第六話 隣のあの子は精霊使い②
「いけ、ドラゴンファング」篭手が巨大な竜の顔になり、腕が蛇のように伸びて赤城さんに襲いかかる。
「っ!?」
身体能力も高いらしく、先手をよけられる。
しかしドラゴンファングが向きを変え、彼女へ再び襲いかかる。
彼女の脚に炎が吹き出し、尋常ではないスピードで飛び始めた。
嚙みつこうとする竜の顔を蹴り上げる。
「すごいな。 あの捕まらない俊敏さ、まさにウサギちゃんだ」
どうやら、脚に精霊が宿った土を纏って、攻撃力と俊敏さを出しているようだ。
「このっ!」
地面からゴーレムを出して、応戦するがドラゴンの牙に虚しく粉々になった。
なら、まずはその脚を奪おうか。竜の色が水色に変わり、口から水を出して彼女の脚を濡らす。
「なっ!?」
纏った精霊が洗い流され、地面に無造作に落ちそうになる。
「おっと」地面すれすれで彼女を龍の口が咥えて、優しく地面に立たせる。
「はぁはぁ」と息切れする彼女は気丈に「情けでもかけたつもり?」と俺を睨む。
「赤城さん、これ以上は無駄だ」
「なによ?もう勝ったつもりでいるの?」
「もう見切っている」
彼女の瞳が大きく開き、頬に一筋の汗が流れる。
「君の今日のパンツはうさぎさんだ」彼女を指差し、勝利宣言。
「はっ!?」
スカートを咄嗟に両手で抑えて、顔を真っ赤にする。
「もう遅い!バカめ!動きやすいその格好が仇になったな、ガハハハ!!」
わーいわーいと両手を万歳して、ガニ股でステップを踏む。
「……このぉ!?もう許さない!本気でやってやるわよ!」
「やめときなよ、次は、かわいいうさぎちゃんをもらうぞ?」
「やれるもんなら、やってみなさいよ!」
巨大な狼が炎を纏って、地面から現れた。先ほどのゴーレム達とはこもった魔力量がケタ違いだ。
姿勢を低くした瞬間、俺に向かって猛突進した。
「いいね」
片手で上あごを抑えつけ、地面に押し倒す。
「ガッ!?グルルルッ!!」と抵抗して暴れるが、俺の腕は少しも動かない。
「それがどうしたっていうのよ!」
背後に突然、巨大な拳が隆起する。
これも彼女の本気の一撃だろう。
「ドラゴンキャノン展開」
もう片方の腕を竜の顔に変え、その口から大砲の筒が伸びる。
砲口から放たれるは、竜の力を圧縮したエネルギー弾。
拳は無残に吹き飛び、手首から先がなくなった。
「これで終わりだな」
狼の額にドラゴンキャノンを押し付け、撃ち放つ。
エネルギー弾は狼を引き裂き、赤城さんの横を抜けていった。
「ひっ!?」
一瞬、遅れて赤城さんが尻餅をついた。
「か、勝てない……」
勝機を見失った彼女は俺に背を向けて走り出す。
先程のスピードに比べれば、彼女の足の速さは普通の女子高生だ、追いつくのは簡単だ。
「終わりだな、さぁ約束のお楽しみタイムだ」
逃げる赤城さんの肩を掴み、近くにあった木に押し付ける。
「くっ離しなさいよっこのっ!」
虚しさを感じるほどの囁かな抵抗で俺の身体を何度も蹴る。
「さぁ、お楽しみだ」
ゆっくりスカートへ手を伸ばす。
「や、やめなさいよ?じょ、冗談でしょ?」
「赤木さんは俺がやめてと言ってやめたかい?」
スカートに手が触れる、内部へ侵入するまでもう少し。
「ひっ……い、嫌……」
抵抗が無意味とわかったのか、彼女は目を強く閉じる。
「なーんて、うっそ~~ん!」両手の先を頭の後頭部に乗せる。
手から離れた彼女はぺたんと地べたに尻をつく。
「えっ……?」と少し涙目になった彼女は俺を見上げる。
「おいおい、本気でパンツ取ると思った?んなわけないじゃーん!」
「……」彼女は目を大きくして、身体を震わせる。
「いやいや、ごめんごめん。君があんまりしつこいもんだから……赤城さん?」
彼女は俺を見ていない。俺の後ろを見ている。
しかも、すごく怯えている。一体何があるっていうんだ?
