私です
俺たちは最上階のラウンジに上がった。ストルン少佐の命令だ。
ラウンジで食事をしながら話すことにした。
「太陽を見るのは久しぶりなんだ、ずっと夜の側にいたからな」
ストルン少佐はピラフのようなものを食べながらそう言った。
窓の外を見ると、相変わらず太陽は低い位置にあり、空は夕焼けに染まっている。
空を赤く染めるキリアという名の太陽。地球の太陽の10分の1の質量なんだそうだ。それで赤が強いらしい。
自転しない星トラン。潮汐ロックだっけ、地球の月と同じ理由で同じ面をずっと太陽に向けている。太陽は常にそこにあり、移動はしない。夜は来ない。
地球でも白夜ってのがあるけどな、あれは太陽が移動するな。
「プロメって言葉は、前にもどこかで聞いた気がする」
「プロメは惑星直列ね。潮汐力で大きな嵐が起こるって前に話したわね」
テルルとの話で出てきた単語らしい。すっかり忘れている。
「嵐って名前だ、かっこいいよな。ちなみにストルンは大波って意味だ」ストルン少佐が説明した。
「少佐、夜の側ってのはどうなってるんだ?」
「どうってのは?」
「雪がすごいのか?」
「いや、場所によってだな。一番寒い所は乾燥していて雪も降らない」
「昼側から周ってくる雲が夜の側に雪を降らせますが、雪を落とした後は乾燥した空気が夜側を抜けて昼側まで戻ります」
プロメが説明してくれた。プロメはストルン少佐よりもすごく大人しい性格みたいだ。
「昼側でも場所によっては、夜側の空気の影響ですごく寒い場所がありますね」
「夜の側にも人が住んでるのか?」
「そりゃそうだ。工業地帯や軍事施設は、夜の側の地上に作ることが多い。住居や街は地下だな。それに地上の山の上には、天体観測の大きな施設もたくさんある」
ストルン少佐がプロメを指さして言った。
「私がいた所は天文学の研究所で、この星で一番大きな施設でした。そこの維持管理をして起きてたんです」
起きてたってどういうことだ?
「私は軍事施設だな。防衛衛星の稼働状況は私がチェックしていたんだ。壊れることなんてないけどな。プロメはここに来る途中で拾って来たんだ」
「防衛衛星って、今でもミサイルは隣のナーヌから飛んでくるのか?」
「いや、ぜんぜん飛んでこない。つまらない仕事だ」
2人は、タイプは違うがテルルやマリーに負けず劣らず美人だった。美人というよりカワイイ感じだ。
同じような顔なのだが、プロメは伏し目がちで儚さがある。ストルン少佐は目がクリっとしていて愛嬌がある。
プロメはおしとやかな雰囲気だけど痩せてはいない。よく見るとグラマラスだ。
ストルン少佐はバンキュッバン!みたいな生命力で満ち溢れていた。
2人の顔や雰囲気は全然違うが、双子ってことは2卵生なのかもしれない。美人姉妹だ。
「なんだか、この星は美人ばっかりだな」
「なんだ、美人はキライか?」
マリーが大きなステーキを食べながら言った。
「そんなことは無いが」
「話した通り、DNAで顔の作りは大きく変えられるんだよ」
「いじってるのかよ!」
「地球の整形手術とは違うぞ、生まれた時からこの顔だとDNAを書き換えてあるんだ」
「それって違うのか?」
「この顔が、ちゃんと子供に遺伝する」
「すごいな・・・」
テルルは親子丼の味のグラタンみたいな見た目の食べ物を食べていた。初めてテルルに会った時もこれを食べていた。好物らしい。
「DNA技術の発達で、子供のDNAも調整して生まれるようになったの。さらに男女平等の考え方で、女性だけ出産という苦しみを味わうのは不公平だってなったのよ。そして出産が無くなったの。子供は培養液で作るのね。そして、女性だけの生理も不公平だってなって、女性の子宮は機能しない臓器になったの。これも法律で薬を飲まされた」
「それで子宮を取り戻したのか」
「私はいろいろと裏技を使ってな、子宮があるときの体のデータを残した。セーブポイントってやつだ」
「セーブポイント?」
「プロメの作った機械だ。プロメは天才科学者なんだよ」
「そんなことないです」プロメは少し顔が赤くなった。
「2人も取り戻すのか?」
「私たち2人も子供を産める体を取り戻す予定ですが、私はまだ子供を作るつもりはありません」
「私はガンガン子供を産むよ!」少佐が両拳を胸の前で合わせた。「でもな、トミー軍曹とはゴメンだな!」
「俺だってゴメンだぜ」
俺が全員に子種を提供するわけではないらしい。
「それで、世界最大のボロンを動かす人ってのが来ると聞いてたんだが、どっちだ?」
「私です」
天才科学者のプロメが小さく手を挙げた。




