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5話 初の魔物討伐

 俺はジャイアントラッツに気付かれないようにそっと背後から近寄る。


 距離にして10メートルほどである。


 ジャイアントラッツは何かを食しているようでこちらに気づく気配がない。


 俺は腰の鞘からタガーを抜き、一気にジャイアントラッツへと走り出す。


 ジャイアントラッツもこちらに気づいたが、手遅れだ。


 俺は既にジャイアントラッツ目掛けて飛びかかっていた。


 そしてダガーを力一杯ジャイアントラッツの背中目掛けて振り下ろす。


 見事に命中。


 ジャイアントラッツはその場で生き絶えた。


 手に残る感触がまだ少し残っている。


 あまり気持ちのよいものではない。


 遅かれ早かれ魔物は倒さないといけないのだから早めに慣れておかないといざという時に困る。


 そういう意味でも今回俺が受けた依頼『ジャイアントラッツ3匹の皮の納品』には大きな意味があるな。


 ジャイアントラッツは名前の通り大きくなったネズミで、サイズはカピバラぐらいである。


 ジャイアントラッツの皮は剣の鞘や靴などに使われるらしく割と需要が高いらしい。


 俺は突き刺さったダガーを引き抜き初の魔物解体をしていく。


 手順は以前立ち寄った武器屋の主人に聞いた。


 とても優しい主人でどんな武器かあるのか気になり、有り金もないなか武器を見ているところこのタガーを勧められ、代金はツケでいいと言ってくれた。


 銀貨9枚の借金ができてしまったが、おかげでこうして魔物を狩ることができるようになった。


 ジャイアントラッツは臆病な魔物で人間を見つけても逃げるだけなので俺でも武器さえあれば今のように倒すことができる。


 なんとか解体を終えた俺は皮を手に持ち、再び森の中を歩く。


 そのあとも2匹のジャイアントラッツを見つけ、仕留め、解体、皮を手に入れた。


 1匹は先ほどと同じ要領で仕留めることができたが、最後の1匹はかなり距離がある時に気づかれ追いかけっこをすることになった。


 死体は1週間放置しておくとアンデッド化すると言っていたが、森などでは他の魔物の、食料になるためそのままでもいいそうだ。


 俺はさすがにジャイアントラッツ3匹分の皮となるとかなり重量が嵩む。


 いつもなら1時間ほどで帰れる道を1時間半かけて帰ることになってしまった。


「これは立派なジャイアントラッツの皮ですね!」


 解体もうまくできたから納品物として問題はない。


 サイズもそこそこであったらしい。


 初めてにしては上出来だと自分を褒める。


「本当に上手に解体できてますね。初めてだなんて思えません」


 リーリャは本当に褒めるのが上手だ。


 言って欲しいことを言って欲しい時に言ってくれるんだからな。


 リーリャファンが多いのは納得するしかない。


 リーリャは気づいていないようだが、リーリャと話をするために常にチャンスを伺っているものがこのギルドには結構たくさんいる。


 俺はカワツサ草も忘れずにリーリャに渡し、今回の依頼分の報奨金である金貨1枚と銀貨2枚と更新してもらったギルドカードを受け取った。


 魔物の素材の納品依頼は解体や運搬労力なども考慮されるため少し高めの報奨金となっている。





「兄ちゃん今日はどうしたんだ」


「ツケを返しに来ました」


 俺は軽くはにかみながら答えた。


 今俺はタガーを買った武器屋に来ていた。


 この白いタオルを頭に巻いてる姿がやけに似合っている男がこの店の店主アディオスだ。


「そうかそうか。もう少し遅くなるかと思ったがもうきたのか」


 俺はアディオスに銀貨9枚を渡し、軽く店内を見て回る。


 剣、杖、弓、盾、防具など様々な武器や防具が売られている。


 杖の先には半透明な石がはめ込まれている。


「アディオスさんこれはなんですか?」


「それは魔力結晶だ。お前の家も魔道具に使ってるだろ?まあ家とかで使うのは青の魔力結晶か。魔力結晶に秘められている魔力は色で判断できるんだよ。青、緑、赤、紫、黒ってな順番だな。」


