ギルメン募集 集まったのは奴隷でした
ギルドの会計事情は良くなった。
つまりギルドメンバーも増えてパーティが組めるようになったという事だろう。
俺は、目が覚めた後、ウキウキで本部へと降りていく。
宿舎が二階になっているため、階段を使って降りた。
さぁ、そこには何人のメンバーがいるのだろうか!!
「おい、団長。 ギルドメンバーは?」
「昨日の今日で集まるわけないでしょ!!」
「なら、近々集まる予定はあるってことか」
「いや、それは……」
「それは?」
「化け物がいるクランだから敷居が高いって……」
「はぁっ、仕方ない。 じゃあクエストは……」
「あなたほどの冒険者にさせられるクエストがないって……」
「ダメじゃねえか。 運営どうなってるんだよ」
「仕方ないじゃない。 あんたが強すぎるのがいけないのよっ!!」
「じゃあなにか? 今日からしばらく仕事なしか?」
「そういうことに……なるかしらね」
「はぁ……分かった。 勧誘してくるよ」
「ううっ……よろしくお願いします」
俺は、久しぶりに街に出てフリーの冒険者を探す。
街ではすれ違う人たちに挨拶をされるため、爽やかに返す。
が、俺が通り過ぎた後、化け物……や、やばい奴……ってやたら聞こえるのは気のせいではないだろう。
なんで俺はやばい奴認定されているんだか。
そんなこんなで探索をしていると、珍しいものを見つける。
馬車である。
もちろんこの世界では珍しくもなんともないんだろうが、俺は人気のない山育ちだし、転生前は自動車の走る世界だ。
動く馬車に出会うのは妙に感動を覚えた。
ただし、後ろの檻の中身に気がつくまではだが。
「これは、奴隷か?」
「おぉ、これはお目が高い。 この奴隷は獣人族の若い女の奴隷でして愛玩用に最適ですぞ」
奴隷を運ぶ馬車を止め、主人が俺にそう声をかけてきた。
奴隷は、悲しそうな目でこちらを見つめている。
「奴隷が……認められているのか? この国では」
「いや、お言葉ですがお坊ちゃん。 今では奴隷を認めていない国の方が少数ですよ」
俺は、不思議な感情だった。
奴隷をどうしたらいいかわからない。
こいつをボコって解放してやりたいが、それはあくまで自己満足だろう。
かといってこの子の購入をするわけにもいくまい。
奴隷になっているのはこの子だけではなく、もっとたくさんの人たちがいるだろうし、これからもこいつは奴隷を狩り続けるのだろうから。
いや、1つ良い案を思いついた。
やはり俺は天才だ。
「なぁ主人、俺と契約しないか?」
「契約……でございますか?」
「あぁ、俺がめっちゃ金持ちなのは知ってるか?」
「え、えぇ。 それはもう」
「お前の売っている奴隷を全部買おう。 そして、ついでにおまけで金を持っとくれてやる。 だから、その仕事から足を洗ってくれ」
「は? それは、どういう意味でございますか?」
「お前は、儲かるからその仕事をしてるんだろう?」
「それは、そうでございます」
「だから、金をくれてやる。 俺は、奴隷とか好きじゃないんだ。 やめて欲しいんだ」
「なるほど……しかし、良い案とは言えませんな」
「どういう意味だ?」
「私以外にも、奴隷商人はいます。 この国だけでもね。 それを根絶やしにするのは不可能でしょう」
「いいよ。 できる範囲でやっていくから。 どうせ俺のエゴでやりたいだけだし」
「いいんですか? だって、全ての奴隷を救いたいんじゃ」
「誰がそこまでいったよ。 俺は、俺の目に映るかわいそうな奴を救いたいだけだよ。 ただの自己満足さ」
「……感服いたしました。 私を、お坊ちゃんの部下にしてください。 奴隷解放の手伝いを致しましょう」
「へぇ!! じゃあタダにしてくれるのか?」
「まさか、そちらの方が儲かるでしょう? 契約は、報酬制でお願いしますね」
「1人につき100ダーツ。 奴隷を渡すことで報酬を支払うと」
「もちろん、新たに奴隷を狩ることはしません。 どうでしょうか」
「やだよ。 マッチポンプするじゃんお前ら」
「どういう意味でございましょう」
「お前以外の奴隷商人が、奴隷を確保してお前が俺に売り付ける。 これで確実に儲けようって考えてるんだろ?」
「ギクッ」
「それ口に出していう奴初めて見たわ」
「分かりました。 そういったことは行わないと契約者に記載しましょう。 ならどうですか?」
「どうですかって……とりあえずお前が信用できないからその話はなしだよ。 お前の売っている奴隷を売ってくれ」
「分かり……ましたよ。 私めが売っているのは今はこいつだけです」
まてよ。
今、うちのギルドが直面してる問題って。
「なぁ、本当に悪いことしないって約束できるか?」
「先ほどの契約の話でございますか?」
「あぁ、その通りだ」
「私たちにも、プライドというものがあります。 契約でそうなったのならば、必ず守ります」
「なら、頼んだ」
「え? 分かりました!! やってみせましょう」
そうして、俺は15人の奴隷を今回購入することになった。
ギルド本部まで、全員を案内し、団長に会計を頼む。
「というわけだ。 ギルドメンバーを集めた。 金を払ってやってくれ」
「ちょっと待ちなさい。 これ、あの報酬の半分に迫るじゃないの。 ここのリフォームの予定を立てようと思ってたのにどうするのよ」
「延期するしかないな。 その代わり、みんなには頑張ってもらうから」
「うぅ……奴隷上がりが多いからスレイブギルドとか言われそう」
「なんだ。 嫌なのか?」
「嫌じゃないけど……もう、しょうがないわね。 みんな、その分働くのよ」
奴隷たちから歓喜の言葉が聞こえた。
本当に嬉しそうでなによりだった。
「ありがとうございます。 シリュウ様」
「いや、様はやめろ。 今から同じギルドメンバーなんだ。 呼び捨てでいいよ」
獣人の女の子が俺に感謝の言葉を言ってくるが、妙にくすぐったい。
俺は、照れを隠しながら答えた。
「そう、ですか。 では、シリュウさん。 よろしくお願いします」
そうして、ギルドの規模を大きくすることには成功した。
ただし、奴隷契約がこれからどんな災いをもたらすのから不安要素も出来てしまったが。