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ガブリエルの根城へ

 俺たちは、車に揺られてある場所へと向かっている。

 目的は、ガブリエル討伐のため。

 レジスタンスの目的との一致、彼らは俺を止めようとせず、ガブリエルの根城まで車を出してくれるという。

 だが、護衛の兵をつけるでもなく、俺とエドの2人と運転手が1人いるのみだった。

 そして、その車も止まる。


「ここからは、あんた達だけで頼むよ」


「ここからっていうと……あの城までかい?」


 そこには、大きな城が見える。

 そこまでは、まだ少しばかり道が残っていて、徒歩に切り替えるにはやや遠かった。


「あぁ、頼むよ。 祈っておくからさ」


 そう言いながら運転手は、両手の指を絡めて、胸の前で組んだ。

 おそらく、それが祈りの構えなのだろう。

 それは、この国の奴隷になっていた時に、強要されていたものと同じ構えだった。


「まぁいいけど。 エド、行くぞ」


 そう言って、扉をあけて2人が降りると、車はUターンをして帰っていった。

 どのみち、足手まといはいらないから好都合ではあった。


「なぁ、シリュウ」


「なんだよ」


 歩きながら、エドが声をかけてきた。


「西の英雄って本当なのか?」


「あぁ。 周りが勝手にいってることだがな。 それが?」


「いや、まさかこんな奴だとは……」


「悪かったな」


 皮肉を込めて謝りながら、俺は、エドの首根っこを掴んで後ろに引き寄せた。

 エドが踏み込んだ地面は崩れて大きな穴となる。

 そこには、剣山が待っていた。

 そして、それを合図に円盤ノコギリがフリスピーのようにいくつか飛んでくる。

 それを丁寧に一つ一つ、空中で掴んで横へ捨てる。

 それ以上に何かが起きることは、現時点ではない。

 罠は終わったようだ。


「こ、これは」


「罠みたいだな。 しかも、本気で殺すつもりの」


「……西の英雄が一緒でよかった」


「バカにしてる?」


 そう言って、俺たちは、あらかじめレジスタンスに伝えられたルートを通って城へと向かっていくが、そこには数々の罠が待っていた。

 古典的な落とし穴に、ワイヤートラップ、途中、空から血が落ちてきて、そこに獣が集まるのは面白い罠と感じた。


「さて、そろそろ妙に感じてもいい頃だな」


「なにが? この厳重な罠のこと?」


「エド、君は本当にバカだなあ」


「え、怒るよ?」


「……すまん。 つい本当のことを言ってしまった」


 俺は顔面を叩かれる。

 それまで数々の罠を看破しノーダメージでいた俺だが、つい鼻血が出てしまった。

 スキルですぐに止血を……スキルが使えない。

 まぁ鼻血くらいなら、キーゼルバッハ部位、鼻の筋の固いところをつまんでやればすぐ止まるが。


「なぁ、スキルが使えないんだけど」


「え? どいうこと」


「そのまんまの意味だよ。 これじゃあまずいな」


「えっと、シリュウはスキルが使えないとどれくらい弱くなるの?」


「スキルが使えるとな、最高峰の悪魔を集合させた一章のボスを余裕で倒せるくらい強い」


「それで?」


「使えないとな。 一般人よりちょっと強い」


「ダメじゃん」


 なによりもまずいのは、これでは俺が死んでしまうことだ。

 スキルによる回復力で不完全ながらも不死性を持っていた俺は、今はただの人となっている。


「城に近いからか……仕方ない。 こっちから行こう」


「え? でも、正規ルートはこっちって」


「それなんだが、やけに罠が多すぎるんだ」


「罠は多ければ多いほどいいんじゃないのか?」


「いや、これだけ高密度に多くの罠を貼ると、罠同士が喧嘩して無効化されやすいから普通は出来ないんだよ」


「どいうこと?」


「例えば、あの獣の罠。 あの獣が、そこらをうろちょろしたら?」


「あぁ……」


「さて、こちらへ行こうか」


 俺たちは、ルートを迂回して城へと向かっていく。

 そしたら、驚くほど罠が無くなった。

 俺の考えは間違いでないことが証明されそうだ。

 そして、城に近づくと、そこで2人の女性が待っている。

 俺たちはそれを草陰でコソコソと様子を伺っていた。


「どうする?」


「いや、今無能なんでしょ。 シリュウは」


「無能て……」


 どれだけ待っても、そいつらは動こうとしない。

 おそらく、来たる侵入者を待っているのだろう。


「仕方ない。 エド、ここで待っていろ」


 痺れを切らした俺は、草むらから顔を出して、その2人のところに向かっていった。

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