夢か」


「アセディアから、話は聞いてるよ。 だが、どうにも信用できなくてね」


「やろうってのか? 俺と」


「俺は、悪魔統一を果たしたイラを相手に勝っているんだぞ。 今更こんなおっさんに……てところかな?」


「……そこまでは思ってねえよ」


「なら、どう思っているんだ?」


「この世界で一番強い俺様が、ただの人相手に本気なんて出してられるか」


「負けん気が強いことで……ほら、かかってこい」


 その挑発に、俺は全力で答える。

 左腕から義腕が放たれて、全方位からラファエルを掴もうと伸びていく。

 それを、ラファエルは、薙刀のようなものを召喚し、薙ぎ払っていく。

 刃の部分が、奇妙に曲がっており、それ以外は普通に見えるが、妙に魔力を纏っている。


「いうだけはあるな。 じじい」


「ふふん。 いいだろうこれ」


「アロンダイトのレプリカか?」


 違うのは分かっている。

 アロンダイトは闇属性って感じだが、これは、それとはちがう禍々しさだ。


「ん、こいつはな。 ハーケンクロイツ十字槍って言うんだ。 妖がついてる」


「ハーケンクロイツは逆だバカ」


 俺は、距離を詰めると、腕を伸ばす。

 獲物が長ければ、接近戦は不利だろうからだ。

 だが、それを簡単にあしらわれてしまう。


「あ、そこ」


「なんだよっ」


「そこは今は危ないぜ」


「どういう……」


 足元が揺れたと思ったら、瞬時に大きな力で俺の身体は上へと押し上げられた。

 熱いそれは、湯のようだ。

 これは、間欠泉が突如やってきたのだ。

 それを一気に凍らせて、砕いて急速落下していく。

 氷の破片とともに、上からラファエルを襲う。


「やるねえ。 それが君のスキルか」


「上から目線も大概にしろ」


 ラファエルは氷を弾くと、俺の目元に飛ばした。

 俺はとっさに目を瞑ってよけるが、それを開いた時にはラファエルの姿はない。

 俺は着地して、首を横に振り周囲を見回す。

 その時、背中にチクリとした感触が現れた。


「ほーら、君の負けだ」


 背中から、声がした。

 俺は、そのまま後ろに後ずさりし、胸に強烈な痛みを走らせながら、無理やり振り返る。

 そして、左腕を伸ばして、ラファエルの首を掴んだ。


「いいや。 俺の勝ちだな」


「……負けず嫌いめ」


 いつの間にか、槍が消えていた。

 俺の身体は、すぐに治癒を始めていき、傷口を塞いでいく。


「アセディアの仲間か」


「そうだよ。 よろしくな」


「よろしくはしない。 で、何のための戦いだったんだ?」


「いや、君がどれだけやれるのかと思って」


「……で、答えは?」


「合格だ。 さぁて、ひと仕事しようか」


「ひと仕事?」


「あぁ、四大天使最強の男。 ウリエルを倒しに行こう」


「……は?」


 ラファエルの目の前にゲートが開く。

 そこから、光が溢れてくる。


「ほら、いくぞ」


「……いいだろう。 どのみち、いつかやらなきゃいけないことだ」


「いい心がけだ。 よっしゃ飛び込むぞー!!」


 俺たちは光に飲まれた。

 そして、世界が再構築されていく。

 周囲には、空があり、俺の身体はそれに気がつくと同時に落下を始める。


「おい!! ラファエルてめえ」


「ほーら。 どうだ?」


 光が俺の身体を包み、途端に体が軽く感じる。

 そして、落下とともに動いていた景色が、止まっていく。


「……まったく。 慌ただしいやつだなラファエル」


「あぁ、そろそろ楽にしてやるからな」


 この淡麗なイケメンがウリエルか。

 羽は6枚あり、周囲の光がこの男のためにあるように見えてくる。


「楽に……か。 それは嬉しいな」


「あぁ、シリュウ君。 頼むよ」


「……頼むよ?」


「俺は戦えないからな。 四大天使間ではダメなんだ」


 手を合わせて、申し訳なさそうな顔でラファエルは言った。

 せめて、事情を話してからこさせて欲しかった。

 などと考えていると、光の集合体が、すごい熱量でこちらへ向かってやってくる。

 俺は避けようとするが、自分の意思では動けない。

 くそ、仕方ない。

 左腕から、義腕を集めて盾にしてそれを防いだ。


「あ、そうだ。 移動は俺がしなきゃダメなんだ」


「ラファエル。 後でボコボコな」


 ウリエルはその様子を楽しそうに笑いながら見ていた。

 そして、そのままいくつにも増やした光の槍を飛ばし続ける。

 それを、今度は身体が勝手に動いて回避する。

 そして、俺は義腕でウリエルの身体を掴んだ。


「なぜ、避けない」


「……なぁ、君。 名前は?」


「シリュウだ。 覚えておけ」


「覚えておこう。 必ず、これから勝つんだよ」


 義腕は、まだ何もしていないが、ウリエルの目は閉じられて、落下を始めた。

 義腕を通して、すごい魔力が入ってくる。

 その魔力は熱く、身体が燃えているようだ。

 そして、背中から、それを放出していく。

 それは無意識であったが、そのまま理解できた。

 背中の羽をなびかせる。

 その12枚羽を。


「ウリエル。 無駄にはしねえからよ」


「おい。 そろそろ説明してもいいんじゃねえのか?」


 俺は、ラファエルの元へと飛んで近づいた。


「ここでは何だな。 アジトに戻るか」


 パチンと指が鳴らされると、また、あの部屋へと戻っていた。

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