7話 エミール=バイオレット
俺たちは軽傷者数名は出したものの重傷者、死者を出すことなく今回の緊急依頼を終えることが出来た。
過去にアスリルでは二度緊急依頼が出されたことがあった。
一度目はキラービーの襲撃。
二度目はドラゴンの襲撃の際だ。
一度目は二割の冒険者が死亡し、ドラゴンを撃退する際には四割の冒険者が死亡した。
それに比べると今回の勝利はアスリルにおいて歴史的大勝利といえることであった。
「おい、あんた。さっきは俺を助けてくれてありがとな。もしあんたがいなかったらと考えると」
剣を失い、なす術が無かったところを俺に助けられた男が話しかけてきた。
「あのエミールってのも凄かったが、あんたもかなりの腕利きみたいだな。Bランクってところか?」
あまりにも過剰評価じゃないか。
俺はまだEランクであるっていうのに。
「あんたEランクなのか!?なるほど。まだ成り立てなのか。それであそこまでの実力。あんたならもしかしたらAランク冒険者になれるかもしれねぇな」
Aランク冒険者か。
それは俺にとってはただの通過点に、しなければならないんだがな。
「皆さん本当にありがとうございました」
南門に戻るとリーリャが深々と頭を下げ皆に感謝の意を表した。
リーリャの言葉に頰を赤らしめる者、などはおらず皆どこか誇らしげな顔をしていた。
「今回参加してくださった皆さんにはギルドより金貨15枚と600貢献ポイントが付与されますのでお時間のある時に冒険者ギルドへお立ち寄り下さいね」
おお。金貨15枚と貢献ポイントが600ももらえるのか。
これで当分お金に困ることもなさそうだ。
その後しばらくして解散となった。
「君凄かっねー!」
時刻は二時三十分。
まだ宿に戻るにも早過ぎる。
ならばもはや日課となりつつある魔法の練習にでも行こうかと考えていると、あの魔法の奇行種。
いや、自称大魔導士だったか?エミールに声を掛けられた。
「私にヒキを取らない魔力量。的確に敵にヒットさせる魔力操作。うん、実にいい。私と勝負しよう!」
あぁ、やっぱり奇行種だ。
「勝負ですか?」
「そう勝負!どちらがより高位の魔術師であるかの勝負だ!」
子供のようにはしゃぐエリーナ。
俺の第六感が大音量で危険信号を発している。
この女と関わるとロクなことがないと。
「ちょ、ちょっと待ってください。実はこのあの人と会うと約束があって」
「そうかそうか!そうと決まれば早速訓練所に行こう!」
こいつ人の話聞いてねーーーー。
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