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グラ、討伐完了

「これがスライムね……どこがだよ」


「おそらく食したものの性質を手に入れる能力だろう。 知能のないスライムでよかったな。 人がその力を手に入れていたらまずかった」


「冷静な分析どうも」


 俺たちは、触手を避けながらその身体に近づき、攻撃をする。

 俺は、鼓動で攻撃するも、表面が崩れるだけ、一方シロのほうは、光の矢を放つがこれも決定打に欠けていた。


「やはり山を相手にするというのはきついものがあるな」


「どうする? この触手も鬱陶しいぞ」


「おそらく、触れたら即死だろうな。 ふふっ、私の攻撃力では少し時間がかかるか」


「なんでこっちを見る?」


「あるんだろう。 君にはいい案が」


「……はぁ、3秒でいい。 こいつの気を引いてくれ」


「さすがだな」


 シロは、光の矢を多方向から大量に放つ。

 火力の低さを手数でカバーするタイプだろう。

 ダメージこそ与えられていないが、気をひくには十分そうだ。

 グラが、シロに気を取られている間に、俺は上をとり着地する。


「さぁ、ここら辺か」


 俺は、右手を合わせ左手で手首を抑える。

 そして、放射線状にこいつの体を凍らせた。

 体内深部まで凍らされたグラは、俺のことに気がついたようで触手をこちらへ伸ばしてくる。

 だが、もう遅い。

 俺は、深部まで到達した氷を砕き、そのまま空いた穴に熱を送り込み続けた。

 溶岩が例にあるように、土であろうとも、山であろうとも、高温になれば液体に変わっていく。


「土属性でも、スライムの弱点は炎ってことだ!!」


 融点を超えた山は液状化し始めた。

 流石に、これに触れれば俺もただでは済まない。

 俺は、自身の体温をさらに上げ、はるかに上回る体温を持つことで対処した。

 いくら温度が高くても、それより高い温度で触れればダメージはない。


 そのまま、俺は溶けた大地で濡れた地面を歩きながらシロに近づいた。


「おい、暑いぞ。 そのままやるんじゃない」


「……つれないね。 抱きしめてやってもいいんだぜ?」


「まったく、君に抱きしめられるなど、前世で一体どんな罪を犯したのか……」


「そこまでかっ!?」


「冗談だよ、君の抱擁なら良いご褒美じゃないか……それは?」


「ん、チョーカーかな。 ここに名前が書いてある」


「なんで……書いてある?」


「グラトニーのチョーカー。 悪魔道具ってやつだな」


「ふむ。 わたしにも見せてくれないか?」


 そう言って、シロが手を伸ばしてくる。

 俺は、その時は何も疑わずに渡してしまう。


「これが……そうか」


「これを知ってるのか?」


「知っていた……が正しいかな。 思い出しきれていないので」


「そうか。 てことは、何か思い出したんだ」


 俺は、チョーカーを受け取りながら聞いた。


「私が何を思い出そうとも、気にする必要はないよ。 君にとって、私はシロだ。 それでいい」


「そうか。 シロ、でもいつか話してくれよ?」


「分かった。 いつか、話そう。 それより、腹が減った。 何か食べよう。 君の奢りで」


「えぇっ!? 自分も少しは出せよ」


「あいにく文無しなのでな。 安心しろ、私は食べるぞ?」


「一切合切安心できないぜ」


 そう宣言した彼女は、やはりよく食べた。

 ここでの食事が珍しいのか、少量を多種類に渡ってたくさん食べては、感激の声を上げている。


「よく食べたな。 シリュウ、あそこへ行きたい」


「あそこ……劇場か?」


「芝居はよく見るのだが、合奏というのは珍しいな」


「眠くなりそうだ」


「安心しろ。 私もだ」


「えぇーー!! じゃあなんでいくんだよ?」


「……思い出を作りたいんだ。 今は」


「よし、行こうじゃねえか」


 俺たちは、劇場を楔に多くを回った。

 合奏というのは、軽食を食べた後、2人で眠っていたし、買い物では色々なものを買った。

 道中では、いろんなものを食べた。

 本当に、彼女はよく食べる人だった。


 それは、何日にも渡った、

 ギルメンについて、紹介は終わった。

 フェローの名前を出した時は、少し反応していたようだったが。

