表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/66

断固たる決意

 はははっ。 メンバーを揃えたぞ。

 俺は意気揚々と大会が行われる会場に来ている。

 西洋諸国にある有名なコロッセオ……を模して作られたコスモディオン。

 三次元構造のそれは、実物よりも大きな広いステージを作り出している。


「思ってたよりもコロッセオぽくないな。 こんなものか?」


「当たり前や、そのまま同じものを作るだけなら今はないやろ」


 俺はそいつがどこにいるのか、すぐに気がつかなかった。

 段差に腰をかけているため、視線が合わなかったためだ。


「ん? 確かにそうだな……お前も出場を?」


「ほぉ。 人の話を聞くことは出来るようやな。 さすがは凡人とはちゃう人間やわ」


「……おまえは、人の話を聞けなさそうだけどな」


「別に今話す必要はないからな。 また会おうでシリュウ君」


 彼女は、立ち上がり背中を見せる。

 立ち上がるとわかるが、俺よりも少し低い程度で、かなり身長の高い女性だ。


 ーー俺の名前? まずいな。 知り合いだっけ?


 そんなことを考えていると、遠くから俺の名前が聞こえてくる。


「おい、あれシリュウだぜ」


「あぁ、やべえんだってな」


 ……あぁ、俺もそこそこ有名なのね。


「なんでもシリュウってスキルが恵まれてるから強いらしいぜ」


「ふうん。 羨ましいな。 俺ら凡人とは違うよ」


 たまに他人の言葉に耳を傾けると、聞かなくていいことまで書いてしまう。


「そうやな。 確かにお前らは凡人や……そう思うやろ?」


「いや……スキルに恵まれたのは事実だ」


「はぁーー? あまちゃんやんけ。 アホらし……まぁええわ」


 そう言って、彼女は去っていった。

 スキルが恵まれているだけ……最初は雑魚スキルと思っていたが、今では確かにと思う。

 俺は、なんだがここにいづらくて、その場を去ってしまった。


 そして、俺が帰る場所……ギルドに戻ると、そこでもいざこざが起きていた。


「あんた……いきなり戻ってきて」


「ええやんか。 後一枠あるんやろ? うちが入ったる」


「あんたなんか……あんたなんかに頼るほど弱いギルドじゃなくなったのよ」


「せやから、うちも強くなって戻ってきたんや……あ、シリュウ君、君からも言うてくれ」


「…………まずは自己紹介から始めてくれ」


 俺は、正体不明のこの女について聞くことにした。


「それはすまんかったな。 うちはカガリ、アイの幼馴染や」


「ただ、昔仲良くしてただけよ。 今は、なんでもないわ」


「……まだ、うちを恨んどるようやな」


「当たり前よっ!!」


「まぁ2人とも待て。 一旦落ち着けよ」


「うちは落ち着いてるで……ただ、アイが意地を張ってるだけや」


「団長、一体何があったんだ?」


「……こいつは、私を裏切ったのよ」


「裏切ってへんからここにこうして帰ってきてるんやろ?」


「今頃、帰ってきたところで……」


 その時、空から美少女が舞い降りる。


「はーい!! 超絶美少女のルクスリアちゃん参上ぉーー……あれ?」


 それに、団長が反応して、一気に思いが爆発した。


「……もういいわ。 私の目の前に二度と現れないでちょうだい」


 机をドンっ!! ……と叩いた後、団長は奥へと行ってしまった。


「あれ……あれ? ルクスリアちゃん。 来るタイミングミスったかな」


「いや……まぁ、間が悪かったな」


「うぅ……退散するよ」


 ルクスリアは、空へと消えていった。


「まったく……昔から何も変わらへん。 で、シリュウ君、ほんまのところは、最後のメンバー探しに奔走しとるんやろ? うちなんてどうや?」


「……今の間の悪い美少女が最後のメンバーなんだ」


「なに? もう決まっとるんかい……なら、うちが戻ってきたってしょうがないわな。 アイのやつもあんなやし、消えるか……」


