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大事なのは覚悟だった

 俺はパタリとドアを開け、城の中へと入り込む。

 中の守りは厳重で、軽い装備の兵たちに瞬く間に囲まれた。

 室内なのに長い獲物を構える兵士たちは、訓練された動きで俺を取り囲む。


「なあ、ランスロットがどこいるか知らない?」


 俺への返答は怒号だった。

 槍の切っ尖をこちらに向けて、魔法を俺に放ってくる。

 俺に避けられた魔法は壁へとあたり消えていく。

 その姿を見ていたら、後ろからドンと押される感じがした。

 背中の熱さで、切られたことに気がつく。


「しょうがねえ。 自分で探すか」


 そう言って、傷を癒し体制を整える。

 その背中を見た兵士からは小さな驚きの言葉が聞こえた。

 向けられた刃を退け、魔法をかわす。

 青い光は無機物には影響を与えないようで、城の崩壊につながることはなかった。

 一人一人と気絶させ無力化するが、騒ぎは大きくなっていき、倒した数より兵は増える。


「捕まえろ。 殺しても構わんどうせ死刑囚だ」


「さんざんな言われようだぜ」


 このままではキリがない。

 俺は適当に突破口を開き、その場から逃げる。

 追いかけてくる兵士たちは、一方向に固まった。

 俺は壁の大きな絵画を手に持ち、それを勢いつけて投げ出した。

 綺麗に回転しながら高級フリスピーが兵士たちを薙ぎ払う。

 その隙に俺は一室に逃げ込んだ。


「……君は?」


 その一室には、金髪の高貴そうな人がいる。

 当然こちらを警戒するが、俺はドアを閉め両手を見せてやる。


「怪しいものだが敵じゃない。 シリュウというんだ。 君の名前は?」


「僕は、アルトリア。 この国の王さ」


「アルトリア……アーサー王か」


「へぇ、よく知ってるね」


 彼女の表情には笑みが浮かぶ。

 外の様子に気がついていないのか。

 そんなことはなく、剣を構えられる。


「敵じゃないというに」


「信用できると思う? 残念だけど、無理だよ」


「そうか……後ろがうるさいしなあ」


 俺は、どんどんうるさいドアを破ると、向こうにいた兵士が飛んでいく。

 アーサー王に近づいて、俺はその身体を抱っこした。

 お姫様抱っこの体制で、窓から大きく飛んでいく。


「お、おい。 離してくれないか」


「やだね。 とりあえず2人で話せるところへ行くぞ」


 俺は、屋根を走っていき、大きく城から逃げていく。

 兵士たちは近づけず、俺は逃げることに成功だ。


「ここでいいのかい?」


 剣先を向けて彼女はいう。

 その表情はまっすぐだ。


「意外に驚かないんだな」


「不思議なことには慣れている」


 俺は彼女に目もくれず、そこにある光景に見惚れてしまう。

 そこは木と花が咲き誇る。

 その木はなぜか、人のような気配がした。


「そうかい。 で、剣を下ろしてくれ。 君とは戦えない」


「……本当に敵じゃないのか? ならなぜ僕を誘拐した」


 その剣の震えを見逃さず、俺はそっと剣に触れた。


「これがエクスカリバーか? 思っていたより陳腐な出来だな」


「これはただのレプリカだ。 それでも国を落とす力はあるよ」


 その証拠と言わんばかりに、光を灯したその剣は、俺に向かって光を伸ばす。

 腕が飛んでいく。

 せっかく綺麗な花畑が、赤い色で染められていく。

 俺は止血を施して、腕をぐにっと取り付けた。


「たしかにすごい力があるな。 だが、俺を殺すには少し弱いな」


 その言葉に覚悟して、彼女は剣を下ろしてみせた。


「ふう、君には勝てそうもない。 敵ではないという言葉を信じてみるか」


「あぁ、それなら話が早い。 お前の仲間のランスロット君が裏切りを企てているよ」


「ランスロットが? それは信じがたいな。 彼はよくやってくれてる」


「そう。 信じるかどうかはお前次第だが……じゃあ伝えたからな? 俺は帰るぞ」


「なに? 待て」


「どうした? エスコートはしないぜ。 こう見えてもこの国で俺はお尋ね者だ」


「……他に用はないのか?」


「別に、伝えたかっただけだから。 後は、あれだな。 ランスロットをぶちのめすぜ」


「実は、そういう話は聞いたことがある。 にわかには信じがたいがな」


