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S級冒険者でアイドル的ポジの人に付き合ってと言われて

 今日は、ギルドが賑わっている。

 奴隷上がりのギルドメンバーたちが下では酒を飲み、クエストボードを見て、掃除を各々がしていた。

 賑やかなのは嫌いじゃない。

 それに、ギルドの立地的に苦情が来ることもないだろうし。


「あ、起きてきたね。 待ってたよ」


 椅子に上品に座っているのは、メンレイだった。

 S級冒険者のメンレイが、なぜここにきているのか。

 おそらく俺に会いに来てくれたに違いない。

 恋愛ゲームで育てた脳がそう教えてくれる。


「おいおい。 会いに来てくれるのは嬉しいが連絡が事前に欲しかったね」


「おや、それは申し訳ない。 とりあえず、これどうぞ」


 手渡されるのは、賞状と、鑑賞。

 そこには、Aと書かれている。


「これは?」


「あなたがA級冒険者に選ばれたの。 本当は試験やらなんやらが必要なんだよ? でも、私が推薦したんだー」


「そうか。 SじゃなくてAなのか」


「そりゃそうよ。 SとAの違いは実力じゃなくて貢献度だもの」


「じゃあ普通にやってりゃいつか行けるのか」


「あんたならね。 普通はいってBがいいとこ。 Aになれないで引退していく冒険者の多いことや」


「ん? 褒めてるのか」


「そりゃ、単純な実力だけならあなたの方が上だからね」


「へぇ、意外だな」


「なーにーがー?」


「お前はもっとプライドが高いと思ってた」


「認めたくなくても、認めざるを得ないほどの化け物なのよ。 あなたは」


「へぇ……」


 俺は口元を露骨に緩ませて、彼女を見下した。

 それに過剰反応をして、色々言い返してくる。

 普通Sランクって言ったら話すだけで緊張するものだと思っていたが……こいつは話しやすくていいな。


「もーう。 まぁいいわ。 本題入るわよ」


「本題? なんだよ」


「私と付き合いなさい」


「えっ? やっぱり……それはいきなりすぎてどう返事したら」


「なーにーを勘違いしてるのよ。 クエストを一緒に攻略してほしいだけよ」


「照れなくてもいいぜ?」


「もう、連れていくのやめますよ」


「あぁーー、悪い悪い。 で、どんなクエストなんだ?」


「それは、移動しながら話そっか」


 彼女が立ち上がり、外を目指す。

 その時、俺の足元に何かの気配を感じた。

 振り返ると、そこには獣人の女の子がいた。


「ん、どうした?」


「あの、私……」


「そういや、お前名前は?」


「え? 私は、ストレートって団長につけてもらった」


「ネーミングセンス……ヘイローンより酷くないか。 気に入ってんの?」


「はい!!」


「そ……で、ストちゃん。 お前も来る?」


「はいっ!! 私も連れて行ってください」


 俺は、ストちゃんの首根っこをを掴むと持ち上げて、メンレイに聞いた。


「おーい。 メンレイ、こいつも連れてっていいか?」


「えぇ……一応Sランククエストなんだけど?」


「まぁ、俺が守るから。 ほら、こいつも強いかもよ」


「まぁ、いいけどね。 それより、早くいくわよ」


 そうして、彼女についていくと、その先には馬車があった。

 4人がけの座るところの奥をメンレイに譲ったあと、ゆっくりと俺たちも乗り込む。


「うわぁ。 馬車が初めてだ……ストちゃんは?」


「私も、こんな高級なのは初めてです」


「そっか。 初対面は馬車だっけ?」


「えぇ。 そうでしたね」


「おほん。 説明を始めてもいいかしら?」


「すまんすまん。 で、なんだっけ」


「今回のクエストは、闇ギルドの一員、7大罪の幹部を倒しに行きます」


「ふーん」


「……ふーんて。 あなたわかってるの?」


「いや、知らんし」


「闇ギルドは分かるわよね?」


「あれだろ? なんか黒そう」


「シリュウ様。 闇ギルドっていうのは、非正規のギルドのことですよ」


 ストちゃんが教えてくれる。


「へぇ、非正規ね。 それの何が悪いの?」


「簡単に言えば、国が認めることのできないような悪いクエストがたくさん。 しかも規模が正規のギルドに匹敵する大きさなの」


「で、7大罪ってのは?」


「闇ギルドトップ4の1つ。 正規でいうS級冒険者並みの実力者ね」


「ふぅん。 ちょっと馬車止めてくれ」


「え?」


「早く」


「あ、あぁ。 分かったわよ」


 俺たちは、馬車を降りて後ろから追ってくる者を待ち構えた。


「これは……つけられてたの?」


「国を出た時点でな」


「よく気がついていたわね」


「ん? こいつら気配ダラダラだしすぐ分かるだろ」


「あなたと一緒にしないでよ。 私は人間よ」


「あそ。 じゃあパパッとやりますか」


 追跡者は2人、奴らは俺に向かって炎を繰り出してくる。

 2つの炎が重なり、大きさを増す。


「っ!? 同属性の魔法を合わせて威力を……シリュウ!! それを食らったらまずいわよ」


 俺は、その言葉が耳に入っていなかった。

 目の前の敵に集中していたからだ。

 俺は炎を左手で払いのけ、そのまま接近する。

 右拳で1人を、残した荷重を使い、もう1人は蹴りで倒した。


「一撃か? お前らちゃんと飯食ってるのか?」


「魔法を使わずに……あなたねぇ」


「さすがです。 シリュウ様っ!!」


「使うまでもないだろう」


「あの炎を払えるのはこの世にあなただけよっ!!」


「いや、きっとお前にもできるって」


 そんな会話をしていると、追跡者の1人が意識を取り戻す。


「くっ、すまない。 出来心だったんだ」


「なんだよ。 出来心って、まぁいい。 もうしない?」


「あぁ2度とお前たちを襲わない」


「そーか。 なら許してやる」


 俺は、倒れる2人に背を向けて、メンレイ達の元へ少し歩いた。

 そして、タイミングを計り、勢いよく振り返る。


「と、見せかけて後ろからだなっ!?」


「え? ひっひぃいい」


 男達は、立ち上がることができず横たわっている。


「……本当に、立ち上がれないんだな」


「シリュウ、この人達は国で身柄を預かるわ。 いいわね?」


「あぁ、構わねえけど。 おそらく国がやべえぜ? 戻って警備を強化してこい」


「なんでそう言えるの?」


「この国のS級は?」


「私だけ」


「クエストの情報はどこから来た?」


「匿名よ。 だけど、情報を照らし合わせると、信憑性は高いわ」


「露骨に罠だな。 ほら、行ってこい。 国を守ってこい」


 おれはしっしと彼女を手で追い払う。


「で、あなたはどうするの?」


「ん? いやね。 幹部様がこっちにいるってのは分かったから挨拶を」


「……1人でやれるつもり?」


「なんとかなるでしょ」


「気をつけてね。 ほら、スト……ちゃん? 行くわよ」


「え、はい。 シリュウ様、お気をつけて」


「分かった分かった。 じゃあ、やってきますか」


 そして俺は動き出す馬車とは逆の方向に向かっていく。

 そこにいる、大きな魔力の持ち主へ向かって。

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