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7大罪 イラとの最後の戦い その2

「まるで獣だな」


 俺は余裕そうな表情を作るが、それとは裏腹に桁違いの危険を予感していた。


 血液が、全身を一気に駆け巡る。

 心臓が高鳴る。

 心が、これは嫌だ、早く逃げたいと叫んでいる。


 だが、現実が許してくれない。


 俺が逃げたら、世界はどうなる。

 俺の仲間は、俺の復讐は……


 それを考えると逃げるわけにはいかない。

 俺は心を一層燃やして、化け物に立ち向かう。



 心拍数の上昇に伴って、世界は静止し始める。

 この時に物を投げるのは無意味だ。


 空中で止まるから。


 だが、俺は周りの岩盤を空中にあげる。



 イラが高速でこちらへ向かってくるが、俺はその動きにまだついていけている。



 ーーかろうじてだが。



 なんとか、イラの直線的な動きを見切り避け続け岩を打ち上げる作業を続ける。


 打ち上げられた岩はゆっくりと落下していく。


 まだ、時は完全には止まっていないか。



 あるいは、その程度の敵だということだろうが、イラは俺にとって脅威であることに違いない。


 イラは、右手を振り上げ、地面に下ろす。


 一瞬、地面が崩れるが、その形を変えない。


 左、右、交互に襲ってくる大きな腕は俺を絶命させるのには十分だろう。



 当たればひとたまりもないというのは、すごいストレスだ。

 冷や汗をかく。


 それが落ちきる暇もなく、奴の攻撃は続く。



 あぁ、大変だ。



「どうした。 避けてばかりでは……」


 俺は、指を立てて、上を指した。



 一瞬、イラが釣られて上に瞳をあげた。


 その瞬間に、俺の心拍を最高潮に引き上げる。



 完全に時が静止する。

 その間に俺は、空中に設置した岩を蹴ってイラの背に回り込む。


 そして時は動き出した。

 静止していられる時間はわずかなようだ。

 人が止めた時の間を動くのとは勝手が違う。


 イラの頭が左右に揺れる。

 俺を探しているように。



 その時にゆっくりと、俺は左手でイラの背中に触れた。


 毛がびっしりと生えており、硬い皮膚であった。




 その左手から、無数の血液の腕が現れ、全てがイラに触れる。


 イラが気がつきこちらに振り向くが、手遅れであった。



 俺の赤い腕は、イラの身体の中へと侵入し、魔力を奪っていく。



 イラの身体が大きく揺れて、俺の身体は離れてしまうが、その時には、ほとんど終わっていた。




「貴様……なにを」


 イラの身体が人間の形へと戻っていく。

 人間だった頃と比べて、だいぶ老けているが。



「お前の負けだ」



 イラの身体が崩壊を始めた。

 なおもイラは、こちらへ向かってくる。


 俺の身体は、短時間による過剰な運動でオーバーヒートしていて、動きたくても動かない。


 イラは、右手に黒い魔力を灯す。


 俺たちの視線が合ったまま動かない。

 お互いの口元が緩む。


 イラが、俺の顔に手を伸ばす。


 それが俺に触れる瞬間、止まった。



「やらないのかい?」


「俺の中の怒りが……お前のせいだろ」


「さあてな。 まぁ、これだけ発散したんだ。 満足だろ?」


 周囲に岩の雨が降る。

 地面にあたって崩れて消えた。

 気がつけば、周りの環境が大きく変わっていた。


「……あぁ、満足だ」


 そう言って、イラの身体は崩れていく。

 完全に消えた頃には、岩の雨は止んでいた。


 イラのいた場所に、小さな何かがいた。

 溶岩のような何かだ。

 ドロドロと崩れていて、ある場所は黒く、ある場所は赤く発光している。

 俺は、それを左手で受け取ると、身体に入っていく。


 その瞬間、7つの光がこの世界に散らばっていった。

 俺の身体は、力が入らず地に倒れる。


「はぁー、疲れた。 みんな大丈夫かな」


 俺は、頭元に近づく人に気がつくが、動くことができない。

 敵ではなさそうだと思う。

 それの証明に、近づかれた時、一言こう話しかけてきた。


「おめでとう。 死体を放置しろと言ったはずだが」


 アセディアの声だけが聞こえてきた。


「あぁ、あれか。 無意識だった」


 俺がそう答えると、周りが暗くなっていった。


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