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下山

「ピピピピッ!ピピピピッ!」


 深い眠りの中、どこか遠くで目覚まし時計が鳴っていた。


「みなさん、起きてください!」


 プロメが大声で叫んだ。


 俺はガバッと起きたが、一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。


 暗い空間、自分の体に掛かった毛布、倒されたイス、空には星。


 天然のプラネタリウムにいるってことを思い出した。


「トミー起きろ!」

 マリーが起きてる俺の頭を引っ叩いた。


「うがっ!」

 少佐の声がした。見ると暗闇の中でプロメが少佐の腹にパンチをお見舞いしているのが見えた。


「みなさん、パトロールの車がこの山に登ってきます」プロメが状況説明した。「1本道ですので、パトロールがここに来るまでに救急車に乗ってください。急いで!」


「そんなのいいから早くしろ!」


 マリーが怒鳴った。見るとテルルが毛布を畳んでいるところだった。


 俺たちは急いで建物の外に出た。


 救急車は建物の入口に横付けされて停まっていて、運転席に充電完了のメッセージが闇の中で光っていた。


 俺たちは充電完了の救急車に乗り込んだ。


 プロメが目的地を設定し、救急車はサイレンを鳴らし警告灯とヘッドライトを点け発車した。


 車はサイレンを鳴らしながら、ゆっくりとクネクネとした山道を下った。



「来ました、すれ違います」プロメが言った。


 カーテンの向こうにピカピカとしたライトが見えた。俺たちはじっと息を殺した。パトロールに見つかるわけにはいかないのだ。


「大丈夫です。見えなくなりました」


 俺たちはほっと肩をなでおろした。



 その後、車は山を下り、平地に入り、さらに地下に入り、長い下り坂を走った。


 車が地下都市の5番目の街に戻ると、またバイパスを走った。


 5番目の街を食事1回分ぐらい走ると、車は軍用列車の駅に続くトンネルに辿り着いた。俺たちはパトロールに見つからずに、やっとここまで辿り着くことが出来た。


 ここの軍施設にも2つのゲートが有るらしく、トンネルを進むと1個目のゲートが見えてきた。


 車は無事に1個目のゲートを通過した。


 1個目のゲートを通過したところで、プロメが救急車のサイレンを止めた。


「もう大丈夫です」


 俺たちはやっと緊張から解放された。

 

 運転席とのカーテンを開けると、フロントガラスの向こうに外の景色が見えた。


 道の両側に白い壁のアパートみたいな建物が並んでいる。


「ゲートの中にあるってことは、軍人の宿舎か何かか?」


「そうだ。ここの地上は軍の基地だな。地上には、小さめだが滑走路もあって空軍が訓練に使ってる」


「空軍なんて必要なのか?」


 敵国は隣の星ナーヌだったはずだ。


「敵はナーヌだが、惑星内でもクーデターとか反政府ゲリラとか色々あったんだよ」


「ゲリラねえ・・・」


 救急車は宿舎の区画を右に左にいくつかの角を曲がり、2個目のゲートに辿り着いた。

 ゲートを通過するときはサイレンを鳴らして通過した。


「何が起こるか分からないですから」


 プロメは用心深く言った。前回の失敗を気にしているのかもしれない。


 ゲートの先の軍の敷地は天井も高く、だだっ広い空間になっていた。ランニングするには些か広すぎる土地に、人工の丘や川が作られていた。


「ここは演習場だな」

「少佐もここで訓練したのか?」

「あたしは教える立場なんだ。けっこう偉いんだぞ!」

「マジかよ」

「上から6番目だって言っただろ?」

「そうだっけ・・・」



 車は敷地の中をしばらく走った。敷地の所々には、高い天井まで伸びる、茶色くて細いビルが何本か建っていた。


「あのビルの中には、でっかいエレベーターがあるんだ」

「エレベーター?」

「戦車も戦闘機も乗れるエレベーターだ」

「そりゃでかそうだな」


 車はそのビルの一つに近づいて行った。

 ビルには巨大な黒い扉があり、救急車が近づくとその巨大な扉が開いた。


 ビルの中に入ると、内側にもう一つドアがあった。大きなエレベーターの銀色のドアだ。

 ドアの横にトラン語の数字が表示されていて、それがチカチカと変わっていた。


「ガシューン、ゴゴゴゴゴ」

 大きな音をさせながらエレベーターのドアが開いた。

 車はゆっくりとその中に入った。


 エレベーターはエレベーターに見えないほど巨大だった。白い壁に囲まれた空間は、救急車が何台も入る大きさで、大きな戦車でも4台ぐらい余裕で入りそうだ。


 救急車を乗せると大きなドアが閉まり、エレベーターは下降を始めた。




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