地球
少佐のおすすめ映画が流れ始めた。
「ここは、トラックの中でいいのか?」
「そうだ、トラックの荷台の中だな」
「今は真っ黒なホットドッグの中ってことか?」
「その通りだ、わかってるな軍曹」
映画が映し出されるディスプレイの左右には小さめの扉があった。
「その扉は何だ?」
「左はトラックの運転席と繋がってる。右はトイレだ」
「トイレ?」
「無重力の間は使えないからな、今なら大丈夫だ」
「左はトラックの運転席なのか?」
「そうだ」
「大型トラックって、荷台と運転席には隙間があるだろ?」
「だからあ、プロメがトラックっぽく作ったオリジナルの車なんだって」
「ああ、そうだった・・・」
少佐のおすすめ映画の中では、火星に一人で取り残された植物学者がジャガイモを作って何とか生き延びていた。
なかなか面白かったが、最後に宇宙遊泳する描写があり、それがすごくウソっぽかった。
続いて少佐のおすすめアニメを見た。
アニメでは地球の衛星軌道上に浮かぶゴミを主人公たちが拾っていた。宇宙服に装備された腕のスラスターで、体の重心を上手に射抜いて無重力の空間で移動していた。
「俺たちは宇宙服は着なくていいのか?」
「この船がもしもバラバラになって、あたしたちが宇宙空間に投げ出されたとする。宇宙でしばらく生きてたとしても、誰も助けに来ないからな」
「そうか」
「諦めて死んだほうがいい」
「そりゃそうだ」
アニメを見ている途中で時間が来た。大気圏突入の時間だ。モニターに青い地球が映し出された。
「それではみなさん、シートベルトをしてください」
「大気圏突入準備、いくぜー!」
「トミは久しぶりの地球ね」
「そうだな」
「トミー、楽しいか?」
「少しワクワクするな」
「突入します!」
俺たちの乗るステルス型まっ黒こげホットドッグは、大気圏に突入した。
船はしばらく激しく揺れ、体に激しい下向きの力が加わった。地球の大気に突っ込んで減速しているのだ。
その激しい揺れと下向きの力が消えそうになって、少し静かになったと思ったらゴゴゴーと激しく逆噴射し、ホットドッグは海に落ちた。
大気圏で外側のパンの部分はボロボロになり、ホットドッグはパンを捨てた。中身の真っ黒こげソーセージならぬ黒い潜水艦で海の中を移動した。
「これからどうするんだ?」
「太平洋側の、千葉から宮城県までの海岸沿いで、人のほとんどいない漁港から上陸します」プロメが答えた。
「潜水艦で?」
「上陸地点は船で探します。そして船を乗り上げてトラックになります」
「バラバラ作戦か」
ボロンの製造空間で試作品を作った時に見た、船を脱皮させるようにバラバラにしていく作戦だろう。
「それからどうする?」
「状況次第だけどね、出来れば私たちで神アプリを作ってしまって、地球人が変な道に行かないように、私たちが影から少しだけコントロールしたいのよ」
「トランやナーヌと同じ道を辿らないようにか?」
「そうね、人は愚かだから。私たちが地球人を救えるなんて思ってないけど、出来ることなら救いたいのよ」
「ああ、分かってる。俺には何も出来ないけど、みんなは何でも出来そうだもんな」
潜水艦はしばらく水中を進み、日本に近づくと浮上して黒い潜水艦を脱ぎ捨てて白いクルーザーになった。
夜の太平洋岸を進み、津波の跡がそのまま残る街灯もついてない小さな漁村を見つけた。
夜明け前の時間に、その漁村にあった船用のコンクリートで出来たスロープに乗り上げ、船を捨ててトラックになって日本に上陸した。
俺たち5人はトラックから降りて地球の大地を踏んだ。
この日本には、何も知らずに生きているオリジナルの俺がいて、赤い髪の4人は異星人だけど、5人で地球を救ってみるという。
おもしろい!映画みたいだ!
水平線から朝日が昇った。
それは、トラン人が初めて見る朝日だった。




