転生勇者と転生魔王
「あなた、どうしてココに、まさか後追い自殺なんかしたんじゃ無いでしょうね!?」
「ちょっとロザリー、声が大きいよ。
あと、自殺なんかしてないから」
突然の事でつい取り乱してしまった。
私としたことが、落ち着かないと、今はお客様の目もある、どこか落ち着ける場所にでも行こう。
「付いてきてカーティス」
私は少年の手を引き、ホールのベランダへと向かった。
ここなら人気も無い、しかしどこで話を聞かれるとも知れないし、念話の術式を発動しておこう。
「さあ話して貰うわよカーティス、ココにいる理由を」
「いや、まあ話すけどさ。
僕はちゃんと寿命で死んだよ70幾つだったか、その辺りはよく覚えて無いけど、あの時代なら大往生だね」
「まあ人間にしては長い方なのかしらね」
「でも、君の事が忘れられなくて、誰とも一緒にならなくてさ、後継者も育てずに死んじゃったから、神様に怒られちゃって」
恥ずかしいやら嬉しいやらで、自分の顔が赤くなっているであろうというのが、体温の上昇からも分かる。
私の事が忘れられなくて、か。
「そしたら、神様に言われたんだよ。
本来なら神の1柱として天界に迎えるつもりだったけど、あなたが生涯愛した人の近くに転生させるから、今度はちゃんと幸せに暮らして、子供を作りなさい。
アステリア領主の娘、アーティリアって女の子によろしく言っておいて、その子は、あなたの愛したロザリーだから。
って言われて」
「あいつ、個人情報をペラペラと」
前世のロザリーと、今世のアーティリア。
似ているところなど何一つ無い。
年齢はまあ当然違うわけなのだけど。
ロザリーは黒髪で、アーティリアは金髪。
血縁関係等ある筈も無く、顔も全く違う。
ロザリーの顔も整っていて美人の類いだったが、アーティリアは将来間違いなく絶世の美女になるだろう。
自分で言うとなんかナルシストみたいだけど、違うわ。
あくまで客観的に見てよ。
お父様とお母様の顔からそうなるだろうなあという、予想よ、予想。
それだけ違うのだ、確かに情報も無く私達が再会を果たすなんてありえないわよね。
「でも、僕は思うんだ、神様に教えられなくたって僕達は再会出来ただろうなって」
こういう事を平気で言うからほんと、こっちが恥ずかしくなってくる。
顔がニヤけそうだわ、ダメよ私、平常心よ平常心。
「そうかも知れないわね、元とは言え、魔王と勇者だしね」
なんて茶化してみたけど、案外彼の言う通りな気がするわ。
私達は生まれ変わったこの世界でも再会出来た。
今回は神様が関わったけど、もし今度死んでも、いえ、何回死んでも、私は彼を見つける事が出来る気がするわ。