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暴食のグラ 登場

「シリュウ、団長にはもう話したのですが、情報提供のため、運営所へ行ってきます。 その間、くれぐれもアホなことはしないでくださいよ」


「だってさ、ストちゃん。 俺たち何もしてないのになー」


「なーです」


「あなたたち、僕が元7大罪ってこと忘れてるでしょう!! はぁ、1週間ぐらいは拘束されるらしいので……ほんとに頼みますよ?」


「はいはいわかりましたよー」


「心配だ……全く信用がなりません」


「大丈夫だって、1週間で一体何ができる?」


「まぁ、それもそうですね。 とりあえず信用しておきます」


 ーーなんて、今朝話したばかりなのに。

 目の前には、長めの白髪を束ねた女の子がオロオロしていた。

 当然、話しかける。


「どうしたんだ?」


「ん? あぁ、気にするな。 ちょっと記憶が喪失しただけでな」


「大問題じゃないか……どこまで覚えてる?」


「どこまでと言われても……ここがどこで、何をしようとしていたのかはおろか、自分の名前すら分からん」


「思ってたよりも大問題だ……しょうがねえ、力になるよ」


「いや、いらん。 見ず知らずの者の助けなどかりれんよ」


「いや、今のお前は大体見ず知らずの人しかいないだろ」


「ふむ。 それもそうだな。 なら、少し厄介になるか」


「ふーむ。 しかし何も覚えてないというと……少し歩き回れば思い出すか?」


「いや、いささか非効率だな。 こういう時は記憶や手がかりを探るのがいいだろうが……」


「一切、そういうのがないからな」


「そういえば、君の名前を聞いてなかったな」


「そうだな。 俺はシリュウだ」


「私は……よし、君が名前をつけてくれ」


「え、いいのか?」


「かといって、名前が無いと不便だろう」


「なら、お前がつければいいだろう」


「自分で自分の名前をだと? 照れ臭くてやってられないな」


「後悔するなよ?」


「しない。 名を思い出せば捨てる名だしな」


「このやろう……わかった。 お前はシロだ」


「シロ……一応聞くが、由来は?」


「髪や瞳が白いから」


「そうか、私は瞳も白いのか」


「おいおい、しっかりしろよ」


「そうはいうが、自分の瞳を見る機会などそうそう無いものだぞ」


「それは、そうだな」


「さて、君の身分はまだ証明されていないな。 君は一体何をする人だ?」


「何って、冒険者だからな、ギルドでクエストを受けて生計を立ててるよ」


「冒険者なのに、冒険をするわけじゃ無いのか」


「一応、昔は未知の大陸を開拓したりしてたらしいが、今では開拓され尽くしたからな」


「ふむ。 なるほど……何故だか私は冒険者という単語に深く気にかかってる。 君のギルドとやらに案内してくれないか?」


「あぁ、構わないけど」


 俺たちは、ギルドに到着した。


「あら、また連れてきたの……フェローが怒るわよ」


「まぁ、面倒見てやってくれよ。 こちら、記憶喪失のシロ。 名前は仮名だ。 で、こいつが団長だ」


「はじめまして、私はシロです。 もしかしたら、長い間お世話になるかもしれませんが、よろしくお願いします」


「あら、あらあらあら、丁寧ねえ。 誰かさんとは大違い」


「なんだって?」


「別に、あなたとはいってないけど」


「こいつ……」


「あ、そうそう。 さっきメンレイが来て、これを置いてったわよ」


「ん? クエストか」


 Sランククエスト。

 7大罪の1人、暴食のグラの封印が解けそうです。


「なるほど、封印をかけ直せと……」


 封印をかけ直そうなんてあなたには期待してません。


「ーー先読みすんな。 そしてバカにすんな」


 なので、倒してきてください。


「そしてもっと無茶振りすんなっ!!」


「例によって報酬がいいの。 だから、早くいってきなさい」


「あ、あの」


「ん? どうしたシロ」


「私も連れて行ってくれないか?」


「うーん。 危険だぞ?」


「百も承知だ。 だが、私は7大罪の1人に会いにきた。 それを思い出したんだ」


「そうか……ならついてこい」


「すまない、助かる」


 こうして、シロと2人で俺は封印された場所へと向かうこととなった。

 俺が、シロの動向を許可したのは、同情からであったが、それ以上にシロの強さを見抜いていたからだ。

 こいつ、強い。


「なぁ、グラというのはどういう奴なんだ? 情報が欲しい」


「ええと、資料によると、モンスターが悪魔道具を装備した存在……らしい。 スライムらしいが、周囲の物を捕食するための器官が生まれているとのことだな」


「そうか、ならそれなりに強そうだな」


「どうだかな。 元がスライムだぜ?」


「シリュウ、君は少し慢心癖があるようだな。 スライムといえど侮ってはいけないぞ」


「へいへい……ここだな。 何もいないが」


 俺たちは、山を背に向けてぐるりと回ったが目標の姿は見えなかった。


「そもそも、本当にあっているのか?」


「それは間違いないはずだ。 気配もする」


「その気配はどっちだ?」


「どっちって、この山……まじかよ」


 俺が山を指差すと、まるで返事をするかのようにそれは動き出した。

 触手を何本も生やし、山の中心には大きく穴が空いている。

 その触手は、周囲にある大岩を掴んだかと思うと、その大穴へ向けて放り込んだ。

 すると、その山はさらに大きさを増す。


「どうやら、私たちが相手をしようとしていた存在は、強大なようだな」


 その時、ひらりと紙切れが落ちた。

 そこには、こう書かれている。

 ーー封印結界が食われそうなの。 食われたらやばいわよ。


 そうですか。

 はい、やばいです。

 まぁ、所詮スライムなんだろうけど……シロを守りながらやれるか?

 俺は、戦闘態勢をとった。

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