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嫉妬のインヴィディア

 立ち尽くしていても仕方がない。

 俺は、とりあえず歩く。

 洞窟の外は、先の戦いの傷跡を除けば、綺麗な森だった。

 その森を抜けると、狼煙が上がっているのが見えた。

 当然、その方向へ向かう。

 そこには、1人、また1人と倒れている光景が見られた。

 抗争と呼ぶのが適切だろう。

 その中心には、全身を紫に染めた服装の少女がいた。


「目の前でこんな風にされたらな。 助けないわけにはいかないでしょ」


 俺は、戦いに割って入って止めていく。


「あなた……なによ」


「通りすがりのヒーローさ。 君を守ってあげよう」


「はぁ、いらないわよ……ちょっと!!」


 俺は、彼女を所謂お姫様抱っこの体制で抱えて脱出する。

 その際、足を地に踏み込み岩盤をあげ、それを蹴って砕いて敵にぶつけることで追っ手を阻止した。


「いらないったってね。 あのままじゃ君の負けでしょ」


「はぁ? 私最強なんですけど、負けないんですけど」


「どうも素直じゃないねえ。 あ、俺はシリュウ、君は?」


「……インヴィディア。 助けてくれたことには礼を言うけど、私こう見えても強いから」


 追っ手が追いついてくる。

 流石に早いなと考えてるうちに、彼女は行動を開始していた。

 彼女の手から7色の球が現れる。

 その色に対応した属性の攻撃が放たれ、追っ手は瞬時に全滅した。


「へえ。 たしかに強いようだな」


「バカにしてるでしょ」


 インヴィディアが詰め寄りながらそう言ってくる。

 そう睨まれても、本心からの言葉なのでなにも言えない、


「してないって、それよりインヴィディアって言ったか?」


「ええそうよ。 あの高名なインヴィディア様に出会って畏怖の念をおしてしまったかしら?」


「いや……なら、敵はイラの部下か」


「あなた……何者よ?」


 球が、今度はおそらく俺を狙っているのだろう。

 あの周りをくるくると旋回し始める。


「さっきイラを倒したんだ、逃げられたけどって言ったらどこまで信じる?」


「妄言ね。 あなたの信用が無くなっていくだけよ」


「そ。 なら言わない」


 球の魔力が高まっていく。

 攻撃の合図と同時にやや痛い思いをしそうだ。

 来ると思った瞬間から、球から魔力が消える。

 そして、インヴィディアが目をそらした。


「……それは本当なの?」


 小声で、インヴィディアがそう呟いたのが聞こえた。


「ん、どうした?」


「……あなたを信用するわ。 味方なのは認めてあげる」


「随分いきなりだな」


「いま、イラの力が弱まっているのが報告されたの。 まぁ、アセディアの力を手に入れたようだけど」


「まぁ、後は嫉妬だけだからなあいつは」


「え、ちょっと待ちなさい。 それどう言うことよ」


 腕を下ろしながら、彼女の声は大きくなった。

 その声は震え、目は見開いている。


「7大罪のみんな、アセディアに悪魔道具取られちゃった」


「あんた……てことは、シリュウってもしかして、7大罪を次々仲間にしてるっていう」


「ええまあ、そんなこともしてますね」


 インヴィディア、驚き続けている。

 なんで忙しいのだろうか。


「みんな、無事なの?」


「アセディアを除いてな」


「そっか、良かった。 ま、まぁわたしには関係ないんだけど」


「のわりには安心しているように見えるぞ」


「は? そんなわけないじゃないバカ」


 拳を胸に何度も当てられる。

 ポカポカと音が小気味よく聞こえる。


「じゃあ、イラを叩きにいきますか。 どこにいる?」


「無理よ。 座標転移を使える人間を捕まえることなんてできないわ」


「あー、ならこのままなにもできずか?」


「それは……ちょっと待ちなさい」


 彼女の顔がどんどんと青ざめていく。

 そして、舌打ちを大きくしたかと思うと、俺の方を掴み、胸に頭を打ち付けた。


「いま、わたしの部下が全滅した」


「とても大事な仲間だったんだな」


「そんなこと……イラのやつ。 殺してやる」


 インヴィディアが、拳を握り足を大きく鳴らしながら歩き出す。

 俺は、無言で彼女の肩を引き、頬を平手で叩いた。


「なにをするのよ」


「通信で、お前の仲間は何か言ってなかったか?」


「それは……それはっ」


 その目には涙が浮かぶ。 その顔には不安が浮かぶ。


「とりあえず、俺の国へ行くか」


「なんであんたが仕切るのよ」


「行くところがないんだろう」


「あんたに頼るほど弱ってないわよ」


「なら、こうするか」


 親は、インヴィディアを肩で担いだ。

 そのまま、歩き出す。


「ちょっと、おろしなさい!!」


「だめだね。 お前は俺に誘拐されるんだ」


「うぅー。 分かったわよ。 自分で歩くから」


「いや、この体勢も悪くなくてな」


「このっ、変態ぃ!!」


 俺は、7属性のオードブルを頂戴した。

 身体がピリピリと痺れる。


「ちなみに、方向が逆ね」


「ははっ、そりゃ助かる。 道がわからなかったんだ」


 俺は、立ち上がり、インヴィディアについていく。


「まったく、乙女の顔を叩くなんて」


「良かったな。 男ならグーだったところだ」


「あ、勘違いしないでよね。 あくまで、7大罪のみんなに会いたいだけだから」


「なにを勘違いするんだよ」


「ギルドには入ってあげるけど、あなたの仲間になるわけじゃないから」


 そう言われると、イタズラしたくなるが人の性。

 ちょっと泣かしてやりたくもなる。


「ふうん。 分かった、ならお前を連れてくのやめるか」


「えっ!? いや、ちょっと……」


 思っていたよりも反応が大きいな。

 マジ泣きしそうなのは笑えないぞ


「冗談だよ」


「いや、分かってたわよ」


 最後の7大罪は無事、仲間になり、俺たちはギルドへ戻ってくることができました。

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