 そして、クエストにもよく同行してくれた。

 俺は、相棒ができたような気がしていた。


「討伐完了だな。 雑魚が多いクエストなら君の方が優秀なんじゃないか?」


「そう、褒めるな。 君だけの男に言われても嫌味に聞こえるぞ」


「え? それは、悪かった」


「いや、私こそ……何故こんなことを口走ったのか」


「シロ……大丈夫か?」


「………………」


 返事は返ってこない。


「シロ?」


「ん? あぁ、私がシロか。 そうだったな、どうした?」


「いや、なんでもない。 帰ろうか」


「あぁ、帰ろう」


 この時点では、気がかりなことがあった。

 それは、日が経つにつれ、シロの表情が暗くなっていったことだ。


 そして、帰り道のことだった。

 ーー不意打ち。

 俺は、いきなり首を切られた。

 反射で晒したものの、そこからは静かに血が流れ落ちていく。


「お前は?」


「……やるな。 お前」


「バシン。 そろそろ帰るから下がれ」


「……ですが」


「その男を殺したら、私が君を殺すぞ」


「……わかりました。 お前、命拾いしたな」


 そう言って、そのバシンと呼ばれた女性は下がっていった。


「命拾いしたのはお前なんだけどな……シリュウ、すまなかったな」


「いや……お前、帰るって」


「あぁ、私は、ここにいすぎた。 それに、最後のギルメンに会えるこの日ならちょうど良いだろう」


「そう……か。 なら、パーティか何かをしよう」


「いや、いい。 嫌いなんだ。 そういう特別なことは」


「それなら、静かに送るが」


「是非、そうしてくれ。 君が、静かに送ってくれるとは思えないが」


 その不穏な言葉の意味は、すぐに分かった。

 ギルドに戻ると、フェローは戻っていた。

 俺の顔を見るなり、お帰りなさいと挨拶をしてくれる。

 そして、シロの顔を見て、手に持つ書類を落とした。


「ふむ、フェローか。 聞いた名だと思っていたが、やはり君かアワリティア」


「……シリュウ、どうしてスペルビアと一緒に歩いているんですか?」


 2人の警戒の色が濃くなっていく。


「スペルビア……というのは?」


「いつか話すと君とは約束していたな。 シリュウ、はじめまして、傲慢なスペルビア。 もっとも、今は暴食でもあるけどね」


 そう言って、袖をはだけさせてそれを見せてくれた。

 チョーカーを、腕に取り付けている。

 サイズは、なぜかぴったりだ。


「どういうことだよ……説明しろよ」


「彼女も、7大罪の1人だということですよ。 しかも、実力は上から2番目。 僕とは違い、本物の実力者です」


「アワリティア、褒めてくれるのは嬉しいが、君がいなくなってから、私とインヴィディアは大変だったんだぞ」


「それは……申し訳ありませんでしたね」


「いや、謝る必要はない。 君には学ばせてもらったからね……人は裏切ると」


 その発言に、フェローは口を濁した。


「お前は……敵なのか?」


「君が逃してくれるなら、争うことはしないで済む。 そうだ、君の周りの人は襲わないでやろう。 この裏切り者も許してやる。 どうだ?」


「そんなの、飲めるわけないだろ?」


「ふむ。 なぜだ? 知りもしない遠くの国の人間が死のうとも君には関係ないだろう。 本来なら始末するはずのフェローも許すと言っているんだが」


「何故だ。 なぜ、俺を特別扱いする?」


「君を好きになったからだ。 私は人の黒い部分をよく見てきたが……君のように純粋で甘い人間は初めてだった。 フェローの気持ちもわかる」


「だったら、もうやめろ。 そうしないと、俺はお前を止めなくてはいけなくなる」


「……君も、私と争うのはいやか」


「あぁっ!!」


「だったら、君が私の元にこい。 それなら、争う必要はない」


「そんなこと……」


「返答は、明日まで待とう。 明日、グラを倒した場所でまつ」


 そう言って、彼女は姿を消した。


「シリュウ、頼みがあります」


「……なんだ?」


「どんな選択をしても構いません。 彼女を救ってあげてください」


「…………お前にも働いてもらうぞ」


 俺たちは、明日が来るのを待った。

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