天井
俺はテルルとマリーと、眠る双子を見守りながら幸せな日々を送っていた。
その時俺のベッドの横にはテルルがいて、2人で天井を見ていた。
テルルは今まで俺に、トランという星の歴史をゆっくりと話してくれた。
トランの人類が歩んだ道、人類の進化の道、前に進むからにはゴールがある。これ以上進めなくなる場所がある。
それがゴールなのか、ハズレの行き止まりなのか。クリアなのかゲームオーバーなのか。
進む道の中で発明された3Dプリンター、何でも作れるボロン。まったく同じ物を作れるボロン。
「なあ」
「なに?」
「俺もコピーなんだろ?」
少しの間があった。でもテルルは起き上がって、コクリと頷いた。
「怒る?」
「いや・・・でも・・・」
「あなたは確かにコピーして作られた。そして作ったのは私たち」
「そうか・・・」
「それであなたが不快な思いをするだろうってことは、私たちにも予想できた」
「俺は、不快なんだろうか・・・まだ少し混乱してる」
「でもね、地球にいるオリジナルと、私の前にいるあなたは、どっちが偽物とかってことじゃないの。両方本物なのよ、体を構成する元素一粒までね」
「地球にも俺がいて、今も生きてるって事か」
「そうね、普通に生きてるはず」
「普通に生きてる・・・」
「あなたをスキャンした瞬間、少しピリッとしたかもしれないけど、それだけね。あなたは山を登ってたんだっけ?」
「そうだ。秋の山を登って、仕事で写真を撮ってた」
「地球のあなたは、そのまま写真を撮って、山を下りて、普通に暮らしてるはず」
「そうか・・・」
俺は、地球の俺が何も知らず、スキャンされたともコピーされたとも知らず、何事も無かったように平凡な日々を生きてることを想像した。
「なあ、テルル」
「はい」
「俺はこの星に来て、テルルと会って、テルルと車で旅をして、この星の地球には無い珍しいものを色々見た」
「そうね」
「地球と同じ物も多かったけど、同じだからこそびっくりした」
「私たちも地球のテレビを見た時、同じ過ぎてびっくりしたわ」
「そしてここでマリーとも出会って、ここの生活も嫌いじゃない」
「よかった」
「最近じゃストルン少佐とプロメも来て、ここも賑やかになって・・・俺はマリーと子供まで作った・・・」
「元気に生まれるといいわね」
「俺はな、ここに来てからの毎日が、すごく楽しかったんだ」
「私も楽しかった」
「地球の俺と、こっちの俺と、どっちが楽しい人生を送ってるかって言ったら、断然こっちだと思う」
「本当?」
「地球の俺に、交代しろって言われたら、絶対に断るぜ。こんな楽しい出来事、オリジナルになんか、絶対に譲ってやらんって思う」
「そこまで言う?」
「絶対にイヤだね。それにテルルも譲ってやらん」
「俺の所有物みたいな言い方、しないでよ、ね!」テルルが俺の脇腹にパンチを繰り出した。
「イテテ」
テルルが隣で笑っている。声を出して笑っている。
俺も笑った。声を出して笑った。2人して笑った。
俺は心の底から笑った。人生を楽しんで、心の底から笑った。
俺は、今この人生に幸せを感じてる。
それがすべてだ。それでいいと思った。
俺は、愛するテルルを優しく抱きしめた。




