蘇生魔法
旅行から戻ると、やはり我が家が一番などと聞くことがある。
UKの騎士王と約束を交わして、俺はそこを後にした。
温泉旅館という名目であったが、結局あまり温泉を楽しむことはできなかった。
「あぁ、とりあえず今後の方針についてか」
「そんなの決まってますよ。 イラを捕まえるんです」
かつて強欲と呼ばれたものが言う。
その意見は、傲慢だった彼女によって否定された。
「それが出来ないんだ。 あいつは自由に移動が可能だから」
「そもそも、その前提はあっているのか?」
俺が聞くと、バシンが大きな声で言い返す。
「そうとしか言いようがありません。 何を言いだすんですか?」
睨んでくるため少し怖い。
正直この子の扱いが難しい。
「いや、他にも想定できることはあるだろう」
「それは面白い意見ですね。 たしかに、アセディアのスキルは不明なことが多かったです」
「フェロー、それはどういう意味だ?」
「彼は、不可解なことが多かったんですよ。 具体的には、この世のどこにも存在していない時間があったんです」
「この世のどこにもって死んでるってことじゃない。 ありえないわ」
団長が笑っていうが、他の誰もが笑わない。
「詳しく頼む」
「わかりました。 まぁ簡単に捜索魔法を使って存在が確認できないというだけですが」
「いや、充分だ。 おそらくそこらへんにヒントがあるだろう」
「あの……良いですか?」
「どうしたインヴィディア?」
「アセディアさんを蘇生することってできないかな?」
「できるのか?」
「おそらく……」
「分かった。 頼んだ」
「別に、それくらい試すだけなら」
俺の視線に対して、彼女は目をそらす。
やましいことがあるように。
「絶対にさせてならないのが嫉妬の悪魔道具をくれてやることだが、そもそもそれが何かを教えてくれよ」
「……やだ」
インヴィディアに拒否された。
7大罪の奴らは、扱いが難しい。
「分かった。 蘇生の方また詳細はクエストボードに頼む」
「うん。 分かったわ」
団長がそれを了承してくれる。
俺に出来るのは待つことのみだ。
全員が席を立ちこの部屋を後にする。
おそらく会議は終わったようだ。
適当に会議に参加していると終わったことに気がつかないことは多い。
「それにしても蘇生ねえ。 爆散したあいつをどうするのか」
俺はクエストボードを確認する。
そこにはすでにクエストとして張り出されていた。
「所謂お使いクエストってやつだな。 俺用のは無さそうか」
決戦を控えるという割にはやることがない。
こんなものなのだろうかと首をかしげる。
「とりあえず、暇つぶしになんかやるか」
俺はクエストを手にしてこなしていった。
そして日々が立っていく。
決戦の日が近づいていく。
蘇生の準備が整ったようで、俺は一室に呼び出された。
「とりあえずやってみるわね」
「あぁ、宜しく頼む」
魔法陣が描かれて、そこに遺灰が投げ込まれた。
そこから現れるは一人の男。
アセディアの復活が成功した。
「なんだ。 蘇生したのか、ずっと眠っていられたのに」
「魂だけを……じゃなくて本当に生き返ったな」
「我を蘇らせるとは無礼じゃないか?」
「うるせえ。 イラの事について教えろよ。 お前の力についてもだ」
俺は力で黙らせる。
アセディアに全てを話させる。
彼は口を開くとあっさり話した。
「我の能力か? それは簡単だ。 俺だけの異空間を作るんだ……イラは7大罪の力を手に入れたようだが、おそらく我の能力とリンクしているだろう」
「つまり、どういう意味だ?」
「イラを追い詰めることができる」
「なるほど」
「まぁ、やるのだろう? 準備ができたら教えてくれ。 それまで寝る」
アセディアは横になった。
その目は閉じてイビキをかきだしていることから、本当に眠ったのだろう。
「……とりあえず、みんなを集めてくれ」
俺たちは最終決戦に駒を進めるため、準備を開始した。




