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脱獄。 脱獄。 脱獄

 檻は固く、冷たく、狭い。

 エドと同じ場所に入れられて、また手枷をつけられる。

 なにより、肩が触れるのが、意外にストレスだった。

 大人が故に文句は言わないが。


「もう少し詰めてくれよ」


「いや、あんたの肩幅が広いんだろ」


 なんて文句を言い合ったら先ほど怒られたのが効いている。

 そろそろエドの視線が痛いのでプランを進めて行くことにしようか。


「準備はいいか?」


「準備って?」


「あの可愛い子を視姦するのは満足かって」


「そんなことしてるのお前だけだろ……いや、あの子さっき怒ってた怖い人だろ」


「いや、遠くで見る分にはいいだろ」


「そうだけど……で、準備って?」


「そろそろ出るぞ」


 俺は、腕を捻って手枷を壊す。

 手をグーにして親指を立て、壁を指してニヤリと笑う。

 エドはそれにピンと来ていない。


「何を?」


「出てくんだよ」


「どうやって?」


「出来るだけ派手に」


「はぁ?」


 エドが言い終えるや前に、俺は、壁を蹴破った。

 大きな音がなり、それに反応した女兵士たちが集まる。

 そいつらは檻を開けようとしていて、隣ではエドが狼狽えている。


「おいおい。 早く行こうぜ」


 俺の片手はエドを掴んで持ち上げる。

 兵士が檻を開けると同時に俺は壁の穴に脚をかけ、兵士がこちらへ到達すると同時に穴から飛んでいく。

 壁を登って屋根へ登ると、兵士たちは、追いかけようとはしていない。

 代わりに、何か連絡を取っているように見えた。


「おっ、おい。 どこへ向かうんだよ」


 エドの声は震えている。

 俺の腕はまだ、エドを吊るしたまま、屋根の上を歩いて行く。

 その時、俺と誰かの視線があった。

 俺はそれで確信を得た。


「とりあえず、女のいないところだな」


「はぁ? そんなのこの街のどこに……」


「あっちだってさ。 行こう」


「は? それは一体」


 俺が歩き出すと、エドは歯を食いしばって黙り出す。

 屋根の上は、足場が悪いというよりは、滑っておちそうになるという印象だが、コツさえつかめば簡単にあるける。

 そして、屋根から飛び降りて、たどり着いたのは、教会だった。

 窓から様子を伺うと、修道女が見える。


「ここだとダメか」


「おい。 いい加減降ろせよ」


「え? うーん……なんでお前楽してるの」


 俺は、手を離してエドがずさりと落ちる。

 怒った顔を見せながら、エドが砂を払い立つ。


「お前、自由すぎるだろ」


「そりゃ、そうだな。 なぁ、あいつってさ」


「あの修道女か?」


「あれって、男じゃないよな?」


「そりゃ、そうでしょ」


「……だとすると、こっちかな」


 俺は、地面に手を触れる。

 拳骨でこんこんと地を叩き、耳をすませる。


「何をしてるんだよ」


「いやね。 お前がおちた時の音がやけに軽くて……ここらへんか」


 俺は、砂を払って、手を引っ掛ける場所を見つける。

 そこを開けて、地下への梯子をみつけた。

 その梯子の強度は強く、ドアの古さに対して、梯子はやけに新しい。


「行くぞ」


 俺は、返答を聞く前に、その穴へと飛び降りた。

 光が遮られたことから、エドも付いてきているのだろう。

 そこには、割と広めの部屋が広がっていた。

 そして、沢山の男たちが集まってくる。


「……ええと、この人たちは?」


 エドが降りてきたようで、それを俺に、知るはずもないのに聞いてきた。


「レジスタンス……だろ?」


「あぁ、この国の人間じゃないな? だが、男であるということは、まぁ味方じゃろ」


 手を差し出されたので、反射で俺も手を差し出し、握手をした。

 その手は、やけに力強く感じた。


「さて、ガブリエルのことについて教えろよ」


「その前に、お前さんの素性じゃろ。 シリュウ君」


「……なんだ。 知ってたのか」


「西の英雄が、この国にやってきた。 ワシらの間じゃ有名じゃよ」


「なら、わかるだろ? 闇ギルドを壊滅させるためにやってきたんだよ」


 周囲では、ざわめきが起きていた。


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