最後の門番
とりあえず、前に進む。
俺とレオンの意見は一致した。
まだ、見張りはいるのだろうか。
いや、道を進んでも、そういった人物はあられない。
ただ、ガブリエルのいる場所、扉を開けたらそこという場所に、2人の男が待っていた。
「裏切るのかい。 だけど、それでどうするつもりなんだ」
1人は、ギガイアだった。
そしてもう1人も、俺たちと同じ部屋にいた者だ。
名前は確か、ジャイヤだったな。
「裏切りは構わんが、君にその力がないなら止めさせてもらうぞ」
2人とも、優しい男だった。
彼氏にしたら、つまらないとか言われるタイプだが、男としては、最高の男だ。
「止めるも何も、俺たちは戦えんだろう」
俺のその発言に、ギガイアが攻撃で答える。
何をされたかはわからないが、俺の頬が切れた。
俺はただ、ゆっくりと剣が振られるのを見ているだけしか出来なかったが、その間に何かをされたのだろう。
「なるほど、許可が出たのか」
「あぁ、だけど捕獲が出来たなら、まだ仲間でいられるよ」
「ふーん。 くだらねえなギガイア君よ」
俺は、アイコンタクトでレオンと確認を取る。
俺の相手は、ギガイア。
そして、レオンの相手はジャイヤだ。
俺は、間合いを一気に詰めると、ギガイアの剣を掴み、残る右手でギガイアの首をつかもうとする。
だが、その時にジャイヤが飛び蹴りをこちらに仕掛けてきた。
とっさに手に持つギガイアを盾にして防ごうとするが、ジャイヤは2人の体をすり抜け、振り返りながら裏拳で俺のことを狙う。
それを避けるのはギリギリで、掴んでいたものを話して、間に挟むように避けた。
「いいラインが出来たな」
声の主は、レオンだった。
居合の構えで、こちらを見据え、それを振り抜き黒い斬撃を飛ばす。
前にいる2人は飛びのいてそれを避けた。
俺は、左腕を前に出して、それを受け切りながら直進し、ジャイヤへと攻撃をする。
だが、その身体をやはりすり抜けてしまい、気がつけば立ち位置は元に戻ってしまった。
「なぁ、そういう作戦?」
俺は、不満げな声で問う。
「ふん。 いい連携だろう」
「にゃろうっ」
と、口論していると、向こうでも。
「いい連携だね。 さすがは西の英雄」
「あぁ、そうだな。 しかし、どういうことだ」
なんて会話が聞こえてきた。
そうね。 北では仲間を囮に使うのがいい連携ってことだね。
と、若干拗ねていると、レオンが俺に聞いてきた。
「攻撃、出来ているじゃないか」
「ん? 知りたい?」
「……あぁ」
その答えに対して、俺はついにやけてしまう。
「教えなーい」
「今後の連携に支障をきたすから答えろ」
「……ちっ」
「舌打ちをするなよ」
「スグスィヌと……さっきの大男な。 あいつとの戦いで分かったんだけど、俺が攻撃と認識した行動をとることができないんだよ」
「つまり、どういうことだ?」
「お前、子供と喧嘩するときどうやってる?」
普通に答えてきたら、お前子供と喧嘩するのかよとか言ってやろう。
そう思っていたのに、
「獅子はネズミを相手にも手を抜かん」
「うっわーー」
答えがアレすぎてドン引きしてしまった。
「何が言いたいんだ?」
「え、あぁ。 あの……まぁ、俺が攻撃と認識できないくらい手加減をな……してやってるんだよ」
「……お前、1発殴らせろ」
「いいよ。 1発は1発な」
「ちっ。 つまりお前の攻撃は見せかけだけというわけだな。 使えない」
「そういうな。 バレるまでは有効だろう」
俺は拳を構えて、ポキポキと関節を鳴らした。
「さて、仕掛けるか」
「ちょっと待て。 あいつらのスキル。 特に大きな方はどういうことか教えろ」
「なんかお前、プライドが低くなった?」
「悔しいが、まだ俺は弱いらしいからな」
戦闘中にこんなところで涙目になるなよ……とも思ったが、しかし本気の男の涙には、やはり心打たれてしまう。
俺は、頭をかきながら、答えた。
「お前、魔力探知は?」
「出来ない」
「そう。 ジャイヤのスキルは見ての通り物体透過だな。 攻撃は全て無効化されるだろうし、ガードを貫通して攻撃してくるよ」
「なるほど。 強力だな。 あいつをどう攻略するか……」
「違う。 魔力量は、ギガイアの方が多い。 10倍以上差があるよ。 というか、ジャイヤよりもお前の方が多いよ?」
「それは本当か?」
あーあ、露骨に喜んじゃって。
その目の涙が何処かに行ってしまったようだ。
「で、ギガイアのスキルは、まだわからん。 あたりはついてるけど……お前も考えてみろ。 で、この戦いの穴はジャイヤだ。 あいつにスキルを使わせ続けて、魔力を枯らすぞ」
「うん。 分かったぞ」
そうして、俺たちは再び構え直す。
「仕掛けてくるみたいだよ。 ジャイヤ」
「……足を引っ張ってすまないな」
「それは言わない約束だ。 作戦通りに行こう」
と、向こうでも話し合いをしていたらしいな。
これ以上、重圧をかけても無駄なようだ。
そして、4人の戦いは始まった。




