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白衣

「ハイ、チーズ」



「ガハッ!ゴホゴホ!何だ、ズギャンってこんなにキツイのか?」


 スキャンの瞬間、体に電気が走ったような痛みを覚えた、と同時に喉に痛みを覚えた俺は咳きこみ、操作したマリーに文句を言った。


 マリーを見ると、床に倒れ込み、汗だくでゼーゼーと息をしていた。


「おい、どうした!」

「やあトミー、久しぶりだなあ、子供は大きくなったぞ」

「子供?」


 マリーの指さすほうを見ると、赤ん坊がハイハイしていた。


「すまない、軍曹」


 後ろを振り向くと、ボロボロの服を着た少佐とプロメが立っていた。


「すみません、失敗しました」ボロボロの汚れた服を着たプロメが言った。「できれば、服をお願いします」


 俺は素っ裸だった。

「服か・・・」

 今スキャンしようと脱いだ服は、そこには無かった。

「とりあえず、私の白衣でも着てろ」

 マリーがクローゼットを開けた。俺はマリーの白衣を裸の上に羽織って前のボタンを留めた。


「何があった?」

「トミー、すまないがテルルともう一人の私を頼む。さすがに限界だ」


 俺は1回失敗して新しく作られたらしい。マリーが恐怖と闘って俺を再生させてくれたらしい。


「よし、俺がやる。指示してくれ」


 俺はマリーの指示に従ってタッチパネルを操作した。マリーはかなり離れた位置から指示を出した。近寄るのも今はキツイらしい。


 テルルとマリーが復活した。テルルもマリーも激しく咳き込んだ。プロメが冷蔵庫から水を出し、みんなに配ってくれた。


「2人も服を着てくれ、私のでいいか?」マリーは少し落ち着いたようだった。「3人はカロリーの摂取、2人はシャワーと着替え、それから食事だな」


「上の食堂でゆっくり食べていてください。シャワーを浴びてから向かいます」プロメが言った。「それと、入館許可です」

 プロメが3人分の入館許可をくれた。


「モコソが無いので、ファミレスは使えません。上の食堂なら問題ありません」

 ラウンジはボタンを押したら出てくる。イラスト付きだ。


「後で私が新しいモコソを作りますので、少し我慢してください」


「留守番のマリーは、ほっといていいのか?」

「私のことは気にするな、早く行け」

「すまない」

 マリーは恐怖と闘ったばっかりで少しげっそりしているように見えた。


 子供は何か月ぐらいだろうか、かなり大きくなっていた。育てた経験がないから何も分からん。


 俺たち3人はラウンジに上がり、ボタンを押して飯を食った。38時間の断食はキツかったが、スキャンの後の出来事のほうが強烈で、空腹なはずなのに、どうも飯が喉を通らなかった。


「何があったんだろうか」

「さあな、じきに分かるさ」

「モコソ作ってもらったら、トミは真っ先に服を作ってね」

「セクシーだろ?」

「バカ!」

 全裸に白衣は少し寒かった。

「下のフロアで着替えればいいじゃないか」マリーが最高のアドバイスをくれた。

「そうだったな・・・」


 俺は全裸に白衣でショッピングフロアの洋服売り場に向かった。

 行ってみると、売り場に一瞬人影が見えた。不審に思って人影が見えたほうに、いや、俺のほうが不審者の格好なのだが、行ってみると、棚の陰にロボットがいた。服を補充するロボットだった。

 なるほどな、こうやって商品を補充してるのか、人が来ると隠れるらしい。


 俺は適当な服に着替え、出口で清算した。いや、無料なのだが、持ち出しの手続きはする。


 戻ってみると、少佐とプロメが合流していた。プロメが食堂のボロンで俺たちのモコソを作っているところだった。


 プロメは3人分のモコソを作って俺たちに配ってくれた。前のと同じ物だった。


 全員が席に着くと、少佐とプロメが事情を話してくれた。



 3人は双子から4つ目の街で警察に追われた話を聞いた。


「みんなを吹っ飛ばしたのは、しかたなかったんだよ」

「吹っ飛ばしたのではなく、原子まで分解しました」

「どっちだって大した変わりはないじゃんか」

「こういうことは正確に・・・」

「まあまあ、喧嘩すんな」


「でも、仕方なかったんです。あのまま捕まってしまったら、そのほうが何というか・・・」

「後味が悪いんだよ。軍曹もマリーもテルルも、DNAいじられて人格が変わってどこかで生きてるってほうがさ」

「そりゃ分かったって」

「気にしなくていい」

「私もこれで良かったと思ってるわよ。それで、その後どうしたの?」


「みんなを吹っ飛ばした後、俺たちのいたビルに下から警察のロボが登ってきてたからさ、プロメと2人で空気ダクトに入ってさ、そのまま地上まで逃げた」


「あの辺の地上って、工業地帯じゃなかった?」

「そうだね。もう何も作ってないけど、その真っ暗な工場に逃げ込んだ」


「外はパトロールの車だらけで、しばらくそこに隠れていました。マリーさんに連絡して、必ず帰るから待っててくださいって言って。工場には小さなボロンがありましたので、それで食料を少しづつ作って潜伏していました」

「どのぐらい隠れてたんだ?」


「4ナトリほどです」

「そんなにか!」マリーが驚いた。

「4ナトリってどのぐらいなんだ?」

「地球時間にすると、40日近くです」

「おいおい・・・」


「窓の外にさ、赤いライトがチカチカしてるのが見えるんだよ。でもな、工場の敷地には入ってこないってのは知ってたからな」

「じっとしていれば、いつかは居なくなるっていうのは分かっていましたから」

「それで?」


「しばらくして外のパトロールが明らかに減ってきたから、少しずつ工場を移ってさ」

「道路は極力使わずに、隠れながらここのゲートまで辿り着きました」

「警察は隣りの街まで逃げれば追ってこないはずなんだけどさ」

「ですが、街が変わってもパトロールの車は多いままでした。私たち2人は全ての警察に写真付きで情報が流されているのかもしれません」

「速度取り締まりの自動機械に撮られた写真だな」


「私たちがホッと出来たのはここのゲートをくぐってからです。ここは軍の管轄なので、ここに警察のパトロールは来ません」

「歩いてここまで戻ってきたのか・・・」



 2人は長い逃亡生活をしたらしい。野山や岩山や、森の中を抜けて歩いてここまで辿り着いたらしい。食べ物もギリギリだったのだろう、顔も少し痩せている。


「とりあえず、食べましょう!」


 テルルが元気を出そうと大きな声で言った。


「いっぱい食べて、ゆっくり休んで、それからにしましょう!」



 

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