表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/90

データ収集

 富沢は金属でできた四角い板を取った。板は20センチほどの正方形をしている。


 富沢はその20センチほどの正方形の板を半分に割った。「パキン」と小さな音がして板は真ん中で割れた。

 そしてその片方をメガネをかけるように両目の前に持ち上げた。


 すると長方形に割られた金属はグニっと曲がり、富沢の目を覆った。

 何か古い映画で見たサイボーグのようだ。


 金属は半透明に変化し、サングラスのようになっている。富沢の目がうっすらと見える。そして富沢の目の前にチカチカと何かが表示されているのが見える。


「モード、日本語、ディスプレイ、サブコン、空間表示、開始」


 富沢がそう言うと、手の中の半分に割られた金属の片割れがピピピッと鳴った。

 富沢はそれを机の真ん中に置いた。


 すると机の中央に置いた板の上に、画面が現れた。

 パソコンのディスプレイのような実態を持った画面に見える。だが画面を囲む枠がない。足もない。表示する画面だけだ。それが空中に浮いている。

 試しに触ってみると、指は何にも触れなかった。


「うお、マジか!スゲーなこれ」

「SF映画みたいですねー」

「え、SF映画だと、も、もっと透き通ってるし、ビーって緑のレーザーみたいなのが出てたりしないかな」

「こんな技術、どこにもないよ。何かのトリックだろ?」


 社長が疑った目をして富沢を見た。


「このディスプレイに映ってるのって、何ですか? ウインドウがチカチカと開いたり閉じたりしてますけど、データ収集?」


 俺は聞いてみた。画面にはパソコンのウインドウがチカチカと高速で現れては消え、現れては消えを繰り返していた。


「そう、今まさにデータを収集してるらしい」富沢が言った。「彼らは40年前までのことしか知らなかったから。正確には3年前からのテレビは見ていたけど・・・正確じゃないな、何て言えばいいんだろう」


「全然わからない」社長が言う。

「なるほどわからん、なるほどわからん」モーリーが笑いながら言った。


 富沢は、データを収集しているらしいと言った。

 ということは、データを収集しているのは富沢ではない?ならば誰が収集しているんだ。


 彼らは40年前までのことしか知らないとも言った。彼ら? 40年間眠っていた誰か? そして3年前からテレビは見ていたと言ったか? 3年前にテレビが見れるようになったということは牢獄に40年も入っていた囚人か? 全然わからない。何も予測できない。

 脳が疲れてきたのか眠いだけなのか・・・もうすぐ空が明るくなってくるころだろうが、空は見えない。


「とりあえず、最低限の説明は済んだ」富沢が言った。


「何も説明になってないですよ」俺は笑いながら言った。


「もういいから早くネタばらししてくれよ」藤野がイライラしながら言った。


「すまないね、じゃあ登場してもらおうか」富沢が言った。「おっとその前に」


「まだ何かあんのかよ」藤野がイライラして言う。


「僕の行っていた場所は、キリアのトランという星だ。たぶん3年程滞在した。時間の単位が違うから曖昧なんだがね。そしてキリア星系、キリアは太陽という意味で、地球ではトラピストワンという名前で呼ばれているらしい」


「ほ、星?」


 モーリーが大きな声を出した。


「地球ではトラピストワンと呼ばれている星、恒星、太陽、キリア。そしてそこを回る惑星、トラン。トランは地球という意味になるな」富沢が説明した。「キリアとトランを地球人が発見したって情報はさっき知ったんだ。このデータ収集でね。トラン人は自分の星をトランと呼ぶから、意味は地球だ」


その時。


「そうね、トランという言葉の使われ方は、大地、地面、大陸。いろいろな意味があるけれど、地球という意味で合っていると思うわ」


 富沢の後ろに背の高いメガネの美人が立っていた。


 髪は夜の闇に光るほど明るい赤。赤くて長い髪が腰まである。体は細く、白っぽいボディースーツのようなものの上に黒い革ジャンのようなものを着ていた。


「誰?」


 みんなが驚いて彼女を見た。


「トラン人。」富沢がちょっと笑いながら言った。


「こ、コスプレイヤーにしか見えませんが」モーリーが言った。


 確かに地球人にしか見えない。

 髪の毛の赤い色だけ違和感がある。自ら光っているように見える燃えるような赤。それに生え際に違和感がない。

 染めるだけでこんなに自然になるだろうか。


「私の名前はテルル・タンタル。テルルでいいわ」彼女は言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