 この世界では電気が通っていない。


 それなのに火が起こせたり水が出たりするのが不思議だったがあれは全部魔道具だったようだ。


 魔力結晶はランクC以上の魔物から取ることができ、売ればそこそこの値段になるそうだ。


 その後しばらく話をして、俺はアディオスの武器屋を後にした。


 俺は少し街を見て回ってから街の外にある草原へと向かった。


 街の近くの草原では魔物が出ることはほとんどなく、魔法の練習をするにはうってつけだ。


 俺は昨日の練習で自身の目の前に直径30センチほどの大きさの火の球を作り出すことに成功していた。


 これからこの火の球を飛ばす練習をする。


 人はこれをファイアボールと呼ぶのだ。


 まずは魔力の感知、そしてイメージ。


 よし。


 だいぶ魔力操作にも慣れて来た気がする。


 魔力操作とは文字通り魔力を操作する能力。


 魔力感知に併せ魔力操作も魔法を使う上では重要な要素となる。


 魔力操作が得意だとより早く、より複雑な魔法を発動させることができるそうだ。


 俺は火の球を前に飛ばすべくイメージしながら魔力を操作する。


 失敗だ。


 ほんの少ししか進まず力なく降下していき消えてしまった。


 もう一回だ。







「疲れたぁぁぁぁ」


 あれから100回以上はファイアボールの練習をした。


 体内の魔力を感知するのはだいぶスムーズにできるようになっが、体外に放出した魔力を感知するのが難しい。


 魔力が多ければ多いほど魔力感知にムラが出来てしまい、体外に放出した魔力を無駄にしてしまう。


 そして感知した魔力を操作するのであるがこれも魔力が大きくなればなるほど難しく集中力が必要となる。


 直径30センチ程のファイアボールなら15メートル離れた岩にもぶつけれるようになったが、直径50センチにするだけでほとんど前に飛ばなくなる。


 これはまだまだ練習が必要になりそうだ。


 俺は休憩を挟んでからもう一度ファイアボールの練習に勤しんだ。





「魔法の方はうまく出来ましたか?」


 俺はファイアボールの練習を終え、宿屋で夕食を食べていたところミシェルに話しかけられた。


「はい。おかげさまで上達して来たところです」


「お力になれたならよかったです」


 ふふ、と笑い空いた席を片付けるミシェル。


 この後に聞いたことだが、この宿の主人であるガディールは宿屋の主人をする傍ら今も冒険者を続けているらしい。


 何でもパーティーを組んでいるため自分が抜けると難易度の高い依頼を遂行するのが難しくなるため自分の力が必要な時だけ冒険者として働き、その時は妻のミシェルに店を任せているそうだ。


 難易度の高い依頼となると数日がけの任務も少なくなく、俺がこの宿に来た時には既に依頼のために遠出してしまっていたのだとか。


 通りでマイルちゃんとミシェルしか見ないわけだな。


 俺は食事を終えた後は自室で直径30センチほどの火の玉を作り消して、また作っては消してを繰り返し練習した。




 ーーーー5日後


 今日も依頼をこなす為いつもの森に来ている。


 この森の地形もだいぶ覚えて来たおかげで、採取にかかる時間がだいぶ短縮された。


 カワツサ草を50本ほど鞄に詰め街へ帰る。


 時刻を見るとまだ11時半。


 一日の半分もまだ経っていない。


 ここ数日は体力が増えたおかげで道中の時間もかなり短縮することができている。


 この世界に来てから1週間ほどでここまで体力が増えたのはやはりレベルによるものが大きいのだと思う。


 俺は冒険者ギルドへと赴き、依頼を完遂させる。


 少しずつ資金も溜まりつつある。


 金貨が3枚と銀貨6枚。


 3万6千円ぐらいか。


 この世界に来て暫く経ち徐々に金銭感覚も理解してきた。


 自分なりに硬貨を元の世界の通過に置き換えてみると、鉄貨=10円、以下銅貨、銀貨、金貨の順に桁が1つずつ増えるぐらいだと考えている。



 アリル=ライオット

 レベル36

 Eランク3021位

 貢献ポイント(430)

 体力C 筋力D+ 防御力D- 俊敏性D+ 魔力B+



 俺は更新されたギルドカードに目を通す。


 成人男性の平均レベルが30前後らしいので、成人男性以上のレベルにはなったわけだ。


 尚この世界の成人とは男女共に15歳である。


「緊急依頼!緊急依頼!ジャイアントードの群れがアスリルに向かって進行中です!至急冒険者の方は南門に集合してください!繰り返します緊急依頼!緊急依頼です!ジャイアントードの群れが........」


 魔道具の緊急放送によりリーリャの声が街中に響き渡る。


 緊急依頼。


 ランク無条件にどの冒険者でも参加可能な依頼であり、それほど急を要する依頼である。


その分依頼を達成すると参加者全員に多額の報奨金と貢献ポイントが付与される。


しかし同時に危険な依頼でもある。


 俺は迷うことなく南門へと向かった。


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