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第十四話 牛鬼アガマツ

 牛鬼アガマツは強敵を求めている。何人もの異能使いを死に追いやってもその渇望(かつぼう)が止まる事はなかった。

 刀を持つ者から銃と呼ばれる筒を持つ者まで、多くの戦士を相手にして思った。

「弱い、なぜここまで人間は脆弱に成り下がったのか」

 いつの間にか共に戦った妖怪達もいなくなった、牛鬼に嫌気がさして逃げ出したわけではない。

 自分の力になろうとする者、徒党を組み牛鬼の威によって得をしようとする者、その全てを牛鬼はそれも良しと受け入れた。

 それも全て、人間達によって滅ぼされた、時代が変わり妖怪達も現世は人間の手に落ちたと理解した。

 現在では異能を使う人間を相手にしようとする妖怪は数が少ない。

 いるとしたら知性もロクにない連中か、異能使いすべてを相手にできるほどの力を持つものだけだろう。

 牛鬼は孤独に自分の敵を探して、国内だけではなく海を渡り、大陸にまで行くようになった。

 最近は人間の組織から情報をもらい、相手足り得る戦士を倒し報酬をもらう、いわば傭兵のような事をしていた。


 牛鬼は砂漠にいた。

 そこは昼間の気温は四十一度、夜は零下四十度、その気温差は八十一度。

 周囲は砂と岩山しかない、そんな過酷の大地を牛鬼をローブ一枚を羽織って、何をするわけでもなく座り込んでいる。


「本当にこんな所にいたのね」と女の声が聞こえた。

「なんだ、お前か」と顔すら向けずに地平線を見る牛鬼。

 フードを深く被り、顔の見えない女は乗っているラクダから降りずに、封筒を手渡す。

 封筒の中にはパスポートと数枚の紙が入っていた。

 その書類を牛鬼は一枚一枚、確認する。

「今度の依頼はここか」地図に書かれた場所は極東の島国だった。

「えぇ、そこで仕事をするのにカラスが少しうるさいのよ。だから戦力を削ぎ落としてもらいたいの」

「削ぎ落とす?」と牛鬼が女を見る。

 ただ見ただけかもしれないのに、その視線だけで人を殺せるのではないかというほど鋭い視線に女は恐怖する。

「そのような器用なマネは俺にはできない、戦士は全て倒すのが俺の流儀だ」

「えぇ、それでも構わない。貴方のやり方で貴方の好きなようにしていいわ」


「それじゃ、私はここで」とその場を去ろうとする。

 それを待てと牛鬼が止める。

 地図に書かれた星の印なはなんだと聞いた。

「面白い噂がある場所に何カ所か印をつけたの、そうした方が貴方も楽しめるでしょ?」

「ふむ」と地図を見る牛鬼。

「情報は鮮度が命だ、一番最近の印はどこだ?」

「あぁと、そこね」と女が地図を指差す。

「走行中のトラックを受け止めたっていう黒い鎧がでたっていう噂よ」

「なんだ、その程度か」

 トラックを受け止めたぐらいでなんだ、真っ二つにしたぐらいの噂はないかと悪態をつく。

「まぁ、犯人がその街にいるかもしれないし言ってみるのも悪くないんじゃない?」

「あぁ、まずはここからだ」と牛鬼は高揚感を隠しきれずに笑った。

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