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食料

 テルルが消えてしまうと一人になった。


 とりあえずトイレに行った。トイレは広かったが、昭和なトイレだった。

 小便器が並ぶそのタイル張りの空間は、小学校のトイレを思い出させた。そして並んだ個室の中は、和式便所だった。俺は昭和生まれだ。問題ない。


 用を済ませて戻った俺は、自販機を見て回った。そして気になる絵の描かれたボタンをいくつか押し、出てきた食べ物を試食した。


 中に、魚の絵の描かれている機械があった。試しにひとつ押してみると、焼き魚が出てきた。この星にも魚がいるらしい。サンマとアジの中間みたいな見た目で、味はサンマだった。


 ステーキの絵の機械もあった。ボタンを押してみると、焼いたサイコロステーキが出てきたが、何の動物か分からない。少し迷ったがひとつ食べてみた。

 味付けは焼き肉のたれで、肉は鶏肉のような味がした。


 野菜の絵のボタンを押してみると、緑の新鮮な野菜のサラダが出てきた。食べてみると少し甘くて、何かのハーブのような癖のある匂いがした。


 いろいろ機械の絵を見ていくと、カテゴリー分けされて設置されているようだった。メインディッシュ、サラダ、スープ、デザート、それに保存食か何か、パッケージに入った食べ物、あきらかに子供向けの絵が描かれたコーナー、これは菓子だろう。


 コーヒーが飲みたくて探したら、それっぽい機械もあった。押してみると紅茶っぽい匂いの黒い液体が出てきた。これはこれで悪くなかった。


 この星の食べ物は、地球とあまり違わないらしい。それはそれで不思議な気もしたが、食べられないよりはいい。ありがたいと思わなければ。


 しかし、これだけの食事する設備があって、これだけのテーブルが並んでいるということは、それなりの人口があるはずだ。この機械の中にセットされている食材を取ってくる人だっているだろうし、料理は機械まかせなのかもしれないが、このビルに誰もいないってのは気になる。


 それに、いろいろと話した気はするが、大事なことは何も聞けていない気もする。何を聞けばいいんだろうか。


 新しい単語がたくさん出てきた。トラン、トランはこの星だ。太陽は何だっけ、キリアだ。キリア系、第六惑星って言ってた。ということは、内側にまだ5個の惑星があるってことだろ?それなのに主星に近ければ自転しない、潮汐ロックだって言ってた。どういうことだ?さっぱり分からない。


 そして俺は、地球に帰れるんだろうか。


 別に待ってる人もいないし、美女と一緒だからいいか。そこだけは救われたな。気持ちの悪い宇宙人だったらどうなってたんだろうか。

 逃げ出してるね、きっと外に冒険に出てるね、アメリカ人みたいに。


 あと情報収集をするって言ってた機械、なんて名前だっけ。今の地球のデータを送ってくるとかなんとか。うーん・・・プラスチックみたいな・・・プラセオだっけ?

 でも今の地球のデータっていってもだ、光の速さで40年かかるから彼女は40年前のテレビを見てたんだろ?光の速さって超えられないんじゃなかったっけ・・・


 それに俺は40年かけてこの星に連れてこられたわけじゃないって事だろう。俺が40年かけてこの星まで来たのなら、テレビに映ってる番組も古くないはずだ。電波と同時に地球を出発するんだから、タイムラグは無いはずだ。


 なんだか訳が分からないな、何を聞いていいのかすら分からない。分からないことだらけだ。


 食べ物を色々食べたからか、それとも難しいことを考えたからか、少し眠くなってきた。


 ちょっとだけソファーで横になってみるか、そう思ってソファーに寝転がると、俺はそのままストンと眠りに落ちてしまった。





 


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