ドリームランド
「用意はできているのか?」
かつて7大罪と呼ばれたものたちが集まった。
最後の7大罪、憤怒のイラを倒すために。
「あぁ、ちなみにお前は手伝ってくれたりしないのか?」
「なぜそんな面倒を……そうだ、シリュウ。 貴様に伝えたいことがあるんだ」
その言葉とともに、仲間の姿が消えた。
周囲が闇に包まれた、
「おいっ……」
「言いたいことはわかるが、少し黙っていろ」
「お前、ここはどこだ。 みんなは」
「あいつらは先に送っておいた。 そんなことよりお前、左手を見せてみろ」
彼は俺の手を強引にとってみせた。
彼の肌はひどく乾燥しており、俺に触れた場所は硬くなっている。
「これがどうしたって言うんだ」
その手には、黒い火傷痕が残っている。
痛みはもう消失しているが、痕はなかなか消えない。
痛みがないため気にすることはないと思っていたが。
「貴様、何かの呪いに触れたか」
「え? あぁ、魔剣アロンダイトのレプリカを掴んだ」
「……そうか。 懐かしいな」
「アロンダイトがか?」
「いや、お前の身体に起こっていることがだ」
「は? 何が起きているって?」
彼の手が俺の手から離れた。
俺の手からだらりと落ち、その時手汗がひどい事に気がついた。
「いまからお前が向かう先について説明するぞ。 もし、お前が俺のいう事を聞くならば、協力してやってもいい」
「言う事を……聞く?」
「あぁ、お前が今から行く先は、この世界のかつてであり、これからである」
「意味不明なサイコ野郎かよ」
「まぁ聞け。 その世界は今はまだない。 所詮は夢だ。 だから、何をしても構わない。 だが、お前とイラは違う」
アセディアの手から炎が出る。
それがゆらゆらと俺はとやってきて触れた。
それは熱量を持っていないのか、全く熱くないが、そこに何かがあることだけがわかった。
「熱くはないか」
「え、あぁ。 俺はスキルで熱は効かないんだ」
「ふん。 今のはそんな生温いものではないわ。 なるほど、かなり傾いているわ」
「さっきから意味がわからないんだけど」
「お前はイラを倒してこい。 そして亡骸はそこへ捨てておけ」
「……元よりそのつもりだ」
「なら、行くか」
アセディアが、俺の身体に触れると闇が消える。
文明が荒廃したのか、自然がそのままになった場所へたどり着く。
そこにはみんなが待っていた。
「ふむ。 来たか遅かったな」
「もう、みんな待ってたんですよ」
みんなは俺を迎え入れてくれた。
暗く、太陽が黒い円に遮られている。
遠くの空に、龍が飛ぶのが見えた。
近くの川には、魚とは言えない生物が泳いでいる。
「悪い。 イラはどこにいるかな?」
「それは、なんとなくわかります。 ただ……」
「フェロー。 なんだ心配か?」
「あなたは感じないんですね。 ちょうど僕たちと同じ数の化け物の気配を感じるんですよ。 強烈にそれに呼ばれてます」
「えええ!! ちょっとちょっとー」
インヴィディアが叫んだ。
キンキン声であたりに響いた。
「どうした」
「私の下着が消えたんだけど……」
「はぁ。 なんだそんなことで」
「悪魔道具なのよ」
「はぁ?」
インヴィディアがさらに叫ぶ。
手をつけることが難しい。
「……どうしましょう。 全員でイラを叩きますか?」
俺は顎に手を当てて、目を瞑って考えた。
「呼ばれてるんだろう。 なら、行ってこい。 おそらく、何かあるんだろう」
「いいのか? 罠かもしれないぞ」
「お前たちなら、罠から逃げられるだろう。 それに、足手まといはいらないしな」
「シリュウ、はっきり言ってくれるね。 まぁそうなんだけどさ」
ルクスが少し怒ったように言った。
周りも少し反応しているようだ。
「嫌か?」
「嫌じゃないけど……」
「なら、それで行こう。 奴はどこにいる?」
「分かりました。 あちらです」
俺は、フェローの指差す方向を見た。
そこには、他よりも深く暗くなっているところが見える。
「……行ってくる。 お前ら死ぬなよ」
「そうですね。 分かりました」
彼女たちから、1つずつ励ましの言葉をもらい、俺は歩き出す。
整地されていないそこは、少し歩きづらかった。
「かつてでありこれからか」
どういう意味かはわからない。
何か深い意味があるのだろうか。
突如、咆哮が聞こえる。
それは空からやってきて、空気を震わせ降り立った。
鱗を纏ったその姿、大きく翼を広げていて、炎を吐き出し襲いかかる。
「久しぶりに、夢にやってくる人を見たな」
龍は、俺へ話しかけてくる。
「あんた……いや、夢ってなんだ」
「夢とは幻。 この先に行こうというのか?」
「あぁ、その先にあるやつに用があるのでな」
「簡単には通せないな。 貴様の闇は弱すぎる」
「……なあ。 あんた、黒い龍を知らないか?」
「いきなりなんだ」
「いや、知らないならいい」
「……知っている。 名はまだ与えられていない子龍であるが」
子ども。
ヘイローンは、こいつよりも大きいから、違うだろうな。
「そうか。 まぁいいだろう。 なぁ、そこを通してくれよ」
俺の左手に痛みがよみがえる。
俺の身体に熱を与える。
「貴様……面白い。 我に勝てれば通してやろう」
「お前、死ぬぜ?」
「この世界に死はまだない。 不完全な世界なのでな」
「あぁ、そうかい。 なら、遠慮せずにぶっ殺す」
俺はその手から黒い炎を生み出して、大きな龍に立ち向かった。