「なんだ……あれ?」
そこには白い服の女が浮いていた。
地面に両足は着いておらず、ロングスカートの裾が地面から30センチほど上でひらひらと泳いでいる。
顔は長く伸びた黒髪で見えない。顔はわからないが、あの細身でなんとなく女だと思った。
「に、逃げないと……」
腰を抜かしたのか、四つん這いで膝をすりながら動き始める。
「ちょっ何してんの赤城さん!?」
「いいから、貴方も早くここから逃げて! sheが……シーが来たのよ!?」
「シーってなんだ?あれの事か?」
このビビり様は相当やばい奴なのだろうか、シーの方を見ると牙を剥き出し威嚇している。
「なんだ、こいつ?」
瞬間移動、そうとしか思えないスピードで俺の目の前にシーが立っている。
そして、俺の顔を掴む。鎧越しからでも伝わる氷のような冷たい手だ。
「おいおい、チューでもしてくれるのかい?」
シーが不気味なうめき声を上げながら、顔を近づけてきた。
「ばかっ!何してんの!早くそいつから離れて!」
後ろで赤城さんが俺を必死になって怒鳴りつけてる、一体何が起きるっていうんだ?
「んっー!!」
シーの口に何かが吸い込まれ、俺の中から何かが失っていく。
『マスター、生命力が吸われています。即刻退避してください』
「わかってるけど、こいつおかしい。俺の攻撃が当たらない」
いくら殴ったり掴もうとしても、俺の攻撃はシーをすり抜けていく。まるで幻と戦ってるみたいだ。
『シーは特殊な霊体の様ですね。ゴーストドラゴンの起動を推奨します』
「わかった、ドラゴンズソードにゴーストドラゴンの力を付与して起動してくれ」
『了解、ゴーストドラゴンズソード抜剣』
腕の竜の口から、紫色の光がはしるロングソードが伸びる。
シーの股下から、ドラゴンズソードを振り上げ真っ二つにする。
斬られてもアレは悲鳴すら上げずに空中を漂う。
瞬間、シーが二体に増えた。
「なっ!?分身しただと?」
二体同時に俺に迫り来る、まるで息のあったコンビみたいだ。それも横からの一閃で胴体と下半身を切り離した。
そして、今度は四体に増えた。
「エイジ!そいつは切ったり、爆破するとバラバラになった身体ごとに再生するの、それ以上はダメ!」
「バカ野郎!なんで逃げなかった!」
なんていう事だ、ここでシーを引きつけて彼女を逃がす算段だったのに。
「こっちは腰がぬけて動けないの!」なんて逆ギレしてる。
あぁ、まずいな。これはまずい、彼女にシーが気づいた。
二体は俺と対峙し、残りの二体は赤城さんを見ている。
しかも、なんだ。普通分身したら一体一体は弱くなるはずなのに、こいつらそのままの強さでいるし。
『赤城ユイを助けたいのなら、彼女を救護しこの戦線を離脱しべきかと』
賛成だ、実に賛成だがとりあえずは目の前の四体を倒し、赤城さんへの道を切り開く。
「そこをどけぇええええ!!」
ゴーストドラゴンの力が付与されたファングが二体のシーを噛み砕く、そのまま赤城さんの方へ突進。
彼女を見つめて隙だらけのシー達の背中を切り裂いた。
「えっ?」目を閉じていた赤城さんは何が起きたのかわからない様子だ。
ドラゴンズアーマーの背中に翼が生える。
「赤城さん、とりあえず逃げるぞ!」
彼女をお姫様だっこして、俺達は空を飛び、雲を突き抜けた。
そして、遅れて彼女の悲鳴が空に響いた。