「まぁ待て、お前には事情を話す必要があると思わないか?」


「要らんやろ。 うちが消えれば済む話や」


 俺は目を閉じる。


「……お前にも出場のチャンスがあるとしたら?」


「どう言う意味や?」


「俺の枠をやる。 だから事情を話せ」


「同情ならいらんわ」


「いや……なんか、嫌になったんだ。 お前なら、強いだろうしいけるだろ」


「なんで強いってわかるんや?」


「才能ってのは目に見えないから嫌いだよ。 でも、努力したやつって目に見えちゃうんだよな……」


「ふーん。 ほんま見る目はええやっちゃな。 ええで、ついてきな」


 連れられてきたのは、コスモディオン。

 その内部まで入っていき、一般公開された戦闘エリアへ入っていった。


「ここなら、誰にも聞かれん。 話たるわなにがあったか」


「あぁ、頼む」


「あいつの両親、早くに死んだんや……それで、あないに若いのにギルドの運営をさせられとる。 それは知ってたな?」


「いや、知らんかった」


「なるほど。 そういや、あんたはあまちゃんやったな。 まぁええ。 それで、その時な、ギルドメンバーがどんどん脱退していったんや」


「それで、ギルメン0人を達成したと」


「……まぁ、そう言うことやな。 あいつは、その時うちを頼った。 でも、うちに力はない。 だから断って武者修行の旅に出たんや」


「だが……団長はそれを裏切られたと」


「まあ、そう言うことやな。 うちが救おうとしたギルドは、もうあんたが救っとったってことやでシリュウ君」


「そりゃ悪いことしたな」


「いいや。 うちにはここまで出来ひん。 むしろ感謝しとるくらいや」


「そうか? だったら何故ここへ連れてきた。 2人だけで話したいなら、他にも色々あるだろう」


「察しのいいやつやな。 もちろん、喧嘩するためや」


「……受けて立つぜ。 手加減はしないがな」


「当たり前や。 君がうちより格上みたいな言い方やめいや」


 カガリが、構えを取る。

 俺は、それに対してノーガード。

 カガリは接近戦が得意なようで、一気に距離を詰めてきた。

 そして、勝負は一瞬でつく。


 ーー結果は俺の圧勝だった。


「はっ!! なんでや。 うちは、強くなって、努力してきたんや」


「……なるほどな。 いいぜ、カガリ。 うちに来い、対抗戦はお前が出ろ」


「なんでや!! うちはいま負けたんやぞ」


「それでも、お前は俺を除けば大体のやつに勝つだろう?」


「……スキルが強いから、勝った」


「…………そうだよ」


「アホかっ!! スキルの強弱? そんなもんないわ。 そもそも、お前はなんでそこまで強い? ふらりと街へ来て、ギルドを辞めさせられた。 そんな半端野郎がそこまで強いわけないやろ!!」


「スキルが実は強かったから……それに気がついたからだよ」


「やから、スキルが人によって優劣があるなんてことない。 あんたのスキルは……むしろ劣る方やろなのに」


「気に病むな。 お前は強いから」


「黙っとれ!!」


 カガリは起き上がり、俺の服をはだけさせる。


「才能は見えない。 努力は見える……か。 その通りやな。 才能なんて存在しないものが、見えるわけあらへん。 君のその身体は、その傷は努力の証や」


「カガリ……」


「うちが負けたのは、シリュウ君の方が、うちより努力してたってことや。 うちは、もっと努力して強くなれる」


 カガリは、大きく溜息を吐いた。


「分かった。 アイには必死で頭下げてギルドに入れてもらうわ。 やけど、対抗戦にはシリュウ君が出ろ」


「……いいのか?」


「そんかわり、君の力がスキルだけのものやない。 むしろ、努力して得たものやって証明してこい!! ええな!?」


 差し伸べられた手のひらを取る。


「あぁ、分かった。 お前の分もやってやるよ」


 俺は、対抗戦に出るための決意が固まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