オービス
俺たちは車の中で食事をし、仮眠とは言えないほど長く眠り、少佐とプロメは運転を何回か変わった。何かが起こったら困るということで、2人は他のメンバーにハンドルは握らせなかった。
4つ目の街を通過中に自動速度取り締まり機が光った。
軍用車だし、撮られた写真は人がチェックしないといけないから、おそらく大丈夫だろうと軍曹が言った。
しばらく走っていると、後ろからサイレンを鳴らした警察車両が来た。パトロールの青と白と黒のカラーリングの車の運転席には、同じカラーリングのロボットが見えた。
白い顔に丸いレンズの目、ご丁寧に帽子まで被っている。
「変なのが来たぜ」
「まずいな・・・プロメ、どうする?」少佐が助手席のプロメに指示を仰いだ。
「さっきのオービスの写真は人間がチェックする決まりのはずです。ということは、ここの所轄には起きて職務をこなしている人間がいます」
「それで?」
「起きている管理者は全員が女性です」
「だから?」
「女性の警察官で、仮想空間の誘惑に負けずに、真面目に働いている人は、危険です」
「なんで?」
「責任感と正義感で生きてるからです」
「どういうこった」
「傲慢で融通が利かず、押しつけがましく、あきらめが悪く、しつこい。私が1番キライなタイプです」
「それはいいけど、どうする?」
「次の街まで逃げましょう」
少佐がアクセルをフルで踏み込んだ。車はすごい勢いで加速した。
「さっきの撮られた写真の問題点は、おそらく運転席のストルンと私が写っていたことです。肉体がバレました」
パトロール車両はスピードを出して追ってきた。しばらくすると2台になり3台になった。
「増えてるぜ」俺は後部ガラスの向こうを見ながら言った。
「前にもだ!」
道の先に数台の車両を並べたバリケードが見えた。慌てて車は小さな側道から一般道へ下りた。バイパスを降りるとそこにも2台の警察車両が道を塞いでいた。ガガガッ!少佐はその車両の隙間を車体を接触させながらすり抜けた。
少佐は細い道を右に左に逃げ回った。街の中をぐるぐると走り、警察車両を振り切っていく。
「これじゃ次の街まで行けないぞ」マリーが揺れに耐えながら言った。
「武器とか無いのかよ」
「武器を使うとな、向こうも使うぜ軍曹!」
「頼むぜ軍人さんよ」
「お前もな!」
「・・・」
車は細い道を抜け、大きな通りに出た。左右に警察車両は見えない。
「右へ!」プロメが進む方向を支持する。「全ての警察車両の位置の特定完了」
プロメの大きな帽子のモコソからは小さなアンテナが出ている。そしてモコソのゴーグル一面に何かが表示されているのが後ろからも見える。
プロメの出す指示に従って少佐がキキキーとタイヤを鳴らしながら大きなジープを操っている。
「これ捕まったらどうなるんだ?」
「プロメリの体に逆戻りよ」
「金属の小さい体か」
「DNAも強く変更されるな、犯罪者だからな」
「マジか」
「まじよ!」
「左へ!」
プロメが少佐に指示を出す。遠くの道が封鎖されているのが見えた。聞こえるサイレンがどんどん増えていっている気がする。
「逃げ込める施設は無いのか?」マリーが揺れに耐えながら叫ぶ。
「テルルがヤバイぜ」
俺は車の壁につかまりながらテルルの肩を強く抱き、テルルの体の揺れを抑えていた。シートベルトが俺たちが転げ落ちるのを何とか防いでいる。
かなり長時間のカーチェイスでテルルを支える俺の手も限界が近い。
「キャー!」
叫ぶのをずっとガマンしていたテルルが強い揺れに悲鳴を上げ始めた。
車はプロメの指示に従って大きい道、細い道と追跡をかわしている。
細い道から出ると大きな道にバリケードが張られていた。とっさに別の細い道に入る。
細い道は2台の清掃車によって完全に塞がれていた。慌てて少佐が車をバックさせる。「ガツン!」車が何かにぶつかった。後ろの道を清掃車が塞いでいた。
前にも後ろにも清掃車、その向こうに警察車両が集まってくるのが見える。道は狭すぎて大きなジープのドアが開かない。
「どうする少佐!」マリーが叫んだ。
テルルはフラフラ、俺も汗だくでかなりヤバイ。
「みなさん、すいません」
プロメがシートベルトを外しながら後ろを見て言った。
運転席の上部がバカン!と音を立てて開いた。少佐とプロメが立ち上がり、そこから車の外へ出た。
「俺たちはどうする!?」
その質問に返答はなく、ボンネットの上に立った2人の大きな帽子が変形した。後部からアームが2本出て脇の下に回り、帽子から4枚の大きなプロペラが出て、ブオーンという音とともに、すごい勢いで回転し、二人の体が浮いた。
2人は上空に消えた。




