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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

人間水族館

作者: 孤独

「思いついた」


ここはロシア。極寒の国。

そこに最強の男がいた。


「早速、フレッシュマン博士に建設させよう。勇薙いさなぎも協力してくれるか?」

「きゃっ」


ロシア軍最高司令にして、実質の頂点。

名を、ダーリヤ・レジリフト=アッガイマン。

”名実をとれば最強”。世は、彼をそう評する。

そして、彼の強さを一言で語るとすれば、”魔天”




ドゴオオオォォォッ




彼の拳の一撃は地を揺らす。

廃墟の街に残った物全てが、拳が引き起こした震動のみで跡形もなく、揺れ崩れ落ちる。マグニチュードを観測できるほどの拳は、


「こんなものか」


彼にとっては、技術と経験による手加減がされている。

穏やかなる崩壊を成すために、非常に高度は技術を使った方と言える。



ザッザッザッ


「きゃきゃきゃきゃ」



そして、ダーリヤの部下。勇薙も異質。地下を自身の体で掘り進む様は、モグラ以上に馴染みがあった。地面と一体化した生物。彼が今しているのは、水道工事の前段階。



「ふぁーい。なんじゃい呼び出しおって、ダーリヤ」

「フレッシュマン博士」

「儂、かれこれ17時間は巨大画面でアニメを観続けておるのに。電気もないところに連れおって」


言葉はまったく2人と釣りあっていないが、ダーリヤの部下という立ち位置ながらも同格と言えよう。マッドサイエンティスト。いや、デカイの大好き博士。キルメイバ・フレッシュマン博士。


「”人間水族館”を造る。建築を頼む」



◇        ◇


「”人間水族館”?」


フレッシュマン博士の有能な部下達、業者達によって、急ピッチで作られていく。ダーリヤの言う、”人間水族館”



「人間が暮らす水族館だ」

「まんまじゃのぅ」


2人はお茶を飲みながら、語り合った。



「罪人とは裁かれるためにおらず、贖罪として人の世を渡らなければならない。だが、罪人も敗者もだが、そうならない。人類の進歩を阻害する彼等を糧とするなら、罪とはいを今の人達に伝える事が最低の事だ」

「難しい事言うな。よーするに、見せしめじゃろう。”あーなる”でないという。で、なんじゃい。”人間水族館”って?」

「生活が苦しい民がいる。それ以下の生活を強いられるのが囚人と、一般の見解だが。実は異なる。悪のみに走る者にとっては牢屋など、安心された家。人間という権限を持って、安全たる食事をとり、規則ある仕事をし、暗い中眠りをする」

「じゃあ、お前が全員死刑すればいいだろ。できるじゃろ?それくらい」

「できるが、そんなものでは進歩の糧にはならんし。囚人が人という意見も理解できる。だが、刑を施すとは些か温いのだ。いや、刑とは”その時”だけではならんのだ」



フレッシュマン博士は政治や法律などには興味ない。外法な研究ばかりしている博士でもあり、一時はテロリスト扱いを受けていた時代もある。若き日の出来事である。


「なるほどのぅ。生きる中で、在り来たりな自由を奪うというか。それで」

「察しがいい」

「ダーリヤ。お主、それが趣味になっておらんか?」

「失礼だな。趣味ではない。私と人類の使命と言え。人類の進歩に必要な糧や選別なのだ」


もうすぐに”人間水族館”が開園する。

動物は、生命は、囚人という人間達のみ。



ボシャーーーーンッ



「冷たっ!」

「この非道者が!!」

「死ね!ダーリヤ!!」

「ゆ、許してくれ!こんなところで、一生を終えたくない!!」



首につけられた首輪。それは長い長い鎖の錠でつけられ、天井にある突起物と繫がって脱獄を許さない。それは檻とさほど変わらないだろう。

水深10m、大きさは50mプール、高さは10mの透明な強固のガラスで作られた水槽に放り込まれる囚人達。


「なんだこれは!?」

「足つかねぇっ!冷てぇ水だ!」

「ふざけてんじゃねぇよ!!」

「死ねと言っているのか!」



首輪をつけられ、水槽の中で吼える人。それらにダーリヤは辛辣にして当たり前の言葉を送る。


「貴様等の両足を切り落とさないだけ、私は聖人である」

「はっ!?」

「海面におるという事は呼吸できること。せいの活動ができる。貴様等が私に叫べるのも、私のおかげだ」

「な、」


何言ってるんだ!?こいつ……。

それは誰だって思う。罪を犯した者達ですら思えるほど、彼から漂う強烈な悪。正義を握った悪と言える。だが、それは価値観だ。



「生活をすること。地に足をつけること。笑顔を振り撒くこと。言葉を通じ合わせること。君達も、これからの国民達にも伝われる。それが”人間水族館”の役目だ。罪人が良き秩序を作るには良い教材であろう」

「げ、外道が!!」

「俺達が苦しむだけで?」

「死ね!死ねよ!!ダーリヤ!!」

「?何を言う?私は、君達が傷害罪の類いを犯した囚人達と判断し、この水族館の見世物としたのだぞ。人の足を奪った者がいるだろう。首を掻っ切った者もいるだろう。君達はただの今、この時だけ。被害者は一生を背負うのだ」



バシャバシャと、海面に浮かぶだけでも体力を消耗する。おまけに低温という地獄。

死刑というものではない。だが、殺しに来ている生活を迫らせる。


「お前等の怒りや苦しみなど、被害者の怒りと苦しみにとっては短く、大した事ではない」

「違う!これは!!」

「殺しと同じだろうが!!」

「じゃあ、生きろ。この中で生きろ。現実で生きろ」


この環境。

ダーリヤにとっては、人間社会の辛さを表現しているつもりなのだろう。並の思想、性能ではできないことだ。


「言っておくが、私は被害者の会の会長をやっているんじゃない。被害者とて、背負う義務がある。傷を持ってして、最後まで強く生きることだ。強く生きるため、生き抜くこと。それを伝えるためにお前等がいるのだ」

「ぜ、ぜ、ぜ、善人のつもりか!?」

「何が生きるためだ!!殺しておいて、何を言う!!」

「これなら楽に死にたい!!溺死も、衰弱も!嫌だ!!」



無様となる死に方を叫ぶ者達。

それにダーリヤは、至極な真っ当な言葉を送る。


「死に方を選ぶ生き方をしろ」


この”人間水族館”。

2日後には、囚人達の全員が帰らぬ人となった。様々な死に方であった。

そして、その光景は動画となって収まって、ロシア国民に刷り込ませる事となった。多くはダーリヤの恐怖を、少ないが生きるからこそ強さを求める意味。それを芽生えさせる事には成功した。



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