ギルド対抗戦とルクスリア
「ギルド対抗戦?」
「そうよ。 年2回、その時期が近づいてるの」
食事を口に運びながら、俺たちは話している。
「どんなことするの?」
「前回はギルメン総出での運動会だったかしら? 今回は、5人の代表による団体戦ね」
「ふーん。 出るとなんかあるの?」
「富、名声、力。 この世の全てが手に入るのよー」
「アホくさっ」
「なによお」
俺は、ナイフとフォークを巧みに使い、肉を切り分ける。
「ま、前回の優勝が俺の前のギルドってところなんだろうけど……阻止してやるか」
「違うわよ」
「なに?」
「前回の優勝は国営ギルド、ロイヤルスターズよ」
「国営……ていうと」
「メンレイ率いる最強軍団ね」
「なるほどね。 言われてみると、だろうなとしか言いようがない……ちなみに、前回のうちの結果は?」
「聞いて驚きなさい。 なんと無敗よ」
「出場してないのか……そういや、そのときはまだギルメン0人か」
「うっさいわね。 で、メンバーの選出なんだけど」
「そんなの、俺、お前、フェロー、シロ、バシンで5人だろ」
「うーん。 残念ながら団長は参加できないのよね」
「そうか……」
「ねぇ、ちなみにシロちゃんって強いの?」
「強いぞ。 俺が本気を出しても負けるときは負けるレベルだな」
「はいはい。 あんたの評価はあてにならないから」
「じゃあこれならどうだ?」
俺は、団長の耳元へ顔を近づける。
「え、あんた……女の子に免疫がなさそうな感じどこやったの」
「そういうのはいいから、聞けよ」
俺は、小声で伝える。
「あいつ、7大罪でナンバー2。 傲慢だぜ」
俺は、顔を話した。
団長の顔がやけに桃色になっている。
「へ、へぇ……えっ!? またそういうの連れてきたの?」
「あぁ、すごいだろ」
俺は笑いながら返した。
「すごい……を通り越して頭おかしいわよほんと」
「食べ終わったか? なら、最後のメンバー探しでも始めるか」
「そうね、1人で行ってきなさい」
「なんで? 団長は」
「わたし、今日中に済ませないといけない仕事があるから……」
そう言って、手を振りながら団長は去っていった。
「…………もう少しで落とせそうな気もするが、つれないな。 さて、ギルド対抗戦ね」
団体戦と言うからには、3人が勝てば問題ない。
1人ぐらいなら落としても構わないのだが、俺は、完全に勝利をしてやりたいと考えている。
つまり、ラストメンバー探しだ。
「どうせなら、もう1人ぐらい7大罪がいいんだけど……よし、フェローあたりに聞くか」
この時間なら、ギルドにいるだろう。
俺は、意気揚々と向かった。
「よう、フェロー……シロもいたか」
「うむ。 こう見えて私たちは仲良しだったからな」
「そうでしたっけ?」
「ふむ。 フェローはいつも通り辛辣だな」
「で、シリュウ。 何か用ですか?」
「ギルド対抗戦の話は聞いた?」
「はい。 あなたがた3人が出れば問題ないでしょう」
「いや、完全に勝ちたい……な?」
「うむ。 全力で挑むことに意義がある。 フェローにはわからんだろうが」
「なぜ、僕の方が間違っていることに……」
「で、バシン含めてここの4人は確定なんだが」
「半分以上闇ギルドって大丈夫ですか?」
「いいんだよ。 で、最後のメンバーもどうせなら7大罪から迎えたい。 誰かいいのがいないか?」
「いや、7大罪はそんなちょろい集まりじゃないですからね。 僕たちが特殊なんですよ」
「いや……いるぞ。 私たちの仲間になりそうな奴が」
「スペ……シロ、あなたひょっとして」
「あぁ、ルクスリアだ」
「ちょろさだけでいったらインヴィディアじゃないんですか?」
「確かにな。 だが、彼女に手を出せばイラが動くぞ」
「……なるほど。 しかしルクスリアですか」
「なぁ、知ってるもの同士で話さないでくれ。 ルクスリアって?」
「7大罪、色欲のルクスリアだ。 彼女は可愛いぞ」
「そして、エロいですかね。 さすがは色欲です」
「……へぇ」
「あぁ、やはり君もそう言う反応をするのか」
「えぇ、とてもきもいですね」
「お前らが悪いだろ。 今のは」
「ふむ。 さて本題だが、ルクスリアは気まぐれでな、そもそもどこにいるのかさえわからない。 7大罪にこだわる意味もないなら、今のギルドの誰かを鍛える方が効率的だぞ」
「だが、どのみち7大罪なら、いつか相手にしなければならんだろ」
「そうですが……出会えたとして、仲間になってくれるかどうか」
「まぁ、君の7大罪を仲間にしていくのはいい案だがな。 力を手に入れることで相手を反発させない抑止力を得られる」
「え? いや、そんなこと考えたこともなかった」
「まったく、お前と言う奴は」
「だからいったでしょう。 バカなんですよこの人は」
「ええい。 うるさい!! もうこうなったら意地だ。 ルクスリアは絶対仲間にしてやる」
「まずは見つけるところからですね」
「そんなの、7大罪の国……クリーム国に侵入して」
「バカですか?」
「シリュウ、残念だが彼女が領土にいるとは限らない。 そもそも出会うことが奇跡なんだ」
「だったら、俺は奇跡だって起こしてみせる。 だって、俺が望む世界は、その先にあるから。 奇跡ぐらい起こしてやらないとっ!!」
「カッコつけてもだめですよ」
「まぁ、出会えないわけではないがな」
「なに? どう言う意味だ」
「君の場合、活躍が著しいからな。 そう言う有名人にはルクスリアの方からやってくる」
「ふーんじゃあ」
「1人でひとけのないところにいるのがいいですね」
というアドバイスをいただいたので、俺は近くの山の頂上に来ています。
軽装だったので寒いです。
桃の香りがします。
そして、後ろから抱きつかれた。
バカな、気配を感じなかったぞ!!
柔らかくて、暖かい。
それは、俺の警戒心を削ぐには十分すぎた。
「あなたが、シリュウでしょ。 昼間あたしを探してくれた」
「お前が……ルクスリア?」
「えぇ、はじめまして。 いいね、あなたは強そうだ」
これが俺たちのファーストコンタクトだった。




