チーズ
ドラマを見たりウトウトしたりしていると、長い38時間が経った。
俺たちは腹ペコでマリーのラボに向かった。
マリーは廊下で俺たちを待っていて、双子もすでに来ていた。
スキャンは完全に素っ裸でするという事で、俺は部屋の外で女性陣が終わるのをしばらく待つことになった。
女性陣が終わると、交代で俺が部屋の中に入った。そしてイスに座るマリーに言われるがままに全裸になった。
子供のベビーベッドの横には、もう一人のマリーが立って俺を見ていた。
「育児ノイローゼじゃなくて、欲求不満でお前を作るかもな」
「おいおい、どこを見てる」
「反応してるぞ?」
「してねえよ!」
「そうか?」
「早くやってくれ!」
俺はマリーに言われるまま、カプセルの丸い台に立った。人を作るときにも使う特殊なボロンだ。なんとかってスキャン装置も付いてるってことだ。今はガラスも何もなく、床に丸い台と、天井から丸いフタがぶら下がっている。
「ハイ、チーズ」
ピリッと体に電流が走った。それだけだった。
「今ので終わりか?」
「そうだ、終わりだ」マリーは椅子から立ち上がった。「カロリーを摂取しに行くぞ、服を着ろ」
「腹減ったなー」
「子供を頼む」
ベビーベッドの横のマリーは軽く手を挙げただけだった。
ファミレスに行き、みんなで暖かい食事をした。
「それで、食料はどのぐらい持って行くんだ?」
俺はテルルとの旅の準備を思い出した。あの時は2人で2か月分ぐらいの食料を車に詰め込んだ。今度は5人だ。
「今度はそんなに多くなくていいみたいよ」テルルが答えた。
「そうだな・・・」ストルン少佐が天井を見ながら言った。
みんながしばらく待っていると、プロメが答えてくれた。
「6食で足りると思いますが、もしもの時のために8食にしましょう」
「そんなに近いのか?」
「近くはないが、速い」
「速い乗り物か」
「その駅まで行く」
「列車か」
「そこまでは車だ」
「どっちの車で行く?」
入口の駐車場にはテルルと俺が旅した大きな車と、双子の乗ってきた大きなジープが停まっている。あとマリーの小さな車も。
「軍用車に決まってるだろうが、制限速度なんて守っていられるか!」
俺は2人が現れた時の4輪ドリフトを思い出した。
「安全運転で頼む・・・」
「軍曹、モコソを全部貸せ」少佐が俺のほうに手を出した。
俺はゴーグルを外した。ゴーグルは長方形の板にヒュンと戻った。ポケットのサブコンと合体させ、まとめて少佐に渡した。
「お二人も貸してください」プロメがテルルとマリーに言った。
プロメは自分の頭の大きな帽子に手を突っ込み、中から何かを取り出した。丸くて平べったい、茶色いコースターに見える。しかしピカピカとオレンジの光が点滅している。
プロメはそれを、俺の板状にしたモコソの上に置いた。するとオレンジの光が緑に変わった。テルルとマリーのモコソにも同じ作業をした。
「何なんだ?」俺は聞いてみた。
「おめでとう軍曹、これで軍隊の仲間入りだ!」
「何?」
「3人は軍人という事にしました。これから軍の施設に入りますので」プロメが詳しい説明をしてくれた。
「そんなこと、簡単に出来るのか?」
「簡単なわけないだろうが!」
「天才か・・・」
「トミサワさんは、トミ・サワという名前になってますので、覚えていてください」
「トラン人ってことか」
「変な名前だな!」少佐が笑った。
食事をした後、俺たちはラウンジに行き、8食分の食料をバッグに詰め込んだ。8食でも5人分だとけっこうな量になった。
食料とちょっとした私物を軍用ジープに詰め込むと、それで準備完了になった。
留守番のマリーが子供を抱きながら入口の自動ドアまで来て見送ってくれた。
「よくわからんが、宇宙に行ってくる。子供を頼む」
「まかせろ、みんなも気を付けてな」
「いってきます」
俺たちは留守番のマリーに別れを告げた。
自動ドアがガラガラと音を立てて閉まった。




