最後の門番 その2
俺は腕を薙ぎ払うように振ると、ジャイヤはそれを避ける。
まだ魔力は残されているだろうが、ぎこちなくもしっかりと避けられた。
「さて、行ってくれたまえ」
「指図をするなっ!!」
と、アロンダイトの刃が追撃をする。
しかし、避けれる攻撃は避け、避けきれなければ透過すると、器用にスキルを使ってジャイヤは俺たちの猛攻を防いでいる。
その時、ちらりとギガイアの姿を見る。
その場から動こうとせず、何か機を待っているように感じる。
そして、捕まる魔力。
俺は、ジャイヤの背中に触れる。
手加減した攻撃ではなく、ただ触れるだけ、それにはジャイヤも透過のスキルを使用しなかった。
ーー流石に、ここから鼓動破壊は出来ないようだ。
そのため、俺は背中を押して、体勢を崩しながらレオンの方へと飛ばす。
そして、そのままギガイアの前へと立ちふさがった。
「おいシリュウ。 これはっ」
「どうやら北の勇者は俺が相手をしなきゃいかんらしい」
そう言って、魔力を高めて、ギガイアの行動を伺った。
魔力は依然として高くなっていく。
「止めないの? シリュウ」
「攻撃するのにも、条件がいるんだよ。 だけど、お前がそれなら好都合だ」
「強がりかな。 何を考えてるんだろう」
「さぁな。 ほら、中途半端だとお前が死ぬぞ」
魔力は、勇者の剣へと注ぎ込まれていくのが分かった。
刀身が、青い魔力によって伸びていく。
それを彼は両手でかかげて、こちらへと向ける。
「許可がなくても、避けるくらいはできるだろう?」
「アホウっ。 避けることを敵に嘆願するぐらいなら初めからやるな」
この大きな魔力。
……好都合だ。
俺は、あくまでこの大きな魔力を防ぎ、返すだけ。
つまり、防御だ。
それがたまたまカウンターという形になるだけだ。
「そうだね。 せめて、痛みを感じる前に死ねるようにするよ」
「出来ない約束はするものじゃないぜ」
その剣は、俺に向けて振られる。
それを俺は、左手の血液の義腕で受け止め、奪おうとする。
その瞬間のことだった。
その大きな刀身が、消えて無くなった。
「……うん。 君ならなんとかできると思っていた」
作戦失敗だ。
ギガイアは、この大きな魔力を、ギリギリで消し去ったのだ。
あれだけ時間をかけて溜めた魔力をただのフェイントに使った。
それには俺も、予想できなかった。
行き場を失った義腕は、腕へと帰っていく。
その間に、勇者の剣は、俺はと一直線にむかってくる。
「ーー作戦自体は、良いものだったよ」
だが、俺はそれを見切ることができていた。
大きすぎる魔力は、俺にとって危機であり、超集中の時間が始まった。
剣をあっさりと避けて、攻撃とは、思えないくらいに手加減をして、優しく撫でるように、俺はギガイアの肩へと触れる。
その瞬間、ギガイアの身体は吹き飛んでいき、ジャイヤにあたって、2人で壁に激突する。
「……ふぅ。 脆いな」
俺は、歩いて、レオンの横へに立つ。
「手加減しているんじゃないのか?」
「あぁ、手加減したさ」
俺は、壁へと目を向ける。
舞った砂埃が落ちていき、視界がクリアになると、そこに1人立つ、ギガイアがいた。
「悪いけど、通すわけにはいかないよ」
「まぁ、立つよな。 この程度で寝られても困る」
俺は、真っ直ぐに見下すようにギガイアに視線を送る。
対して、見上げるように、俺をギガイアは、瞳を揺らしながら、視線を合わせた。
2人の時が、重なっていくようだ。
たが、2人の戦いは、ここで終わりを告げさせられる。
1つ、また1つと2人を分けるように、白い羽が降ってきた。
「争いは構わないのだけど、城を壊すのは、やめてくれるかい?」
ガブリエルが、天井から、降りてくる。
笑みを浮かべ、重力を感じさせないようにゆっくりと。
俺は、それを美しいと思うと同時に、愚かだと思った。
「ガブリエル様……じゃないな」
エドに視線を送りながら、そういう。
エドは静かに首を縦に振った。
「うん。 この人は、ガブじゃない」
だからといって、攻撃手段はないが。
しかし、倒すべき相手が1人、見つかった。




