プロローグ
自暴自棄。
まさに今の自分はそんな状況だった。
小学校から続いた受験戦争を勝ち抜き、国内トップクラスのゼネコン会社に入社。
建設現場で汗かいて仕事をする必要もない。まさに、左うちわの順風満帆な生活がオレを待っているはずだった。
「まさか、君が管理している現場で死亡事故とは……悪いが災難だったと思って諦めてくれ」
「そ、そんなぁ!? あれは作業員の不注意であって、自分がしたことでは……!」
食い下がるおれに、上司はだんだん語気を荒くする。
まるで自分の責任すら押し付ける様に。
「上はその不注意を止めるのが君の責任だったと言ってるんだ!」
「いいか!? わかりやすいように言ってやる! クビなんだよ、君は!」と上司に逆ギレされ、半強制的に辞表をついさっき書かされた帰り道。
これからの自分の身の振り方考えても、何も浮かばなかった。
だから、道路に飛び出してトラックに轢かれそうになっている子供も助けに行けた。
もうオレには何もなかった。 恋人も家族も作らず、自分の為だけに40年間仕事に生きてきた。
ときには、あいつに感情なんてあるのかとバカにされることもあった。
仕事以上に楽しい事なんて、なかった。
会社にクビを宣告された時点で、オレの人生は終わったのだ。
最後ぐらい自分以外のために行動がしたい。……だからこそ、この子を助けたい。
「だから、だれか助けてくれ!!」
瞬間、激しい閃光が目の前で弾いた。
何が起きてるのかわからなかった。
神様でも出てきたのか? 俺の願いを叶えに来た?
いや、正義のスーパーヒーローか?
「なんだ、これは……?」
目の前に起きる事を受け入れられない。
こういう時は正義のヒーローとか現れるものだろ?
こう、純白の全身スーツとか、全身を金属で出来たアーマーを纏っているヤツとか。
なのに、なんだ。 激しい閃光と共に現れたのは禍々しさすら感じられる黒い鎧なんて。