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プロメリ

「コピーガードの為に体を流れるようになった重金属の合金の名前を、プロメリって言うんだけど、これは作ったプロメの名前からね。プロメリは赤血球よりもずっと小さい状態で体内を循環するようになったの」

「体は大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。プロメが作ったんだもの」

「天才だもんな」


「でね、今までの話で病気は無くなったって言ったでしょ?」

「ああ、もう病院には誰も来なくなったんだろ?」

「いいえ、来る人はいるわよ」

「誰だ?」


「怪我人よ。切り傷、捻挫、骨折、ひどいのは頸椎損傷けいついそんしょうとかね。外科ってやつよね」

「健康でも無理すりゃ骨は折れるか」


「骨折って痛いわよね、絶対に骨折したくないわよね」

「そりゃ、誰だって痛いのはイヤだからな」

「大衆はね、わがままを言い出したのよ。骨折したくないって」

「そのプロメリって金属で可能なのか」


「プロメとマリーの2人で、骨を金属で強化する方法を考えちゃったのよ」

「2人掛かりなんだな」

「DNAにカルシウムよりプロメリを使って骨を作れって情報を書き込んだの」

「すごいな」


「体を流れるプロメリの量を増やして、それで骨のカルシウムのほとんどがプロメリに取って代わって、骨は強くなった」

「骨折しないのか」

「するにはするけど、なんていえばいいのかしら」

「何が?」


「高いビルから飛び降りたとして、今までは骨が折れて内臓も潰れたけど、それが、骨は折れないけど内臓は潰れる感じ」

「なるほど・・・」



「それでね、体に金属が多く流れるようになって、そこから一気に肉体改造は加速したのよ」

「あの体までか」

「そうね。モコソが体内に同化されて、あらゆる機械が体にリンクさせられるようになった。車もね」

「モコソゴーグル無しでも前は空中にアイコンが見えてたよな、あれって網膜に直接映し出してるってやつか?」

「いいえ、脳の視覚野に直接よ」

「脳・・・」


「脳って電気で動いてるでしょ」

「電気で動いてるのか?」

「そうよ。電気信号よ。だから赤血球よりも小さい金属を操って何でもできるのよ。天才2人が集まればね」

「マリーも天才だったのか」

「言わなかったっけ?」

「どうだったかな・・・」



「前に大衆の歴史を話したの覚えてる?」

「神アプリに大衆が動かされてってやつか?」

「経済を捨てたのは覚えてる?」

「もちろん覚えてる。何でもシェアするってやつだろ?」


「人が経済を捨てて労働しなくなったのはこのタイミングね」

「労働しなくなって、みんな何してる?」


「ゲームよ」

「ゲーム?」

「地球でも、仮想現実とかVRとか始まってるわね」

「聞いたことあるな、でっかいゴーグルかぶるやつだ」

「そしてモコソと同化した人類に、ゴーグルは要らない」

「そりゃ重くなくていい」


「フルダイブってやつよ」

「わからん」


「仮想空間に入って楽しい幸せな世界に没頭して、ずっとずっと仮想空間で遊びっぱなし」

「こっちの世界に戻ってこなくなったのか」

「私も少しだけその世界に入ったことあるけど、まあ、なんというか・・・人としてダメになるわね」

「どんな世界なんだ・・・」


「仮想現実の世界に、さらに仮想世界への扉があって、その人の趣味趣向に合わせて何パターンも世界があるのよ」

「それって誰が作ってるんだ、労働してる人はいないんだろ?」


「その仮想空間を作ったのは、ジルコンよ」

「ジルコンってアプリだろ?」

「そうよ。世界最大のね」

「あなたの好きな世界を望むままってやつか。それで戻ってこなくなったのか」



「でもね、戻ってこないといけないのよ。トイレとか食事とか、お風呂とか」

「それがあったか・・・もしかして、それも嫌だって言いだしたのか?」


「彼ら大衆はそこまでのおバカさんではなかったみたいで、理由を思いついた」

「理由?」


「私たちは死が怖い。もう肉体は要らないから、金属だけになって死なない体にしてくれってね」

「本当はトイレに行きたくないだけ?」

「どうなのかしらね」


「それであの体になったのか」

「あの体は電気だけで生きていける。環境に最も優しい。全員金属の体にせよって命令だった」

「取って付けたような正義だな」


「あの体は、仮想空間だと自由もある程度効くんだけど、現実空間だと制約を多く受けるの」

「制約?」

「法律違反は全て出来なくなるし、感情も抑えられてしまう」


「あの禁止されてるパネル操作も出来ないのか」

「あれは、DNAに書き込まれた動物的本能ね」

「動物的本能?」


「あの柄と色を見ると動物的本能がものすごい勢いで反応するの」

「怖いのか?」

「絶対に触るな、これ以上近づくなって体が硬直する」

「マリーにも解除できないのか?」

「天才が絶対に解除できないセキュリティーとして作ったのよ」

「なるほどな」



「世界の全員を機械の体に変えて、その時はもう労働を強いるのは悪ってなってたから、重要施設の管理AIを管理する人を募集した。その管理人に立候補したのは女性だけだった」

「女性だけって、何でだ?」


「男の人って心が弱いじゃない、それを暴力とか権力とか、いろいろなものでガチガチに武装して生きてるじゃない」

「何とも言えんが」

「DNAの改変で暴力性とか欲望とか、男の人のほうが強めに改変を受けたのよね。それで、男の人は心の力を失ったのよ」

「心の力・・・」



「志願者は女性だけだったけど、責任感のある女性はまだ多くいて、交代勤務で1カドリニごとに交代する決まりだったけど」

「カドリニって前にも聞いたな」

「1カドリニは地球で約5年ね。でも1カドリニが経っても2カドリになっても、誰も仮想世界から戻ってこなかった」


「どのぐらいの間、留守番してたんだ?」


「もうすぐ23カドリニになるわね」


「それって・・・」


「女の人に年齢を聞くなバカーーーーー」



 

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