「なら、あれをどう表す?」


 周囲に人の気配が立ち込める。

 殺気を伴うその気配は、汚い男の集まりで、その手に獲物をもっている。

 一人一人と現れて、その中に懐かしいものがいた。


「お前もいるのかレオン君」


「お前はなにがしたいんだ。 俺をバカにしているのか?」


「レオン君よ。 バカにバカというのはバカにするとは言わないんだぜ。 だってお前がバカだから」


「俺を見下しやがって。 お前たち、あいつもやっちまえ」


 レオンが指揮を取っている。

 男たちが俺たちを襲う。

 俺は適当に座りこみ、アーサー王に全てを託す。


「君も戦うんじゃないのか?」


「あんた1人で終わるだろう。 面倒ごとは嫌いじゃないが、無駄なことは嫌いなんだ」


「ふむ。 やれやれ、仕方がない。 手加減は得意じゃないのだけど」


 剣が光って波紋を生んだ。

 それに触れた者たちは、意識が刈られて倒れゆく。


「おいおい王が殺しをするのか」


「違うよ意識を断っただけ」


 そんな中に1人だけ、未だに立っているものがいる。


「くそっ使えない奴らだな。 俺が1人でやってやる」


 レオンのどこに、そんな自信があるのか聞いてみたい。

 俺は砂を払いながら立ちあがる。


「あれ? やってくれるのか」


「あいつは俺に用があるようだからな」


 俺は身体に魔力を込めて、レオンを偉そうに見下した。

 レオンは1つの刃物を構える。

 それは黒い光を伴う。


「いいのか油断してないか? お前、そのままじゃ簡単に死ぬぞ」


「油断だと、お前相手には十分な評価だろ。 それよりその剣は、アロンダイトでももらったか?」


「大量に作られた魔剣のレプリカだ。 扱うために俺は人間性に黒を加えた」


 言ってる意味はわからない。

 たが、奴の魔力が違う、おそらくそういうことだろう。


「その淀んだ魔力のことか。 それよりいいのかお前は、ただ利用されるだけだぞ」


「分かっているさそれくらい。 だが、再び成り上がるには、奴を利用してやらないと」


「なるほど、それで覚悟が違う。 前より顔が良くなった」


「うるさい見下すんじゃないよ。 お前を殺して上へ行く。 探す手間が省けたぜ」


 レオンは俺に近づいてくる。

 刃物をふって、俺を攻撃する。

 俺は、それをひらりとかわすが、避けても何故か傷を受ける。

 妙に痛む火傷痕、治りの遅い傷である。


「なるほど少しはやるようになった。 だが、武器に頼りきりだ」


 俺は彼の腕を掴んで、投げて地面に叩きつける。

 その手に固く握られた、剣を奪って地面に刺した。


「くそっ、選定の剣のつもりかよ」


 彼は難なくその剣を握るが、黒い魔力に包まれる。

 その剣に本当に選ばれたのなら、彼にそれは抜けるはずだ。

 だが、黒い魔力は拒絶の証、このままでは命が失われる。


「ぐっううううう」


 うめき声とともに、握った腕に力がこもる。


「無理をするな。 お前は生きて次の機会を待つタイプだろう」


「このままバカにされたまま、おめおめと行くことができるか。 お前から逃げて世界一に再び成り上がるなんて出来るはずない」


 だんだんと剣のヤイバが輝く。

 それはゆっくり抜けていく。

 命失うことはなく、彼は剣を再び手にした。


「やるな。 どうやらお前は男になった。 よろしい第2ラウンドだ。 全力で相手してやろう」


「言われなくても殺してやるよ。 お前は生まれるべきじゃなかったんだ」


 そう言い捨てて、彼は再び立ち向かってくる。

 しかしそれも儚くきえる。

 俺の目の前で倒れてしまう。


「……限界だったのか、仕方ない。 また俺に挑んでくるがいい」


 俺は上着を脱ぎ捨てて、彼の上にのせてやる。


「そのアロンダイトの再現度、まさか本当に奴が裏切るのか」


「だから言っただろう。 とりあえず俺の手配を解除してくれ」


「……まだ、根拠が薄い。 お前を利用させてくれ」


 大きな瞳が俺を捉えた。

 俺は彼女の手の震えを無視する。


「お前のような優秀な奴は好きだよ。 よし分かった好きにしろ」


 俺と王の覚悟が決まった。

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