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未来

「だがな、この星のトラン人の未来を考えた場合」マリーが腕組みしながら言った。「この星で1からやり直すのは、農業や漁業や、狩猟すら違法で、パトロールに発見されたら捕まってしまうんだ」

「捕まって、DNAを改変されて、プロメリの体です」

「お隣のナーヌはね、機械化が進んでいたけど、最後まで人が農業や漁業を続けていたの」


「ナーヌなら畑を耕しても魚を捕っても大丈夫ってことか?」

「その通りだ」マリーが大きく頷いた。「だからな、もしこのキリア星系で人類の未来を繋げていくなら、私たちはナーヌに行きたいんだ」

「しばらくしたらマリーの待ってるDNA研究所に戻って、色々と下準備をしてからだけどね」

「その為には防衛衛星を何とかする方法も、考えなければいけませんが」

「なるほどな」


 人類の未来をナーヌで繋げる。俺には話のスケールが大きすぎて半分も理解できたか怪しかったが、なんとなくみんなが考えていることは分かった気がした。でも・・・


「それで、俺たちは何で宇宙に行くんだ?」

「地球を目指します」

「地球?」

「トミー、私たちは地球をずっと見てきた」

「地球ではもうすぐ神アプリが誕生します。いつ誕生してもおかしくありません」


「そうしたら、トランと同じ歴史になるのか?」


「可能性は少なくありません。トランと同じ歴史にならなくとも、ナーヌと同じ歴史になる可能性は高いのです」

「そうなのか?」


「私達はね、なんとかそれを阻止したいのよ」テルルが言った。「私達だけでは、大したことは出来ないかもしれないけれどね」

「でも、地球に行くって言っても時間がかかるんじゃないのか?」俺は言った。「もうすぐ神アプリが誕生してしまうんじゃ、間に合わないだろ」

「トランと地球との距離は40光年あるわね。普通に行ったら物凄い時間が掛かるわ。でもね・・・」



「秘策があります」プロメが珍しくニヤッとして言った。「もう秘密道具は飛ばしてあります」

「秘密道具って?」


「もちろん秘密です」

「・・・」


 地球に行って神アプリを止めるという。

 秘密道具は飛ばしてある?いったい何をどうするのか、俺にはまったく分からなかった。

 ああ、頭のよくなるサプリをしばらく飲んでないのを思い出した。DHAだっけ。



「トミサワさん、これを見てください」


 プロメが機械を操作するとモニターに青っぽい地球みたいな星がいくつも表示された。少しずつ青の色味が違う。どこの星だろうか。


「地球か?」

「これはね、私たちが今までに見つけた居住可能惑星よ」テルルが説明した。

「居住可能?」

「7つあるわ」

 モニターには7つの青い星が映し出されていた。


「そんなに地球みたいな星はゴロゴロしてるのか?」

「もう惑星の地上に探査機も下ろして、動植物が生息しているのも確認してるわ」

「良く分からないんだが、地球みたいな星はめったに無いって、昔テレビで言っていた気がするんだが」


 奇跡の星、地球、みたいな番組を見たような記憶がある。


「何でテレビの言ったことを全部信用するのよ!」テルルは少し怒って言った。「このあたりの宙域はね、宙域っていうのは、私たちの銀河の、私たちの星の近くの、百光年ぐらいの領域って意味だけどね」

「うん・・・」

「遥か昔に、緑に覆われた自然豊かな星があったらしいの。それが恒星の爆発、太陽の爆発ね、その恒星の爆発で、緑の惑星は粉々になって飛び散ったみたいなの」

「飛び散った・・・」


「私たちのキリア星系の小惑星帯に、遥か昔の植物の種とか微生物とかが入ってる小惑星がいくつもあるのね。その小惑星の中から出てきた植物の種が作られた年代は、この星が生まれるよりずっとずっと昔なのよ」

「ずっとずっと昔の種?」

「その大昔の種はね」テルルが俺の目を覗き込んで言った。「DNAから作られてるのよ」


「トラン人と地球人のDNAが変わらないってのは、そういう意味なのか?」


「そうね、この辺の宙域の水のある惑星は、みんな同じDNAを受け継いでるのよ」


「同じような動植物がいるってことか」


「おまけにね、私たちは小惑星の中から、文字が彫られたセラミックプレートを発見した」

「セラミックプレート?」

「人工物だ」マリーが言った。「遥か昔にも知的生命がいたってことだ」

「知的生命って、ご先祖さまってことか・・・」


「私たちはね、新しい星に旅に出たいの。一緒に行ってくれる?」テルルが言った。

「そりゃいいけど、俺はついていくだけだからな」

「いやなら言ってね」

「俺には何も無いからな。いや、違うな。俺にあるのは、みんなとの繋がりだけだ。俺はみんなが好きだ。一緒ならどこでも行く」


「トミー、なかなか嬉しいことを言ってくれるな」マリーが俺の背中をバンッと叩いた。


「軍曹を曹長に昇格させるか!」少佐がソファーで言った。

「いや、何でもいいが・・・」



 何だか難しいことを一気に聞いた気がする。頭が少し混乱している。聞いた事柄がうまく纏められない。何か話の中に矛盾しているものが含まれている気がする。なんだ、何か矛盾してた。なんだろう、ダメだ、頭が疲れた・・・


「これから宇宙空間に浮かぶ最大のボロンで、宇宙船を作ります」

「ボロンって宇宙に浮かんでるのか」

「作るんですが、今現在、材料を運搬中ですので、ここで少し待ちます」

「材料?」

「小惑星です」

「なるほど・・・」


 プロメが操作しているモニターには、キリア系の現在の惑星の位置と、外側の小惑星帯から小惑星を運んでくる宇宙船の位置が表示されていた。近いからそんなに時間はかからないらしい。


 俺たちはしばらく天文台でのんびりと過ごすことにした。





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